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Jリーグが地域を変える!? Y.S.C.C.の「シャレン」

  • 2021年09月16日

Jリーグがいま力を入れているのが「シャレン(社会連携)」です。「主語は地域」「Jリーグを使ってもらう」をキャッチフレーズに、選手、スタッフ、スタジアム、サポーター、地元企業とのネットワークを生かし、地域の人、企業、自治体などと連携、地域課題の解決に取り組み、地域とともに豊かになることでクラブを維持・発展させることを目指すというものです。今回は、横浜市内でユニークな社会貢献活動を行うJ3のチーム・Y.S.C.C.(Yokohama Sports&Culture Club)の取り組みを取材しました。

「寿地区」で行う地域支援活動

横浜市中区にある寿地区。JR石川町駅の西側に広がるこの地区は日雇い労働者の街として知られており、120もの簡易宿泊所が立ち並びます。この地域で暮らす人の中には、アルコール依存症や運動不足、生活習慣病など様々な問題を抱える人も少なくありません。そんな寿地区で、社会貢献活動をしているのがJ3のY.S.C.C.です。地元の横浜市寿町健康福祉交流協会と連携し、「Y.S.C.C.元気プロジェクト」と称して、この地区の人たちの健康増進のための活動を行っています。

Y.S.C.C. (Yokohama Sports&Culture Club)は、1986年に地域の少年サッカー教室として創設。横浜市中区を中心に活動しているクラブで、中区本牧に本拠地を置いており、サッカーチームは2014年にJ3に参入しています。フットサルチームは2020年から国内最高峰のF1リーグに所属しており、元日本代表の松井大輔選手や、ミャンマー代表のピエ・リヤン・アウン選手が所属したことでも注目されるようになっています。

トップチームの選手も参加!フットサル教室

この日、寿地区で開かれていたのはフットサル教室。簡易宿泊所が立ち並ぶ場所の近くの公園に、40人以上が集まりました。年代は様々ですが、Y.S.C.C.によりますとアルコール依存症を克服するプログラムに参加している人たちが中心だったということです。この教室の目的は、フットサルの技術を高めることではありません。日ごろ運動になじみのない人が、体を動かすきっかけを作ることで、楽しみながら健康改善に役立ててもらおうというものです。講師役を務めるのは、フットサルトップチームの監督とコーチに加え、サッカートップチームのFWンドカ チャールス選手が参加しました。

教室では、まず、準備運動をしたあと、ボールの蹴り方やとめ方、ドリブルを練習しました。講師たちは、みなが楽しめるようにと丁寧に声をかけて教えます。参加者たちは慣れないボールの扱いに苦戦しながらも、講師の声に耳を傾けながら取り組みました。教室の締めくくりに行われたのは、ミニゲーム。みな童心にかえったかのように和気あいあいと笑顔でボールを追いかけていました。

Jリーグのチームが寿地区に来たきっかけは?

Y.S.C.C.が、寿地区で活動を始めたのは4年前のこと福祉協会の職員である出口淳一さんが、昔からのサッカー仲間であるY.S.C.C.のスタッフに、「寿町の皆さんも気軽に楽しめる運動はないか」と相談したのがきっかけでした。

横浜市寿町健康福祉交流協会 出口淳一さん
寿町は体を動かすということが根づいていない地区でした。体を動かす“場”がないという感じでだったので…健康のためには体を動かす"場"を作ることが必要ではないかと。
そこで、Y.S.C.C.にお手伝いしていただけたらと思い声を掛けました。実際に始めてみると、参加してくれる人が増え、町の人たちの交流も広がってきたので、良かったと思っています。

“地域”にあったプログラムを用意!

「Y.S.C.C.元気プロジェクト」では、フットサル教室以外にも様々な教室を用意しています。ウォーキングの教室など屋外で体を動かすものから、簡易宿泊所の3畳一間の狭いスペースでもできる「健康体操」や、狭いキッチンで出来る「料理教室」など、寿町で暮らす人たちが、無理なくできる内容となっています。

こうしたプログラムの運営の中心になっているのが、Y.S.C.C.のサッカースクールで講師をしている伊藤貴亮さんです。福祉協会からの声をきっかけに、いっしょに企画を立ち上げました。オリジナルの健康体操を考案するなど、長年、寿地区での活動に携わっています。

Y.S.C.C. 伊藤貴亮さん
最初に「健康体操」という簡単な体操の教室を開催したとき、「寝ているのかも?」という参加者が何人もいてショックを受けました。その後は、そういう方もいることを想定しつつ、この教室に参加すると「面白い!」「寝ている場合じゃない!」と思ってもらえる内容にしようと、努力するようになっています。参加者から「楽しい!」と思ってもらうことがやりがいとなっています。

伊藤さんは、活動を続けるうちに、寿地区に対する印象が変わってきたと言います。

寿町には、正直なところ、あまり治安がよくないという事前情報しかありませんでしたが、実際に一緒に体を動かしてみるとフレンドリーな方ばかりで、昔ながらの人間味ある人たちが大勢いると感じるようになり、そういう部分に僕自身も引き付けられている気がしています。
地域の中に入りこんで活動することが、クラブが目指すべき地域との取り組みの姿ではないか。自分自身も、そこに、少しでもお手伝いできているのではないかと実感していますし、いずれは、健康支援のプログラムから発展して、就労支援にもつなげていければとも思っています。

「地域はファミリー」

Y.S.C.C.がチームのモットーとして掲げているのは「地域はファミリー」。チーム発足時から地域への取り組みを大切にしている、Y.S.C.C.代表の吉野次郎さんはこう話しています。

Y.S.C.C. 代表 吉野次郎さん
”町に必要とされるクラブ”になりたい、クラブの活動を支えて下さる地域の人たちに恩返しがしたいと思っています。クラブとして、地域を元気づける活動をしよう!と。ホームタウンの中に課題を抱えている場所、人がいるなら、課題解決のためにスポーツの力を発揮したいと思っています。自分たちの活動を通して健康になる人が増える、そういった活動を通して、ポジティブに生きられる社会を作っていければと考えています。
こういった社会貢献活動が「目標よりも日常に」なればいいと思っていますし、社会連携が当たり前の文化にできたらと考えています。

  • 髙見彰良

    NHK横浜放送局 地域貢献・情報発信プロジェクト

    髙見彰良

    2014年入局。2020年から横浜放送局勤務。ことし5月からはデジタルを中心に地域の課題や魅力を発信している。

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