2019年に行われた相模原市議会議員選挙では、最後の議席を争った2人の候補者の得票が同数となり、くじ引きで当選者が決められました。
くじで運命が別れた2人は、今月の選挙に再び挑戦。
一票に特別な思いをかける2人を取材しました。
選挙で最後の議席を争う候補者の得票が全く同じだった場合、公職選挙法ではくじ引きで当落を決めることにしています。
珍しいことですが、全国で例があります。
前回・2019年の相模原市議会議員選挙では、最後の議席を争った2人の候補者の得票が、3158票の同数となりました。
くじ引きで今宮祐貴さんが当選、松浦千鶴子さんは落選しました。
得票に一票も差がないのに、当選と落選にわかれる結末。
仮にもう一票取っていれば・・・。
松浦さんは悔しくてたまらなかったと言います。
松浦さん
3158票支持していただいても、負けてしまえば0と同じ事になってしまう。くじ引きで終わって残念でしたじゃなくて、これで終わってはダメだと感じました
当選した今宮さんにとっても、一票の重みを痛感した出来事でした。
今宮さん
どなたか1人でも入れたいただけなかったら、自分も当落にかからなかったということなので。期待に応えられるよう、全力でやっていかなければいけないと思いました。
くじ引きで明暗が分かれた2人。
4年間、一票の重みを感じ続けてきました。
今宮さんは市議会議員として、子育て政策の充実に取り組んできました。
使われなくなったベビー用品を、子どもが生まれた家庭に格安で届ける「リユース事業」などを提案してきました。
議員として大事にしてきたのは、地元の人たちの声を聞くことです。
先月、子育て中の母親たちから話を聞きました。
市に対してこういうようなことをしてほしいというのは、何が一番強いですか?
上の子が学校に行き始めて給食費がかかってくるのと、あたたかい給食がなくなるのが心配ですね。
これからの4年間も、議員として多くの声を届けたい。
今宮さんは2期目の選挙に立候補することを決めました。
今宮さん
市民の声を届けるというのは、やっぱりそこにいる議員にしか出来ないことだと思います。非常に大きな権利だなと。
一件一件みなさん抱えている悩みや、相談は違うんですよね。だから、やっぱり一人ひとりの皆さんを大事にするというのは、一人ひとりの話を聞いていくということだと思います。
一方、落選した松浦さん。議員になることを諦めませんでした。
元教員として人手不足に苦しむ現状を変えたいと、学校現場の人たちから話を聞き続けてきました。
学校の教員不足で大変なこととかありますか?
元教員
本来の仕事がしづらくなるとかいろいろなところで大変ですよ。
しかし、こうした切実な現場の声を聞くたびにある葛藤と感じてきたと言います。
松浦さん
自分が市議だったら、こういう現場の声とか市議会に対して働きかけができる。でも現状それができない。今は本当に話を聞くだけで何もできないんですよね。そういうもどかしさはずっと強く感じていました。
一票でも多く獲得しようと、今回の選挙では元教員の仲間たちに支援を求め、チームとして戦いました。
校長を務めて退職した人などが集まり、チラシを配ったりして選挙戦を支えました。
松浦さん
1人でも多くの人と話をしたい。自分の政策や大事にしたいことを一人でも多くの人に伝えて、受け取って頂きたいなと考えています。
迎えた開票日。
選挙戦をともに戦ったメンバーたちと結果を見守った松浦さん。
3726票と前回から500票以上伸ばして当選しました。
松浦さん
一票というか1人だと感じました。いろいろな思いがある一票なので、本当に重いですね。
一方の今宮さんはなかなか当選が決まりませんでした。
午前3時前、最後に残った議席を獲得。
得票は3298票で、次点との差はわずか22票でした。
消耗した表情で、当選をかみしめました。
今宮さん
本当に一票は大事でしたね。市民の一番近いところで、困っている人の立場に立って引き続き政治をしていきたいです。
4年前の選挙でくじ引きで当落を分けた2人が挑む今回の選挙を取材して、改めて一票の積み重ねで当落が決まることを実感しました。
2人が歩んだ4年間の立場はまったく違いましたが、「一票を大切にする」、「市民の声を届けたい」という強い思いを感じました。
一票の重みを痛感している2人の、今後の活動に期待していきたいです。
松浦さんについては、3月に市議会議員が死去したことに伴い、前回の選挙で繰り上げ当選しました。
本来くじ引きで落選した場合は、欠員が出ると繰り上げ当選することになっていますが、相模原市の選挙管理委員会が手続きを行っておらず、4月13日になって繰り上げ当選しました。この間の経緯はこちらの記事でご覧下さい。