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鉄道150年 小田急子ども運賃50円の効果は

  • 2022年10月07日

小田急電鉄はことし3月、小学生の運賃を全線50円に大幅値下げしました。人口減少時代を迎え、沿線に子育て世代を呼び込もうという狙いです。実際にどんな効果がでているのか、現地を取材しました。

(横浜放送局・厚木支局記者 高橋哉至)

子ども全線50円に値下げ

神奈川と東京を結ぶ小田急電鉄はことし3月、小学生の運賃を全線50円に値下げしました。新宿から終点の小田原まで乗っても50円です。こうした取り組みは全国初です。

小田原駅

子どもの利用者は、小田急全線で去年に比べて5割ほど増加し、中でも小田原駅では前の年の2倍近くに増えました。

小田原城址公園

近くにある小田原城址公園を、3連休最終日の9月25日に取材しました。親子連れで賑わっていて、小田急を使ってきたという人たちもいました。

川崎市からやってきたという親子に聞きました。

記者
きょうはどうやってここまで来ましたか?
小学生
ロマンスカー!
母親
出かけるときに、電車賃が安くなると選択肢が広がります。うれしいですね。コロナでなかなかお出かけできなかったので、ありがたいです。

人口減少時代 子育て世代獲得を

利用者増の効果は出ていますが、小田急電鉄では値下げの影響で、年間およそ2億円の減収を見込んでいます。
それでも踏み切った背景にあるのが人口の減少です。

小田急電鉄では少なくとも今後15年間は、沿線の人口が減り続けると推計しています。
運賃値下げをきっかけに、1人でも多くの子育て世代に小田急の魅力を知ってもらい、沿線に移り住んでほしいと期待しているのです。

小田急電鉄交通企画部 吉川卓杜さん
まずは子どもの鉄道の利用のハードルを下げて利用を増やしたい。その利用に合わせて親やおじいちゃんおばあちゃん、家族で鉄道を利用してもらいたいという狙いです。
人口減少を1企業だけでとめられるとは思っていません。でも、50円というのは一つのきっかけになると思いますので、これを旗に掲げて、沿線の自治体や皆さんと一緒に子育てしやすい沿線というのを作っていきたいと考えています。

人口減の町 値下げをチャンスに

沿線の自治体も動き始めています。神奈川県西部の松田町です。

松田町 小田急新松田駅近く

ここ20年は人口の流出が続き、現在1万人あまりの人口が、10年後に9000人ほどに減ると見込まれています。
50年前から小田急の新松田駅前で焼き肉店を営む秋田谷光彦さんは、かつては駅の周りに商店や飲食店がたくさんあり、にぎやかだったと振り返ります。

秋田谷光彦さん
駅の利用客が減れば町自体の活気がどうしてもなくなります。人口が増えてまたにぎやかな町を取り戻したいですね。

松田町役場

運賃の値下げで、新松田駅でも子どもの利用者が増えました。町では高校生以下の医療費をすべて無料にしたり、週末や長期休みの小中学生に、ボランティアが無料で勉強を教えたりと、子育て世代の支援に力を入れてきました。電車で町を訪れる人たちに、こうした魅力を伝えていきたいと考えています。

本山博幸町長
子どもをとにかく中心に置いた事業をやりたいと思っていたときに、ちょうど小田急さんが50円に値下げすることになりました。我々は待っているんじゃなくて一緒にやっていく気持ちでより具体的な話を詰めていきたいです。

取材を終えて

「子どもの利用を積極的に促して大人の利用を活性化する」というのは画期的だと思いました。
人口減少に歯止めをかけたい自治体としても、今回の値下げをきっかけにまずは足を運んでもらってみずからのまちの魅力を知ってもらい、移り住むことへの後押しができるという期待感を強く感じました。
共通した目的のために鉄道と自治体の連携がより重要となっていくと感じました。

  • 高橋哉至

    横浜放送局・厚木支局記者

    高橋哉至

    平成30年(中途採用で)入局。 初任地の宇都宮放送局では 警察や司法、支局取材を担当。 去年11月からは厚木支局で 地域の課題や、スポーツ関連の話題を取材。

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