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  • 2024年4月5日

世界最小の「らん」 受粉に最小のハエが!牧野富太郎博士後輩の大学院生が解明 小石川植物園

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去年(2023年)放送された連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデル、牧野富太郎博士。博士が最終的な分類を定義したのが、世界最小の「らん」の一つ、ヨウラクランです。これまでわかっていなかったその受粉の仕組みが解明され、今年(2024年)3月末に発刊されたアメリカの学会誌に論文が掲載されました。解明したのは博士も長年研究にあたった東京大学附属小石川植物園の大学院生でした。 
(横浜放送局/記者 瀧川修平)

牧野博士の名を持つ世界最小のらん ヨウラクラン

世界最小のらんとも言われる「ヨウラクラン」。花の大きさは1ミリ以下。一円玉と比べるといかに小さいかがよくわかります。 
学名は「Oberonia japonica(Maxim.)Makino」。(おべろにあ・やぽにか・まきしもびっち・まきの) 
日本を代表する植物分類学者、牧野博富太郎士が最終的な分類を定義したことから、博士の名前がつけられています。国内では宮城県以南に広く分布していますが、生息数が減っていて地域によっては絶滅危惧種にも指定されています。

牧野博士の後輩が受粉の仕組みを初めて解明!!

被子植物であるヨウラクランは、雌しべに花粉が付くことで繁殖していきます。この受粉は、風など自然によるものや虫などが媒介するケースがありますが、ヨウラクランについては具体的なことはわかっていませんでした。このメカニズムを突き止めた論文が、今年3月30日に発刊されたアメリカの学会誌に掲載されました。

論文を発表したのは、東京大学大学院修士課程で学ぶ砂川勇太さん。牧野博士が長年研究に当たった小石川植物園でらんを中心に花と虫の関係を研究しています。牧野博士の後輩が、博士の名前を持つらんの受粉の仕組みを解明したのです。

最小には最小が!受粉に世界最小のハエが関与

受粉に関わっていたのは、タマバエというハエの1種。このタマバエ、全長が1ミリほどのこちらも世界最小級のハエです。この小さな昆虫がヨウラクランの受粉を手伝っていました。どうしてわかったのか。去年5月、砂川さんは、愛知県内の梅園でヨウラクランが開花していることを知り、観察することにしました。不眠不休で26時間にわたった地道な観察の結果、夜8時から翌朝にかけてやってきたのがたくさんのタマバエ。

ヨウラクランの花に頭を突っ込んだタマバエたちは体に花粉の塊を付けて花から花へと運んでいました。その様子を初めて確認し、撮影することができました。 
その時の様子を砂川さんは…

砂川さん

頭にいっぱい花粉塊がついて、けなげに花から花へ移動している様子がかわいらしいですし、大興奮でしたね。

実は解明が進んでないらんの受粉の仕組み 今回の解明の意義は

日本でも愛好家が多いらんですが、世界全体では2万8千種が分布しています。しかし、その9割近くは受粉がどのように行われているかわかっていません。今回の発見は、どんな意義があるのか。砂川さんを指導する小石川植物園の園長で、東京大学大学院の川北篤教授は、貴重ならんの繁殖にもつながる可能性があると言います。

東京大学大学院 川北篤教授 
「世界最小級の花のらんに世界最小級の花粉を運ぶ虫が来ていたと言うことだと思います。今回タマバエが来ると言うことが分かったことで、そういった昆虫との関係をちゃんと維持することで植物が自然界で増えていくための方策、人がどういうふうな環境を守ればいいのかっていうことが分かっていきますので、そういった意味で大きな意義があったかなと思います」

研究者として夢は海外へも

去年9月、砂川さんは、川北教授らとともに、らん研究で世界的に知られる中米コスタリカのランケスター植物園を訪れました。そこで見たのは植物園が誇るらんのコレクション。日本の6倍を超える1500種以上のらんが観察されるコスタリカならではの貴重なものばかりでした。

 

日本もらんの多様性が高いなと思っていたんですけど、コスタリカは世界で最も多様性の高いらんの王国なので、改めてらんは多様性があって非常にロマンがある分類群だなって。

今なお若手の背中を押すのは…

牧野博士の名前を学名に持つヨウラクラン。小石川植物園には博士が描いた精密なヨウラクランのスケッチが残されています。牧野博士も国内だけでなく台湾などで植物採集を行ったり、海外の研究者と交流したりと世界に目を向けて植物学の発展に尽くしました。砂川さんにその博士への思いを聞くと…

東京大学大学院 砂川勇太さん 
「牧野先生も台湾だとか調査していたっていうことですけど、自分も台湾と東南アジアだったり今回行かせていただいた熱帯アメリカだったり、いろいろ見られたらいいなって。らん研究をやる上でも是非海外に進出して、多様性の高いらんの世界を見ていきたい」

受粉のメカニズムは解明したものの、なぜヨウラクランにこれほど多くのタマバエが集まってくるのかはわかっていないということです。砂川さんは引き続き研究を続け、この謎を解き明かしたいと話します。牧野博士の思いは、今なお若い研究者の意欲を後押ししています。

取材後記

今回の取材は、去年、小石川植物園がコスタリカの植物園と学術協定を結ぶという話を知って園にうかがったことから始まりました。植物については素人ですが、砂川さんも川北教授もご自身の研究のことを話すときは本当に楽しそうに、そして丁寧に説明してくれました。小石川植物園は老朽化が進み、貴重な標本を保存するため、施設の建て替えに迫られていることも聞きました。私は3月に横浜局に異動しましたが、せっかくできた縁を大切にこれからも折に触れて取材を継続できればと思っています。

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