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ダイヤモンド・プリンセス集団感染3年 感染した乗客の思い

  • 2023年02月03日
別の船でクルーズ中の土屋さん夫妻

3年前の2月3日に横浜港に入港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、新型コロナの集団感染が発生しました。感染した乗客は、当時のことを思い出すと涙が止まらなくなると話しています。

クルーズ船で集団感染

国際クルーズ船、「ダイヤモンド・プリンセス」。
新型コロナの集団感染が発生し、3700人の乗員・乗客のうち712人が感染、13人が死亡しました。
当時はまだ検査や治療の体制が確立しておらず、乗客たちは船内に長期間隔離されました。

苦しむ夫に何もできなかった

土屋硯之さん・京子さん夫妻

横須賀市に住む土屋硯之さん(81)と土屋京子さん(81)夫妻は、ダイヤモンド・プリンセスに乗船していました。
クルーズ船の旅が好きで、毎年のように夫婦で参加していました。
2020年の1月20日に横浜港を出港し、香港やベトナムを訪問。
それまでは楽しい船旅でしたが、香港で下船した人から新型コロナの陽性者が見つかりました。
横浜港に入港する前の1月末、硯之さんが発熱して寝込むようになり、やがて意識を失ったといいます。

硯之さん

もう意識がなかったので、記憶がないんです。
苦しくて『助けて。何とかして』って言ったのは覚えています。

誰も助けてくれず、募る不安

京子さんは船のフロントに何度も電話して、助けてくれるよう頼みました。
しかし誰も対応してくれず、船内の状況も分からずに不安だけが募っていったといいます。

京子さん

何度電話しても「お待ちください」って言われるだけで。夫が「苦しい、助けて」って叫んでいるのにオロオロするだけで何もできなかったです。

今も涙が止まらない

当時のダイヤモンドプリンセス船内

入港から6日後、硯之さんはようやく病院に搬送。
一時は集中治療室で、人工心肺装置=ECMOを付けられ、生死の境をさまよいました。
入院は40日に及びました。
京子さんも感染して別の病院に入院。
夫婦が再会できたのは、入港から1か月たったあとでした。
京子さんは今でも、当時のことを思い出すと涙が止まらなくなるといいます。
好きだった旅行にも、行くことができなくなりました。

3年目の2月3日 現場で追悼

ダイヤモンド・プリンセスが横浜港に入港してから3年となった、2月3日。
当時の乗客ら20人が、船が停泊していた横浜港のふ頭に初めて集まりました。
海に菊の花を投げ入れて、静かに手を合わせ、亡くなった人たちを悼みました。

元乗客の千田忠さん

会を主催したのは元乗客で、札幌市に住む千田忠さんです。

次のパンデミックに備えて新たな感染症にどう対応するか。二度と同じようなことが起きないように、国や運航会社にしっかり検証を行うよう訴えていきたい。

土屋さん夫妻も参加しました。

土屋京子さん
亡くなった方のことを思うと、この場にくることもためらわれました。
でも、追悼することができて良かったです。

国際クルーズ船の感染対策は

国内の港では、ダイヤモンド・プリンセスの集団感染以降、国際クルーズ船の受け入れを停止してきましたが、2022年12月から再開しました。
ダイヤモンド・プリンセスも3月の寄港が予定されています。
再開を前に、クルーズ船の業界団体は、日本で運航する国際クルーズ船のためのガイドラインをまとめました。

▼乗船前に全ての乗客に検査を求めて陰性を確認すること。
▼感染拡大を防ぐために船内のゾーニングを徹底すること。
▼発熱などの症状が出た場合は、直ちに検査を行って感染者や濃厚接触者を隔離。
▼検疫所や関係機関に連絡することなどを定めています。

クルーズ船「にっぽん丸」 提供:商船三井客船

1月31日、3年ぶりの国際クルーズを終えた「にっぽん丸」が横浜港に帰港しました。
48日間のクルーズで、あわせて12人の乗客の感染が確認されました。
すぐに専用の部屋に隔離して寄港先で船を下りてもらい、現地の宿泊施設などで療養してもらうことで、感染拡大を防いだということです。

船を運航する商船三井客船の村上寛常務
寄港先の国の対策が急に変わって、感染した乗客の療養先の手配に苦労した国もありました。それぞれの国の対策がどんどん変わっているので、その国に応じた対策をしっかりとりながら、お客様にさらに楽しんでもらえるような工夫をしていきたい。

  • 古賀さくら

    横浜放送局 記者

    古賀さくら

    横浜局、前橋局を経て、現在は横浜局で主に県政を担当。 新型コロナウイルスへの対策をはじめ、医療や介護福祉分野を精力的に取材。

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