ページの本文へ

かながわ情報羅針盤

  1. 首都圏ナビ
  2. かながわ情報羅針盤
  3. “神奈川版ライドシェア” 三浦市での実現目指し検討開始

“神奈川版ライドシェア” 三浦市での実現目指し検討開始

  • 2023年10月23日

一般のドライバーが自分の車などを使って有料で人を運ぶ「ライドシェア」。各地で深刻化するタクシー不足の対策として、いま解禁をめぐる議論が活発になっています。
こうした中、神奈川県はまず夜間のタクシー不足が懸念される三浦市での導入に向けて本格的な検討を始めました。

三浦市のタクシー不足の現状は

神奈川県が独自のライドシェアの実現を目指す南東部の三浦市。
マグロの水揚げなどで知られる観光地・三崎港近くの街の人たちを取材すると、夜間のタクシー不足を訴える声が次々と上がりました。

地元の人

夜間のタクシーの台数は少ないと思います。だからなるべくみんな急いで、電車やバスで帰れるような時間帯に地元に帰ってくる人が多いんじゃないかな。

地元の人

三崎港周辺は飲食店もみんな午後7時、午後8時で終わっちゃいますから。タクシー会社に電話した時、『いま予約が入っているから1時間後に』とか『30分後に』と言われると本当に困ります。

なぜこうした声が上がるのか。
取材をしてみると、やむにやまれぬ事情があることが見えてきました。
県によりますと、現在三浦市で稼働するタクシーは、2つのタクシー会社が所有するあわせて35台のほか、個人タクシーだということですが、この2つのタクシー会社のうち、「いづみタクシー」は利用客の減少から去年8月に夜間の営業を取りやめました。

 

いづみタクシー

もともと夜間の営業は配車の依頼が少なく採算をとるのが厳しい状況でしたが、コロナ禍が追い打ちになり、午前1時ごろまでだった営業時間を午後7時までにやむなく短縮。

取材したこの日も午後7時が近づくと稼働を終えたタクシーが順次会社に戻ってきて、乗務員が車を洗ったり報告を行ったりして1日の業務を終えていました。
八木達也社長は、利用客は少ないものの、タクシーを必要とする人がゼロというわけではないだけに夜間営業を取りやめることは厳しい決断だったといいます。
 

八木達也社長

いづみタクシー 八木達也社長
コロナ禍を経て需要が戻らないのに、長い時間ずっと運転手を待機させる。止めざるを得ないなと。飲食店を経営したり利用したりする知り合いがたくさんいるので、じくじたる思いというか、『申し訳ないな』という気持ちは少なからずありました。苦渋の決断でした。

”神奈川版ライドシェア”検討始まる

三浦市のこうした現状への打開策になると県が考えたのがライドシェアです。

兵庫県養父市のライドシェア

ライドシェアはアメリカや中国など海外で普及が進んでいますが、日本では安全性の確保に課題があるとして認められておらず、国家戦略特区に指定された兵庫県養父市など一部の自治体で特例として行われているだけです。タクシー業界も安全面などを理由に反対しています。
しかし、高齢化やコロナ禍による離職などでタクシードライバーの人数が全国で減り続け、観光地や過疎地でタクシー不足が深刻になっていることを背景に、いま解禁をめぐる議論が活発化しています。
こうした中、神奈川県は三浦市での導入を目指すために検討会議を設置。10月20日に開かれた初めての会合には、県や関東運輸局、市内のタクシー会社の担当者などが参加しました。

神奈川版ライドシェア検討会議

初会合では、まず黒岩祐治知事が、導入に向け意欲を示しました。

黒岩知事
観光客のほか、人口が減少している地域においても時間帯によってはなかなかタクシーがつかまらないという声が聞こえてきている。利用者のみなさんがタクシーがない時にも移動手段が確保できるという流れをどう作っていけるか。タクシー業界と一緒に神奈川版ライドシェアを作っていければ、新たなモデルになるのではないか。

会議では県独自のライドシェアとして、地元のタクシー会社に、一般ドライバーへの研修や運行管理などを担ってもらうことで安全性を確保する手法を検討していることが説明されました。

会議で示された県の案

これに対し、県のタクシー協会や地元のタクシー会社からは制度の設計などについて厳しい意見が相次ぎました。

いづみタクシー
このライドシェアの案は、タクシー会社がドライバーを雇用するのか、委託するのか、それとも業務自体を委託されるのか、内容によってイメージも感覚も全然違うので、そこがないと感想も言えない。

県タクシー協会
どの程度の需要があるか分析することが大前提だ。現場の意見をよく聞いて検討してほしい。

京急三崎タクシー
(タクシーの運転に必要な)2種免許を持ってない人を管理するにあたって、あまりにも私たちの責任が大きくなるということが非常に気になる。

地元の飲食店からは期待の声も

一方で、三崎港近くにある飲食店街からはライドシェアの導入に期待を寄せる声も上がっています。
マグロや地魚を使った料理を提供する老舗の飲食店は、電車の最寄り駅からバスで20分ほどの場所にあり、訪れる客からは週末や行楽シーズンを中心に夜間の交通手段の確保の難しさを訴える声をよく聞くといいます。

創業およそ50年「くろば亭」

この店がある通り沿いは、昔は多くの店が軒を連ねていましたが、高齢化による影響もあり、今は閉店も相次いでいるということです。
店では、ライドシェアが安全性の担保を前提に導入されれば、観光客を中心に客足がもっと伸びて、地域の活性化にもつながる可能性があると考えています。

山田恭子さん

くろば亭 山田恭子さん
お客さんから『帰りのタクシー呼んで』と声をかけられて、以前は『はい』と簡単に答えていましたが、今はお断りせざるをない時が多いのが現状です。ライドシェアを気軽に使うというのは不安が大きく、まだ難しいと思いますが、お客様に安心してご紹介できるものであれば、ものすごくいいと思います。

「困っている人」のために

初回の会合では、協力を求めるタクシー会社から慎重な意見も出され、まだまだ検討が必要とみられる「神奈川版ライドシェア」。
県は、▽対象地域は三浦市、▽時間帯は夜間のみと、それぞれ限定する方針で、今後は具体的な運用方法についてさらに議論を重ね、ライドシェアを実現させることで地域の活性化につなげたいとしています。

横川裕 地域政策課長

神奈川県地域政策課 横川裕課長
タクシー業界の方から、『簡単な問題ではない』という話もありましたので、そういったところをどうやって解決していくかも今後の議論になると思います。『困っている方がいる』ということが、この話の原点なので、三浦市や地元のタクシー会社などと一緒に協力して、課題の解決につなげていきたい

  • 関口裕也

    横浜放送局 記者

    関口裕也

    2010年入局。福島局、横浜局、政治部を経て、2022年8月から再び横浜局。横浜市政や神奈川県政を取材。

ページトップに戻る