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神奈川県藤沢市でスマホ動画の119番通報始まる

  • 2022年11月14日

救急や火事の通報にスマートフォンで撮影した動画を活用するシステム「Live119」。
東京都や大阪市で本格導入され、人命救助や災害時の被害軽減が期待されています。
神奈川県藤沢市では来年度からの本格導入を目指し、2022年10月から試験運用が始まりました。

「Live119」とは

藤沢市消防局のデモンストレーション

「Live119」は119番通報時に通報者のスマートフォンで撮影した動画を送るシステムです。スマホを通じて送るリアルな現場の映像を介して通報者と消防がやりとりすることで、救急や火事の際のより迅速な対応に役立つことが期待されています。 

通報から撮影まで

藤沢市消防局の通信指令室

通報者が動画を撮影し、消防に送るまでの仕組みは次のようになっています。
119番通報を受けた消防の通信指令員は、通常の部隊出動の指令に加えて、必要と判断したときに通報者のスマートフォンにURLが記されたショートメッセージを送ります。
通報者がこのURLにアクセスすると自動的に撮影画面に切り替わり、現場の映像がリアルタイムで消防に送られる仕組みです。
通報者が利用するにあたり、事前にアプリをダウンロードしたり登録したりする必要がないため、幅広く利用してもらえるということです。 

応急手当の現場で活用

通信指令員は、救急車が到着する前にけが人や急病人の様子を映像で見ることができます。
このため気道の確保や心臓マッサージ、それに止血など応急手当のしかたを具体的に指示することができます。

指令員

「呼吸の確認をします。倒れている人の胸の辺りを横から写してください」

「そのまま心臓マッサージを続けてください」

また、心臓マッサージの仕方やAEDの使い方を説明する30秒の短い動画を消防から通報者のスマートフォンに送ることもできます。

30秒のショート動画

火災現場で活用

火事の通報の時にも役立つことが期待されています。
現場に近いところから「Live119」で通報すると消防は、火の勢いや周囲の建物への燃え広がりの状況などをいち早く把握できます。
また、藤沢市消防局では、通報者が現場の住所を分からないケースもあることから、正確な住所のほか、火元の特定にもつながるのではと考えています。 

救命につながったケース

藤沢市消防局によりますと、すでに「Live119」を活用しているほかの自治体では迅速な対応が救命につながったケースもあります。

『小さな子どもの心肺が停止したとき、周囲にいた保護者とその友人らが映像を送りながら指示に従い心肺蘇生を行った』

『家族が倒れて慌てていた通報者が、通話している消防の職員と同じ状況を共有することで落ち着きを取り戻して応急手当ができた』

協力者が複数のイメージ

藤沢市消防局では試験運用を通じて「Live119」が有効な場合とそうではない場面を見極めて、条件を決めて運用したいとしています。
運用するのは、通報者が傷病者などの当事者でない場合や周りに協力者が複数いる場合などとする方針です。いまのところ、現場に傷病者本人1人しかいない場合は通報の負担が大きくなることからシステムの利用は想定していません。

藤沢市ならではの期待も

藤沢市 江の島

相模湾に面する藤沢市。
江の島があり、夏場は多くの海水浴客で賑わう場所です。
藤沢市消防局によりますと、水難事故の通報は年間20件あまりあるということです。
しかし、通報者が事故現場の住所を分からないケースもあり、消防では映像に映る周囲の建物や
江の島の見える位置などからいち早く場所の特定ができるのではないかと期待を寄せています。
また、海上に人が流された際などにも現場の映像を送ってもらうことでリアルタイムで状況を把握でき、より迅速な救助活動につなげられるのではないかと考えています。

藤沢市消防局警防課・通信指令担当 澁谷陽 上級主査
「より効果の高い救命処置や通報者の方の負担軽減につなげていきたいです」

神奈川県内の自治体で「Live119」を利用するのが初めてとなる藤沢市。
試験的に利用するなかで、倒れた傷病者の顔色や体位、呼吸の仕方がわかるなど、映像を介すからこその有用事例も確認され始めているということです。
藤沢市消防局では、年間2万8000件あまりある119番通報にどのように役立つのかなど、システムの効果を検証したうえで2023年4月からの本格的な導入を目指すことにしています。

  • 中村早紀

    鎌倉支局 通報員 

    中村早紀

    2015年、湘南エリアのニュースや話題を担当する通報員になる。ケーブルテレビや雑誌なども合わせると鎌倉の取材歴は約17年。「カメラを手に取材に駆け回っています。気軽に声をかけてください」

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