箱根は、火山活動がつくり出した貴重な地形などが評価されて「日本ジオパーク」に認定されています。8年前に箱根山の火山活動が活発化して以降、大涌谷周辺への立ち入りが一時制限されましたが、今は噴気を間近に見られるツアーも再開しています。
取材:越田穂香キャスター
「ジオ」は地球・大地を意味し、「パーク」は公園。
ジオパークは「大地の公園」という意味になります。
箱根火山を中心とした2市3町(小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町、南足柄市)で構成された「箱根ジオパーク」。
貴重な地形や地質が残る地域を保護して、教育や観光への活用を目指す場所として、2012年に「日本ジオパーク」に認定されました。
今回は「ジオ」の目線で箱根をご紹介します!
ロープウエーから見下ろすと、大涌谷ならではの光景が広がります!
箱根ジオパーク専門員・箱根ジオミュージアム学芸員 山口珠美さん
大涌谷は温泉が湧き出るというよりは、火山ガスを利用した蒸気の温泉なんです。
ロープウエーを降りてすぐの「箱根ジオミュージアム」に造成の仕組みがわかる模型がありました。
蒸気に水を持ってきて、造成塔の中で混ぜ合わせると温泉水になります。
その温泉水をパイプを使って温泉施設まで運ぶのが、大涌谷温泉の特徴です。
自然に湧き出る湯量では安定供給が難しい大涌谷地域。
湧き上がる豊富な火山性蒸気を利用して、「蒸気井温泉(じょうきせいおんせん)」を造成しています。
箱根ジオミュージアム学芸員として
ミュージアムには他にも、箱根火山の歴史や見どころを紹介するパネルや体験型の展示があります。ぜひ遊びに来てください!
次に訪ねたのは、噴気の様子を間近に見られる「自然研究路」です。
※事前予約制
噴火後立ち入りが禁止されていましたが、1年前に監視員をつけるなど安全対策をとって再開しました。
天気が良いと富士山を望むこともできます!この日は絶景でした!
歩いていて気になったのが、白く枯れている植物が多いことでした。
箱根ジオパーク専門員 山口珠美さん
噴火で火山ガスが吹き出して、その影響を受けたところが少し白くなっています。
もともとここには火山ガスに強い、隆起高原の植物が多かったんです。
それでも噴火で火山ガスの量が増えてこういう状況になっています。
山口さん!かわいらしい植物を見つけました!
火山ガス地帯に自生する「イオウゴケ」という植物です。
8年前の噴火後、数が増えている気がします!
噴火後、さまざまな対策が行われています。
自然研究路内に大小7つ設置された「シェルター」です。
壁の厚さはおよそ25センチ。
30センチ程度の噴石が飛んできても大丈夫なつくりになっています。
中には、ガスマスクや火山ガス対策の濡れたタオルなども常備されています。
研究路内の至るところに、カメラや地震計、火山ガスの観測装置などが設置されています。
そのデータが送られている先が・・・
神奈川県温泉地学研究所、通称「温地研」です!
箱根火山の状況を24時間モニタリングしています。
主任研究員 道家涼介さん
箱根で異常が検出されると、気象庁や県庁、箱根町などに現在の火山活動について情報提供を行います。
こちらは地震計から送られてきた通常時の波形です。
箱根で発生する地震は、一日1回程度。ほとんど動きはありません。
次は、噴火が起こった日。
2015年6月29日朝9時台の波形です。
全ての観測点でほぼ同時に、複数回の地震が観測されました。
主任研究員 道家涼介さん
よく見ると、地震発生のタイミングに早い遅いがあります。
どの方向で地震が起きたのか、震源を決定することができます。
過去に活発化したときのデータを使って、地下構造の研究なども行っています。
温地研が火山活動を常に観測・研究してくれているおかげで、安心して見学ができているんです。
箱根ジオパーク専門員 山口珠美さん
芦ノ湖ってどうやってできたと思いますか?
湖がどうやってできたか・・・考えたことがなかったです
箱根の最高峰の神山という山なんですが、3千年くらい前に崩れる、山体崩壊を起こすんです。崩れた土砂が堆積して、そのときに川をせき止めて、今の芦ノ湖ができたと考えられています。
大涌谷も山体崩壊によってできた場所だと言われています。
箱根は見どころがたくさんあって、きれいな景色がいっぱいあります。
ただ見るだけではなくて、どうやってできたのかなとか。
そういうことを考えながら見ていただくとより楽しめると思います!
自然研究路は事前予約が必要です!
詳しくは「大涌谷 自然研究路」のホームページでご確認ください!