「通学路あんぜんウィーク」。2回目は横浜市金沢区からです。「バス通りで交通量が多く、歩行者すれすれの距離を車がすれ違い、危ないと感じています」という投稿でした。記者がこどもの目線で動画を撮影しながら取材しました。
(横浜放送局記者・小林奈央)
寄せられた声
「金沢文庫駅までのバス通りで、幼稚園や小学校への通学路となっていますが、安全な歩道がなく非常に危険です。車どうしがすれ違うと、歩行者すれすれの距離で危ないと感じています。朝の通学時間帯、車両の進入を禁止する規制を無視する車もいます」
投稿を寄せてくれた女性に会うため、私(記者)は、ことし2月、現場を訪ねました。
「現場は歩道が無く、路肩が狭いため、小学生が歩くには危険な場所です。子どもは急激な動きをすることもあるので、前から人が来くると、ちょっと車道に出てしまうかもしれない。その瞬間に車と接触してしまうんじゃないかといつも心配してます」
投稿者に周辺を案内してもらいました。
車道は幅6メートルほどしかなく、歩道はありません。
車やバスなどの交通量が多い場所で、車がすれ違うと道路いっぱいに広がっていました。
現場をしばらく観察していると、路側帯をはみ出して歩く小学生の姿も。
また、車の横すれすれを通り抜けていく小学生の姿も見かけました。
どれくらいすれすれに感じるのかが気になったので、カメラを手に持って歩いてみました。
車が記者のすれすれの距離を通っていくだけでなく、体感的にスピードはかなり速く感じました。
すぐ横をバスやトラック、乗用車が通ると、怖さを感じました。
車と歩行者の距離が近いため、なるべく子どもを歩かせたくないと考えている保護者もいました。
投稿者はもう1つの現場を案内してくれました。
「見通しが悪いカーブもあり、車が来ていることに直前まで気づきません」
その現場もカメラを持って歩いてみました。
道路の先に住宅の塀があり、カーブしています。
カーブの角度が急で、全然先が見通せず、壁を曲がる直前まで、前から向かってくる車に気がつきませんでした。
小学生がこの壁沿いから飛び出してしまうと、前から来るバスや車などにぶつかってしまう危険性を感じました。
歩道がなく、狭い路側帯しかなく、見えにくいカーブもある道。
車がすれ違うと道路いっぱい広がり、事故の危険性が高まってしまいます。
交通量を抑制するため、警察は、平日の午前7時から8時半まで、一部の車両を除いて、直進して進入するのを禁止する「指定方向外進行禁止」の標識を設置して規制しています。
平日はバスや自転車を除いて、車は左折か右折しかできません。
しかし、投稿者によると、違反する車があとをたたないということです。
「警察の方も時々取り締まりをして下さってるんですけれども、毎日何台かは違反している車があります。それも30キロ制限と書いてあるんですけれども、60キロくらいだして走ってる車も見かけます」
実際にどのくらい車が直進して進入してしまうのかが気になったので、独自に調査してみました。
現場には2月20日、2月27日、3月2日のあわせて3回訪れました。
朝の7時から8時半までの間、カメラを置いて、定点観測しました。
撮影した映像を見てみると、バスの後ろを走りながらそのまままっすぐ進入してしまう車や、交差点を左折した車のすぐ後ろからまっすぐ進入してしまう車などが確認できました。
2月20日・・・25台(最多)
2月27日・・・15台
3月2日・・・6台
理由について警察に取材しました。
違反してしまったドライバー
「規制されていることは分からなかった」
「夕方にいつも通る道だから朝も大丈夫だと思った」
周辺には小学校や中学校などがあり、東西に国道16号線や国道357号線が通り、住宅も多い場所です。
土木事務所や警察、住民に話しを聞くと、昔から使われている道路だということでした。
横浜市中心部につながる国道への抜け道になっていて、近道をしようとするドライバーが多いのではないかということです。
「ここを抜けると国道や工業団地がありますので、ここは近道なんです」
春の新入学や進級のシーズンを控えた3月15日、金沢警察署の警察官が交差点に立ち、指導にあたりました。
しかし、この日も交差点を直進して進入してしまう車が7台ありました。
金沢警察署 河野交通課長
「今後も取り締まりをしていくとともに、地域の方々と協力し、通学する児童に対して見守り活動を実施することで交通事故の防止し、すべての道路利用者が安心して通行できる道路環境を構築していきたい」
交通安全に詳しい日本大学理工学部交通システム工学科の小早川悟教授に話しを聞きました。
小早川教授は、規制だけでは根本的な解決にならないため、危険な場所にポールを立てたり、歩行者のスペースを広げたりするとともに、周辺の道路の利用や活用を促すなどの全体の道路環境を踏まえた対策が重要だと指摘しています。
●現場のスクールゾーンについては?
子供が安全に歩けるための、道路のつくり方と規制のかけ方がうまくかみ合ってないのかもしれない。子供が安全に歩けるようにするには、車がちょっと我慢して通るような道路のつくり方にしなきゃいけないし、そういう規制のかけ方をしなきゃいけない。
●歩行者が安全に歩くためにはどのような対策が?
物理的な安全のための対策としては、子供が通る側にポールを立ててあげたり、道路の交差点の部分をカラー塗装して車に注意喚起して走行してもらったりする対策がある。
●ドライバーが違反しないようにするためには?
そもそもなぜその人が抜け道を使うのかから考えなければいけない。道路はネットワークなので、周辺の道路がどうなっているのか、人の動きはどうなっているのか総合的に判断して対策を考えていくべき。規制だけでやる、道路だけでやるのは限界があるので、それをうまくどう組み合わせていくかというところが非常に重要です。
●今後、危険な道路に対してはどうしていけばいい?
今後の対策を進めるためには地域住民の合意が必要なので、「危ない」と声にだすだけではなく、住民が一体となって、どう危ないと感じるのかアンケートを取ったり、交通量や車の速度を測るなどのデータを集めたりすることが必要です。そして、そのデータを元に警察や行政に働きかけて、連携して実行に移せるような対策を進めることが重要です。
NHKでは特設サイト「その通学路、安全ですか」に寄せられた投稿をもとに取材を続けていきます。引き続き、投稿をお寄せください。投稿はこちらです。