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よみがえる湯河原温泉 ~改修相次ぐ最古の温泉街~

  • 2023年8月22日

新型コロナウイルスの水際対策が終了し、インバウンドにわく観光業界ですが、実はこの30年間で国内の旅館・ホテルは8万軒から5万軒へと4割近く減少しています。
こうした状況を解消し、魅力ある観光地づくりを促そうと、観光庁はおととしから旅館の改修などに補助金を出す施策を始めました。
国の支援も活用しながら温泉街の再生に取り組む神奈川県湯河原町を取材しました。

改修相次ぐ“最古の温泉地”

神奈川県湯河原町

神奈川県西部にある湯河原町は、万葉集にも詠まれた日本最古の温泉地とも言われています。
その町でいま、旅館の改修が相次いでいます。

明治18年創業のこちらの旅館は7月にリニューアルオープンしました。

すべての客室に露天風呂が付いているほか、ワインセラーも完備されています。

宿泊客

部屋に付いているお風呂もすごくきれいで、一度泊まってみたいなと思いました

オーナーの八亀雅之さんは、近年は苦境が続いていたと振り返ります。
老朽化により雨漏りなどが相次ぎ、修繕費は年間およそ500万円。
負債が8000万以上に膨らんだといいます。

背景には湯河原町を訪れる観光客の激減があります。
バブル崩壊で経済活動が停滞し、観光業界でも会社や組合などの団体旅行が減少して個人旅行に軸足が移っていきました。
その影響もあり、平成2年に847万人だった観光客数は令和2年には360万人と半分以下になったのです。

八亀雅之さん

バブルがはじけて景気が悪くなって旅館に来なくなったり、来ても飲み物は飲まなくなったりと、だんだん経営状況が悪くなりました。一方で、屋根や外壁がだめになり、直しても直しても追いつかない状況になり、融資の返済をするのが大変になったんですね

背景に宿泊業界“負のスパイラル”

観光庁の報告書

この時期は、宿泊業界ならではの「負のスパイラル」とも言える状況に陥っていました。
建物の建設などに多額の初期投資が必要な宿泊業界。
売り上げの一部を融資の返済にあてますが、客離れが進むと返済に手いっぱいになり、新たな設備投資を行うことが難しくなります。
その結果、老朽化が進んで魅力が減り、ますます客離れが進むことになるのです。
観光庁は旅館の改修などに補助金を出すことでこの悪循環を裁ち切り、魅力の向上につなげたいと考えています。

改修前の旅館

八亀さんの旅館でも、この補助金を活用して、次のような流れで改修が行われました。
まず、八亀さんが経営権を新しい事業者に譲ります。
新しい事業者は、負債を整理するとともに建物の改修を行います。
その際、補助金を活用しつつ、金融機関から新たな融資を受けます。
そして、今のニーズに合ったものに大規模にリノベーション。
付加価値を高めることで単価を上げ、収益を確保しつつ、返済を行っていきます。
八亀さんは経営を退いた代わりに、事業者から賃貸料を得ることになります。
宿泊代はこれまでの1万数千円から3倍以上になりましたが、予約は好調だといいます。

改修などを行った会社の塚原亮太社長

「部屋の中でゆっくりしたい」というニーズが高まっているので、サウナを作るなど長く滞在できるような工夫を凝らしました。ほかにも危機感を持っている経営者はいると思うので、この事業を成功させて町の活性化につなげていきたい

さがみ信用金庫

この取り組みは、金融機関にもメリットがあります。
融資の焦げ付きのリスクを減らせるほか、経営が改善されることから再融資に踏み切りやすくなるといいます。

さがみ信用金庫湯河原支店 廣瀬真支店長

お客さんが減ってきて運転資金の貸し出しなどが増えてくると、経営者は目の前の経営で手いっぱいになって、10年20年30年先を見据えた設備投資は難しくなります。苦しい経営状況では、金融機関としても融資することは勇気がいるので観光庁の補助金は大きな後押しになりました

湯河原町が開いた説明会

こうした取り組みは、湯河原町全体に広がっています。
主導しているのは町の観光課です。
温泉街の衰退は町の存亡に関わるとして、旅館の経営者たちを集めた説明会を開き、改修を促しています。

湯河原町観光課 宮下睦史課長

観光客が減ってきて、湯河原温泉が廃れていく危機感が強くなりました。そこで「日帰りでは楽しみきれない街」というコンセプトを作り、事業者とともに高付加価値化に取り組んでいます。回復基調にあるので、この流れを止めることなく引き続きやっていきたい

土産物店を改修したビールスタンド

こうした手法で改修した旅館や店舗などはおよそ30軒。
土産物店がビールスタンドになったり、古い旅館が若者向けの旅館に生まれ変わったりしました。今年度も50以上の旅館や店舗などが改修を予定しているということです。

民間の活性化につながる

その改修した旅館や店舗が協力して新たなイベントも始まっています。
その名も「湯探歩」。

国の文化財の見学ツアー

国の文化財に指定されている貴重な旅館を見学できるツアーが行われたり、改修した店舗でマルシェが開かれたりするなど、観光客は町歩きをしながら楽しむことができます。

町内でつくられたクラフトビールを味わう人たちの姿も多く見られました。
湯河原町の新たなファンが着実に増えつつあります。

観光客

古い町並みと新しいものがよい感じに混ざり合っていると感じました。また来たいですね

ビールスタンド店主 相原幸典さん

小田原、そして熱海に追いつけ、追い越せという意気込みで、行政と民間が助け合って町全体で盛り上げていくので、ぜひ湯河原にお越しください

取材後記

改修によって湯河原町に新しい風が吹いていることは間違いありません。
盛り上がりを持続的なものにするためには、官民をあげて新たな魅力を創出し続けることが鍵になると感じました。

  • 北村基

    横浜放送局 小田原支局記者

    北村基

    2017年入局。宇都宮局を経て、2022年8月から横浜局小田原支局。南関東の空気に馴染むべく、目下、歴史を勉強中です。

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