ページの本文へ

かながわ情報羅針盤

  1. 首都圏ナビ
  2. かながわ情報羅針盤
  3. NHK横浜 越田穂香キャスター 余韻を楽しむ「小田原風鈴」

NHK横浜 越田穂香キャスター 余韻を楽しむ「小田原風鈴」

  • 2023年7月3日

7月、いよいよ夏本番! 
暑い夏に涼やかな音色を届けてくれる風鈴は、夏の風物詩ですよね。
いま最盛期を迎えている、「小田原風鈴」の工房を訪ねてきました!

取材:越田穂香キャスター

“鳴り物”に特化した製品づくり

小田原の伝統工芸「小田原風鈴」を作っているのは、およそ300年前から続く鋳物工房です。

鋳物職人 柏木照之さん

小田原鋳物は、室町時代に北条家の関東進出に伴って始まったとされています。 
その後、他県からの流通などで少しずつ衰退していき、歴史的に続く工房はこちらの1軒だけとなりました。

柏木照之さん

工房の代表・鋳物職人 柏木照之さん(かしわぎ・てるゆき)

昔は鍋や釜などの日用品を作っていたようです。 
明治時代以降になると、関東だと川口など大きな鋳物の産地から運ばれてくるようになり、小田原の鋳物産業は衰退していきました。 
柏木家としては、もう先が見えていたので、得意だった"鳴り物”に特化する形で続けてきました。

鋳物の“鳴り物”にどんなものがあるかというと…

画像提供:柏木さん

例えば、仏具のおりんです。
金属のお椀のような形状の仏具で、「チーン」と長い余韻を響かせます。

真鍮風鈴と砂張風鈴

おりんの製法を生かして作られたのが「風鈴」です!
 柏木さんが作る風鈴は、真鍮風鈴と砂張風鈴の2種類に分けられます。

(左)真鍮風鈴 (右)砂張風鈴

 真鍮風鈴(しんちゅうふうりん)
銅と亜鉛。比較的ポピュラーな風鈴で、軽やかな音色を響かせます。

すべて真鍮風鈴!

柏木さんが作っている真鍮風鈴です。 
一番左の風鈴は「松虫」と呼ばれ、松虫の鳴き声に似せた音色を響かせるよう作りました!

 

砂張風鈴(さはりふうりん)
銅とスズの合金。余韻が長いのが特徴です。 
おりんにも使われている「砂張(さはり)」という金属は、
とてももろくて壊れやすいため、職人の腕の見せどころです。

涼しげな音色は、あつ~い工房から!

柏木さんに、砂張風鈴づくりを見せていただきました! 

まず、材料のスズと銅を溶かすところから始まります。

(左)スズ (右)銅
柏木照之さん

スズの量が多いと余韻が長くなる一方、
もろくて壊れやすいので扱いがとても難しいんです。
また、スズと銅の割合が1パーセント違うだけで、
全く別の金属になってしまうので、配合の管理が大切ですね。

炉の中は1000度以上! この時期の作業が一番つらいといいます。

そして、溶かした金属を一度別の型に流し込み、冷やし固めます。
こうして不純物を取り除くのです。
このひと手間は、代々受け継がれてきた“伝統の製法”です。

柏木照之さん

受け継いだ形は守りつつ、さらにいい方法を模索しています。
以前、ひと手間を飛ばして、材料を溶かしてすぐ風鈴の鋳型に流し込んでみたことがあるんですが、良い鋳物はできませんでした… 
手間はかかっても、金属を一度寝かせることが大切だと身をもって学びました。

寝かせた金属を再び溶かし、いよいよ風鈴の鋳型へ。
鋳型は二重構造になっていて、その隙間に金属を流し込みます。
ポイントは「液体の金属がどうやって流れるか」をイメージしながら、素早く!

分解すると↗こんな感じに

この時の金属の状態の見極めが、音色の響きを左右するといいます。

柏木照之さん

ちょうど良い温度や粘り気などは、“金属の色”で判断しています!

【赤っぽい→温度が低い】金属が途中で固まって、製品に穴が... 
【白っぽい→温度が高い】砂と粘土でできた鋳型が変形する可能性が...

3年ほどでようやくできるようになって、
10年経った頃にしっかりわかってきたなと思います。
「液体の金属を鋳型に流す」単純そうにみえるこの作業は、
実はとても奥が深いんです!

鋳型から外した直後→研磨後→着色後

冷めたら鋳型から外し、表面を研磨、着色すると・・・砂張風鈴の完成です!

新たな風鈴の形

(左)持ち運べる風鈴 (右)小田原 工芸コラボ

生活様式の変化などによって、軒先の風鈴を見かけることが少なくなってきたと語る柏木さん。 

「持ち運べる風鈴」
「小田原ちょうちん型×小田原の工芸作家が作った寄せ木細工」など
 いま、新しい風鈴づくりに挑戦しています!

鋳物のかけ台

こちらは「卓上で鳴らせる風鈴」です。 
コロナ禍に室内でも楽しみたいという声に応えて、鋳物のかけ台を作りました。

柏木照之さん

「マンション住まいだから外にかけられない」とよくお客さんに言われてきました。閉めきった部屋のクーラーの風でも音が鳴るように作ったので、いろいろな所に置いて楽しんで欲しいです。

伝統を受け継ぎ、繋げていく

鋳物職人 柏木照之さん

やっぱり続いていくためには、良いものを生み出していかないといけないと思うので。
現代の生活様式に合う形で製品を作って、しっかり技術を残していければと思います。

鋳物職人・柏木さんからメッセージ

いまはスマホやテレビなど、スピーカー越しの音を聞くことが多いと思います。 
ぜひ風鈴の生の音を聞いて、いろんな音色の中から好みのものを選んで欲しいです!

また、複数でも音色を楽しめるように作っているので、
いろいろな組み合わせをして、複雑な音の響きを楽しんで欲しいと思います。

  • 越田穂香

    横浜局 キャスター

    越田穂香

    横浜局2年目独特の高い音色が工房中に響いていて、とても涼やかでした!

ページトップに戻る