光沢のある生地に派手な刺しゅうが施されたファッションアイテム、スカジャン。
終戦直後の横須賀市で誕生したというスカジャンの歴史を解き明かそうという取り組みが、地元で行われています。
スカジャンは横須賀の「スカ」とジャンパーの「ジャン」をとって、「スカジャン」と呼ばれるようになりました。
地元でスカジャン専門店を経営する一本(ひともと)さんとスカジャンの柄などのデザインを行う横地(よこち)さん。二人は3年前に研究会を立ち上げスカジャンが生まれた経緯などを調べています。
一本知良さん
ここまで大胆に刺しゅうを入れた服、鷲(わし)・虎・竜を入れた服というのはなかったと思うんです。
終戦直後に横須賀市中心部のドブ板通りで生まれたスカジャンは、アメリカ兵向けに、派手な刺しゅうを入れた「お土産」として人気が出たのがその始まりと言われています。
終戦直後から続く店の主人によると、アメリカ人に好まれるスタジアムジャンパーのデザインに派手な刺しゅうを組み合わせたのでないかとのことです。
横地広海知さん
お土産品だからこそ、あんな派手で、当時の日本人からすると変わった形のものを作ろうということに至ったんだと思いますし、当時だからこその柔軟な発想で出来たんだろうなと思います。
横地さんは、終戦後に世界各地で売られていた刺しゅうが施された土産物などを集め始めました。
スカジャンとの関連を探る中、その多くは日本で作られたものでした。
こちらは、1950年代から60年代のクッションカバー。
カリブ海の島で売られていたものです。それがなぜ、日本で作られたのか。横地さんは日本の刺しゅう技術の高さが関係していると言います。
ここまで緻密に刺しゅうされたものと言うのは(アメリカ人は)たぶん見たことがなかったんだろうと思います。
これを海外で売ったら、すばらしい技術なのでうけるだろうと。
スカジャンにはこうした土産物と同じ 横振り(よこぶり)刺しゅう という技術が使われています。
ミシンの針が左右に動き縫いながら生地を自在に動かしていくこの方法。糸の向きや密度を細かく調整できるため、職人の技量で立体感や陰影が表現できます。
日本で作られたスカジャンが、いちばん柄が緻密で刺しゅうされている範囲とかも広くて、創意工夫があるんですよね。結果的に今でもスカジャンというのが世界に残っている理由になっているのかなって。
研究会の二人が調べた歴史に地元の美術館も注目しました。
この秋、スカジャンの大規模な展覧会を開くことにしたのです。世界の土産物の中でスカジャンをとらえ、横振り刺しゅうならではの柄の美しさなどを、後世に伝えていこうというのです。
横須賀美術館 学芸員 栗林 稜さん
やっぱりなんと言っても最大の魅力は刺しゅうにあると思っています。その刺しゅうが、どういうふうに入れられているのかというのを知って頂くことによって、スカジャンをより楽しく多彩な魅力を感じていただける展覧会にしたい。
スカジャンの展覧会は11月19日から横須賀美術館で行われます。