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「ご当地映画」市川監督 横浜 野毛を舞台に最後の作品

  • 2021年07月19日

みなさんは「ご当地映画」をご存じでしょうか。ある地域にスポットをあてて撮影した映画です。そのご当地として、横浜市の野毛を舞台にした作品が制作されました。監督は市川徹さん、72歳。ご当地映画の“巨匠”とも呼ばれています。この作品を映画監督人生の最後の作品にするという市川監督。撮影現場を取材し、作品への思いを聞きました。

野毛を舞台に“すべて吐き出す”

 横浜市のJR桜木町駅の近くに広がる野毛地区。駅をはさんで海側のみなとみらい地区とは対照的で、昭和の風情が残る、飲食店が立ち並ぶ街です。この野毛を舞台に今年5月、映画の撮影が行われました。

撮影を指揮するのは、横浜市出身の市川徹監督、72歳。「ご当地映画」の“巨匠”とも呼ばれています。野毛を舞台にした今回の作品に「自分の心の思い出みたいなものをすべて吐き出す」と話します。

市川徹監督

映画は「SWANEE 野毛探偵事務所」。野毛に事務所を構える探偵が、ある日、昔なじみの女性ジャズシンガーから人探しを依頼され、事件に巻き込まれる物語。意外な展開が待ち受けるスリルあふれる作品です。

「ご当地映画」との出会い

市川監督が、映画監督を始めたのは40歳を過ぎてからでした。それまでは、神奈川県内のTV局で番組制作に携わっていましたが、「コメディー映画を撮りたくて」と監督に転身。しかし、思うようにいかず、コメディ映画よりも任侠もののVシネマの制作が増えていきました。
ご当地映画に目覚めたのは10年ほど前。以前映画の撮影でゆかりのあった富山県の氷見市から、地元を舞台にした映画を制作してほしいと依頼されたことでした。初めて手掛けたご当地映画「万年筆」は、限られた予算の中で、プロの俳優は二人だけ。多くの地元の人がボランティアで協力してくれました。この作品をきっかけに市川監督は、ご当地映画を撮り続けることになりました。

市川徹監督
「作品を撮り終えるまでに5ヶ月とか6ヶ月とかかかるのですが、その間にだんだん、だんだんみんな、何か興味が湧いてきてくれて。本当に何か一体感が生まれてきた」

がん再発 監督として最後の作品を

これまでに手がけた「ご当地映画」はおよそ10本。ご当地映画の“巨匠”とも呼ばれるようになった市川監督ですが、1年前、かつて患っていたがんが再発しました。少しずつ体が動かなくなる中で、市川監督は引退を考え始めたと言います。

新型コロナウイルスの感染が広がり始めたのは その矢先でした。野毛の街が、新型コロナの影響を受けていくのを目の当たりにした市川監督は、ここを自分の最後の映画の舞台にすることを決めたと言います。

市川徹監督
「野毛は昼からお酒を飲んでる人がたくさんいるとか、活気があるとか、そういう言葉だけでは済まない、大好きな街なんですよね。だからって僕に何かできるわけではないんですけども。せめて、ここを舞台にした映画を撮りたいなと思った」

地元が支える ご当地らしさ

地元の人たちが市川監督を支えてくれました。役者やスタッフとして、協力してくれています。
市川監督は、俳優やスタッフからのアイデアを積極的に取り入れ、作品に生かしています。

「僕の意見だけが100%正しいわけじゃないと思っているんで。できるだけ皆の意見聞いて、 いいところはいいって言う感じで進めましたね」

 

映画の中で特にこだわったのは、横浜らしさを表現すること。メインになる舞台は、現役でもっとも古いジャズ喫茶「ちぐさ」です。全編にジャズの名曲をちりばめ、コロナ禍前の活気あふれる“ジャズの街 横浜”への思いを込めています。

横浜ゆかりのジャズシンガーで、重要な役を演じるナオミ・グレースさんも、作品の中でその歌声を披露しています。

そして、5月下旬のクランクアップ。市川監督は、みなに感謝の言葉をのべました。 
「自分の最後の監督作品としては、本当に最高の作品になった。どうもありがとう!」

次世代を育てる

今回の映画、市川監督には、もうひとつの狙いがありました。若者に映画作りの魅力を知ってもらうことです。

演出・編集スタッフとして映画監督志望の大学院生を採用。クランクアップ後の編集作業は二人三脚で取り組みます。

「この映像を入れないとやっぱり横浜っぽくないんじゃない?」

「監督に教えてもらって。大学院じゃ教えてもらえない。」

最後の作品 未来への期待

野毛を舞台にしたご当地映画。そして、市川監督にとって最後の作品。そこには未来への期待が詰まっています。

市川徹監督

「どの作品も頑張るのは一緒ですけども、ただ今回は、若い編集の人の力も借りているので、何か違う自分がもしかしたら最後の最後に出せるのかなっていう気がします」

後説

市川監督、引退後は若い世代の映画制作者向けに、プロデューサーとして資金集めや企画の依頼をしたり、役者を育てることで、お世話になった映画業界に恩返しがしたいと話しています。この映画「SWANEE  野毛探偵事務所」は7月18日から公開しています。      

  • 岡田 美咲

    横浜放送局 キャスター

    岡田 美咲

    「ひるまえほっと」「首都圏ネットワーク」ラジオ「はま☆キラ!」などを担当

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