首都圏情報ネタドリ!

  • 2024年4月19日

森永卓郎氏など有名人かたり…SNS型投資詐欺急増 30代‐40代も注意 “怪しい”と思ったが1900万円失った人も

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当初は怪しいと思っていたのに、気づけば1900万円を2か月で失っていた…

投資に関する偽のSNS広告を入り口とした詐欺被害が急増しています。SNSなどをきっかけとする詐欺の被害額は2023年に455億円にのぼりました(警察庁統計より)。森永卓郎さんなど有名人を悪用した詐欺の被害も数多く発生しています。

被害に見られた特徴とは?連絡手段として最も多く使われたツールは?
最新の手口と注意点を取材しました。(全2回の前編)

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

「首都圏情報ネタドリ!」で放送した内容は、NHKプラスで配信しています。
(配信期間4月19日(金)19:30~4月26日(金)19:57)↓

“完全に洗脳されていた”詐欺の巧妙な手口は

SNS上でだまされ、わずか2か月の間に1900万円を失ったという30代の佐々木さん(仮名)です。

きっかけとなったのは、インスタグラムに上がってきた投資講座の広告だったといいます。

佐々木さん(仮名)
「子どももいるので将来のことを考えて、少しでもお金を増やせるんだったらと思いました。怪しいというのは頭にあったのに、被害額が大きくなるまで、どうしてやってしまったんだろう…」

広告をクリックして招待されたのはLINEのグループ。西垣と名乗る投資家が講師で佐々木さんを含む80人ほどが参加していました。

株価や資産形成などに関するやりとりが1日100回以上交わされていました。

子どもの教育資金にするため、新NISAを始めようと思っていた佐々木さん。

相談すると「NISAもいいけれど、今は海外FXがプレミアム相場と言われていてもうかる」というメッセージが返ってきたといいます。

佐々木さんは、グループでもFX投資や暗号資産で利益を上げたという報告が次々上がるのを見て興味を持ち、送られてきたURLから、取引専用だというアプリをダウンロードし投資を始めました。

実際のアプリ画面

指定された「口座」に10万円を振り込むと、ドルに換算された額がすぐにアプリの画面に反映されました。

当初は、半信半疑でしたが、西垣の指示に従って売り買いを続けていくうちに、その不安は小さくなっていったといいます。

「毎回当たっていたら、おかしいと思うんですけど、負けるときは負ける。出金申請をかけたら自分が投資に回したお金と利益分が口座に返ってきたので、うそとは思いませんでした」

実は、佐々木さんはこれと同じ時期、インターネット上で、「西垣の詐欺被害に遭った」という書き込みを見つけていました。

しかし、その疑念も親しくなったメンバーの反応で打ち消されたといいます。

「同業者同士の誹謗中傷行為だ」

「先生は私には大きな収益をもたらしてくれました」

「疑うならやめればいいのでは」

「ネットの書き込みがうそなんだと思いました。今この世の中にたくさんある誹謗(ひぼう)中傷の一つなんだなって。完全に洗脳されていたと思います

その後、グループチャットに西垣から送られてきたのは、投資をせかすようなメッセージ。

グループの参加者も競うように高額を投資し、大きな利益をあげていることを次々と報告してきました。

佐々木さんは、親から借金までして100万円単位で次々と投資。アプリ上では、元手が2倍以上に増え、4,000万円以上になっていました。

詐欺だと気づいたのは、再度、出金手続きをしたときでした。

手数料などとして、1,000万円以上をさらに支払う必要があるといわれ、理由を問い詰めたところ、LINEのグループから外されました。

「借りたお金を返すため、命を絶とうと考えたこともありました。なんてばかなことをしたんだろうと今では思います」

ネット上の架空人物は何者?

SNSを使った手口には、さらに手のこんだものも。

写真とともに詳細なプロフィールを記す「荒木健次」という男性。

アメリカの有名大学を卒業。日本のメガバンクを経て、外資系投資会社の特別顧問を務めていると書かれています。

この「荒木健次」の投資講座にSNSの広告から誘導された60代の田中さん(仮名)です。最終的に2,000万円を失いました。

田中さん(仮名)
「すごい経歴が書いてあって、それにだまされちゃいましたね。借金を返すために家を売ったんです。もう、本当に憎いです」

田中さんが安心してしまったのは、やりとりの中で明かされた経歴が、 複数のSNSアカウントでも確認できたからです。

この人物は何者なのか?

私たちは、現在、特別顧問を務めているという会社に問い合わせましたが、在籍の記録はないという回答でした。

写真を手がかりにさらに取材をすすめると、あるアカウントにたどりつきました。中国のSNSに全く同じ写真が見つかったのです。プロフィール欄には、中国に住むインテリアデザイナーだと記されていました。

日常を紹介する動画が数多く掲載されている一方、投資と関連する投稿はありませんでした。

私たちはこの男性に直接連絡をしましたが、返信はきておらず、画像が使用された詳しい経緯についてはまだわかっていません。

有名人を悪用した手口 “フェイク音声”も…

巧妙化するSNS型投資詐欺の手口。中でも多いのが、有名人の画像を悪用したケースです。

経済アナリストの森永康平さん。父親は同じく経済アナリストの森永卓郎さんです。

NHKの取材に応える森永康平さん(左)と森永卓郎さん(右・去年12月の映像)

息子の康平さんのもとには、本人や父親の名前をかたる詐欺の被害にあったという訴えが毎日のように寄せられています。

経済アナリスト 森永康平さん
「被害者のところには、精巧につくられた偽造の運転免許証の画像や、本人のようなボイスメッセージが送られてくるので、見抜けない。手口がすごく巧妙になっている印象です」

去年の12月、森永卓郎さんはNHKの番組で、自分をかたった投資詐欺への警戒を呼びかけました。

森永卓郎さん
「私はそもそもSNSを全くやっていません。私からSNSの連絡が来た場合は、100パーセント詐欺だと思ってください」

実はこのころ、偽の森永卓郎さんが主催する投資講座の参加者にフェイク音声が送られていました。

森永卓郎さんのフェイク音声
「自分自身を証明する必要があると感じました。私のLINEに追加した生徒さんには、このように声で本人確認できます」

※音声はNHKプラスの見逃し配信で聞くことができます。
(配信期間4月19日(金)19:30~4月26日(金)19:57)

今回、この音源を音声識別の専門家に分析してもらいました。

日本音響研究所 所長 鈴木創さん
「音の響き的には、だまされてもしかたないと思います。周波数が非常に似ています。最近はAIによる予測が進んでいるので、10~15分ぐらいの音声で、フェイク音声を作るモデルができてしまいます」

森永康平さんは、技術の進歩によって今後、被害がさらに拡大することを懸念しています。

森永康平さん
「生成AIの進歩がとてつもなく早くなっていますし、どうやったら抑えられるのかというところを考え直さなきゃいけない」

SNS型投資詐欺の広告がインターネット上に出回っている状況について、ネットトラブルに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんは、インスタグラムやフェイスブックを運営するアメリカのIT大手メタなど、SNSプラットフォーマーの責任は重いと指摘します。

ITジャーナリスト 高橋暁子さん
「メタなどは、広告の審査が甘すぎること、問題となっているにも関わらず削除が進まず、状況が一向に改善しないことが大問題です。犯罪抑止に積極的に対応すべきですが、そうした広告でも利益を得ているため、十分な対策が取れていないのではと感じます。日本は、EUのように国として規制強化や制裁金などの強い対応を行うべきだと思います」

被害に遭っている年代 詐欺に使われたツールは

どのような人が、どのようなツールで、投資詐欺の被害に遭うケースが多いのでしょうか。被害のデータを見ると、その特徴が見えてきました。

詐欺の入り口となるツールは、フェイスブックやインスタグラム、LINEなどさまざまです。

しかし、実際に連絡を取り合う段階になってくると、圧倒的にLINEが多かったのです。

お金を支払う手段の8割以上を占めたのは「振り込み」。
被害者の年齢層で多かったのは40代以上ですが、30代の被害も少なくありません。

ITジャーナリストの高橋さんは、次のようなケースは注意が必要だといいます。

▼LINEに誘い込まれたら注意
閉鎖空間でのやりとりに持ち込むことによって、他の人が「おかしいんじゃないか」と止めることが難しくなります。密室のやりとりで心の距離が縮まりやすくなる効果もあり、こうした詐欺の大半で、LINEかダイレクトメッセージが使われています。

▼個人口座への振り込みに注意
案内される振込先が個人名義であることも多いです。もっともらしい理由をつけて振り込みを勧めてきますが、個人名義の口座は不正に入手し、特定されることを逃れるための詐欺の典型的な手口。警察も注意を呼びかけています。

▼SNSに不慣れな中高年は注意
中高年世代は、将来的な経済不安がありながら、SNSでのコミュニケーションに不慣れな人もいます。SNSネイティブの若い世代だとSNSでだまされた経験を見聞きしていたり、ITリテラシーの教育を受けていたりしますが、中高年は教育も受けておらずコロナ禍をきっかけにSNSを始めた初心者も多いです。

また世の中的に投資熱が高まるなかで、中高年には投資初心者でありながら蓄えもある人が多く、SNS型投資詐欺にはまりやすい傾向があります。

だまされないためには、どうすればいいのでしょうか。資産を守るための3つのポイントや、自分のだまされやすさをはかるチェックシートについて、後編の記事でお伝えします。
被害者を追い詰める“二次被害”の実態についても取材しました。

<後編>
SNS 型投資詐欺 弁護士による“二次被害”の訴えも 資産を守る3つのポイントは“だまされやすさチェックシート”も活用を

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