小田急電鉄が神奈川県伊勢原市内に新駅建設を検討することを盛り込んだ、小田急と市の連携協定が、3月8日に結ばれました。小田急の新たな駅が建設されれば2004年以来となります。地域活性化や大山の観光振興への期待などをまとめました。
新たな駅が検討されているのは、小田急小田原線の伊勢原駅と、鶴巻温泉駅の間にある地域です。
予定地を訪ねると、農地や工業団地が広がっていました。
近くに住む人に話を聞くと、驚きや歓迎のほか、戸惑いの声も聞かれました。
小田急沿線に住んでいるので、小田急線が発展することには大賛成です。大山に行く観光客にも便利になると思います。
こんなところに駅を作ってメリットが あるかというと、そんな風には感じないです。
もともとの計画は相模原市の相模大野駅に隣接する、「総合車両所」の移転先が必要になったのが始まりでした。
総合車両所は車両の検査や修理を行う施設で、小田急電鉄には1か所しかありません。
運用開始から60年がたって設備の老朽化が進み、新しい施設が必要になったのです。
沿線で災害のリスクが比較的少ない、まとまった土地を探していたところ、予定地が見つかりました。
あわせて新駅の検討も始まったということです。
新駅が建設されれば2004年に川崎市で開業したはるひ野駅以来です。
3月8日伊勢原市役所で、市と小田急の間で連携協定が締結され、高山松太郎市長と小田急電鉄の星野晃司社長が握手を交わしました。
協定には新駅の検討も盛り込まれていますが、建設時期は決まっていません。
盛り込まれた内容です。
▼小田急の総合車両所を2033年度までに新駅予定地近くに移転する
▼総合車両所の移転後に向けて新駅の建設を検討する
▼市は予定地近くを通る都市計画道路を整備する
▼市と小田急が協力してまちづくりを進める
都市計画道路整備事業を推進していく。伊勢原駅北口再開発も動き始めている。新たな総合車両所の計画と連携して円滑に進めたい。将来のまちづくりを考えて産業の軸を形成し、働くところと住むところを共存させる。
スマートモビリティー社会に対応したまちづくりの実現につながると思う。課題はあるが立ち止まること無く、近未来に対応したまちづくりを小田急と進めていきたい。
伊勢原市と持続可能なまちづくりを推進する連携協定結べることは喜び。都市計画道路と新総合車両所の連携を進める。大野車両所は築60年で老朽化。立て直すのが鉄道事業者としての使命。最新設備やシステムを導入し、メンテナンス体制の質を向上させる。
スマートモビリティー社会の実現を目指す。路線バスも市内には走っており、自動運転やMaaS(複数の移動手段の予約や決済を一括で行うシステム)の知見も生かせるのではないか。地域価値創造企業として、伊勢原市の価値の向上を目指していきたい。
伊勢原市の人口はおよそ10万1000人。
2020年までは増加を続けましたが、減少傾向に転じています。
3年後には10万人を下回り、その後も減少が続くと推計されています。
こうした中、伊勢原市は新駅を新たなまちづくりの中心として期待しています。
市は新駅の予定地に合わせて道路整備や都市計画を進める方針です。
伊勢原駅周辺から予定地の前を通って秦野市に抜ける、計画道路の整備を進めています。
鉄道と道路、交通ネットワークを発展させ、新駅の予定地や伊勢原駅を中心に、人や産業を集中させていくのが狙いです。
また年間およそ100万人が訪れる、県内有数の観光地「大山」へのアクセスも向上させて、観光客を呼び込みたいとしています。
飲食店では期待の声が聞かれました。
飲食店経営者
アクセスがより便利になって、お客さんが増えることを期待しています。楽しみにしてます。お客さんから日帰り温泉があったらいいという意見をよく聞くので、新駅に温泉施設なんかができればいいと思います。
都市計画が専門で関東学院大学法学部の牧瀬稔准教授は、「駅をつくるだけでは発展は難しい」と指摘しています。
新しく駅ができれば市に活気が出ることは間違いない。ただ、日本の人口は減少していくと考えられるので、商業施設など、駅周辺の整備を進めて人を集めていく工夫が重要だ。
鉄道事業者と行政が連携するとともに、住民の意向をしっかりと聞いて、住民目線のまちづくりを進めることが大切だ。