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鎌倉市 フリースクールの利用料を補助 不登校の学びに支援を

  • 2024年01月05日

不登校の小中学生は全国でおよそ30万人と急増しています。
一方で、フリースクールといった民間の施設は利用料が大きな負担に。
支援を求めて声を上げた女性を通じて、不登校の学びへの支援の現状を取材しました。

不登校で急に”何もない状態”に

加藤絵里子さん

鎌倉市に住む加藤絵里子さんには、中学生と小学生の2人の息子がいて、フリースクールに通っています。
2人の息子は、同級生との関係や先生の対応への疑問などをきっかけに学校に通えなくなり、数年にわたって不登校の状態が続いています。 

長男

学校行かなくなった理由はいろいろあるんですけど、人間関係というか、人ですね。いじめとかはもちろんありました。

加藤さん
学校に行けば、人もいて遊びもあって学びもあって…。そういうところから外れてしまう。わーわー遊んでいた子が急に孤独になって、何もない状況になってしまった。

公的な支援が足りない

最近になって、2人の息子はようやく今のフリースクールに出会うことができました。
加藤さんが直面したのは、子どもが不登校になった時の公的な支援が不足しているという現実だったといいます。

加藤さん
学校に行くのが当たり前の社会で何の支援もないということは、やっぱりなにか『やってはいけないこと』をしているというか…。そういうことで追いつめられてしまう。すべてにおいて家庭任せになっているというところが問題なんじゃないかと感じました。

フリースクール側も厳しい運営

加藤さんが「すべてにおいて家庭任せ」と感じた大きな理由の1つが、学校での教育は無償の一方で、フリースクールの費用はそのまま家庭の負担になることでした。

フリースクール Largo

今回取材したこちらの鎌倉市のフリースクールでは、自分のペースで学習することができ、教員の免許を持ったスタッフが学習支援を行います。子どもが希望すれば、専門の講師の指導のもと英語やプログラミング、音楽なども学ぶことができます。
こうしたフリースクールは、不登校の子どもたちが学びを継続するため重要な受け皿になっていますが、文部科学省の平成27年の調査によりますと、こうしたフリースクールに通うには、以下のような費用がかかります。

入会金      …平均約53,000円
毎月利用料…平均約33,000円

一方で、フリースクール側はNPOなどが運営しているケースが多く、国からの助成などもないため、厳しい状況で運営を続けているのが現状です。

フリースクールLargo 小林由起さん
働いている側も最低賃金でやっていたりですとか、家賃もそうですし、いろんな学びを提供するにあたって講師への謝金などの面でも捻出するのに苦労しています。学校に通っているお子さんは日々の費用というのはかかりませんが、こうした場所に通うと月に何万もかかり、やっぱり家庭にすごく響く金額なので、費用面で諦めてしまうご家庭もすごく多いと思っています。

支援求め署名活動 悲痛な声届く

誰かが声を上げなければ学びの格差をなくすことはできないと思った加藤さんは、フリースクールの利用料に対し県内全域での公的支援を求める署名活動を始めました。
すると、署名とともに親たちから寄せられたのは、経済的な負担の重さだけでなく、追いつめられる心情を訴える声でした。
「家計的に高額だ」
「子どもが自分を責める発言が続き、このままでは死んでしまうのではないか」ー

実際に寄せられた声

加藤さん
不登校の現状を知らない方の中には、『学校に行かないことと命と何の関係があるの?』って聞く方もいるんですけど、本当に死んでしまいたい思いに駆られるぐらい悩んでる本人とご家庭がいっぱいある。小さいかもしれないけど、こうした『困っているよ』の声を届けないと。

加藤さんは6200人余りの署名を集め、県に提出しました。

動き出す自治体も

こうした切実な声が上がるなかで、県内で初めて踏み込んだ支援に動いたのが加藤さんの地元、鎌倉市です。 

2023年9月からフリースクールの利用料のうち、1人あたり上限1万円で3分の1を補助する制度を開始したのです。
市が想定していた申込件数はおよそ50件でしたが、2023年12月現在、すでにその件数を大きく超える申請があったといいます。
鎌倉市は、不登校の子どもにとってフリースクールが大切な居場所の1つとなるように支援したいと考えています。 

鎌倉市青少年課 小林瑞幸課長

家だけではない、学校だけではない、自分の特性にあった居場所を見つけることで、また前向きに自分を取り戻して進める1つのきっかけであるとか、助けになるのかなと思うので、できるかぎり支援をしていきたいなという気持ちです。

不登校の家庭の支えになるもの

加藤さんも鎌倉市のこの制度によって、助成が受けられるようになりました。
子どもたちはいま、フリースクールで先生や友人との出会いにも恵まれ、生き生きと過ごせるようになったといいます。

長男

お互い信頼し合えるような友達ができました。いろんな経験もさせてもらえたし、フリースクールは必要な場所です。

次男

自分に合っているという感じです。毎日行っても楽しいなって。時間も忘れちゃう。

加藤さんは、費用の助成のありがたさ以上に、行政が不登校になった現状に寄り添って支援してくれたことが大きな心の支えになっているといいます。 

加藤さん
1番は心。親御さんも子どもも、社会から学校に行かないことも認められてるっていう、見えないものが必要だなというのがあったので。行政の方が親身になって対応してくださること自体が、当事者の心の支えになるので、なんとか全国的にいい連鎖で広がっていってほしいなと思います。

  • 関口裕也

    横浜放送局 記者

    関口裕也

    2010年入局。福島局、横浜局、政治部を経て、2022年8月から再び横浜局。神奈川県政を中心に取材。

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