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中学受験 偏差値重視に変化が “中堅校”はなぜ人気?入試問題も変容 教育環境どう選ぶ

  • 2024年2月9日

中学受験にいま、地殻変動が起きています。かつては偏差値の高い難関校を目指してしのぎを削るのが定番でしたが、今年は特色のある教育を打ち出す"中堅校"が人気を集めました。従来のペーパーテストとは異なる入試も続々登場しています。

激変する中学受験の背景に何があるのか、情報があふれる中で子どもに合った教育環境をどう選べばいいのか取材しました。(全2回の前編)

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

生徒数が倍増した中堅校も 人気の背景は

いま、東京で私立中学などに進学する小学生は5人に1人。

初年度の平均の学費は、はじめて100万円を超えましたが、首都圏の受験者数は増え続けており、ことしも過去最多を記録した去年(5万2600人)と同じ規模になるとみられています。

その中学受験に近年、変化が生まれています。こちらは、今年の受験で志望者の増加が見込まれた学校のトップ10です。

首都圏の中学受験を分析している企業によると、その多くが中堅校と呼ばれる学校です。

この10年で生徒数が2倍に増えた都内の中高一貫校です。受験生を引きつけているのは教科の枠を越えて学ぶ独自のカリキュラムです。

この日、中学1年生が取り組んでいたのはドミノ倒し。

カーブをちょっとつけて、倒れる勢いをなくすのはどう?

なるべく、間をあけていこう。

ゲームを通じて思考力やコミュニケーション能力を育むことがねらいです。

 

クラスメートが、自分が考えていないことを考えていたりするので、参考にしています。

 

新しい視野が広がると感じました。

学校が前面に打ち出しているのは、個性を見いだし伸ばす教育です。入試では、受験生の得意分野を最大限評価しようと12種類の選抜方法を導入しています。

自分が関心のあるテーマをプレゼンテーションする入試では、野菜作りが大好きな受験生が、無農薬で栽培した九条ねぎを持参。栽培の際に直面した課題や対策などを発表しました。

だれにも負けない得意分野をアピールする入試では、受験生が6年間かけて自ら調べた貨物列車の知識を披露し、合格しました。

宝仙学園中学校・高等学校 富士晴英校長
「いろいろな子が入学してくれた方が、活気づくんじゃないかと思います。この学校で生徒たちは、自分らしい主体性・能動性を身につけて、個性を生き生きと発揮してくれています」

“あえて難関校を目指さない”受験生も

変化の波は学習塾にも。約30年、この業界に携わっている亀山卓郎さんです。近年、中堅校に狙いを定めて受験に臨む家庭が増えているといいます。

進学個別桜学舎 亀山卓郎塾長
「全員が全員、エベレストに登る必要があるのか、高尾山に登ってもいいじゃないかと思います。

特長を持っている子がいっぱいいるので、そういう子たちがいろんな入試でいろんな特長のある学校に進んでいき、それぞれの適性を発揮していく。親御さんが情報を得るうちに、いろんな受験があるのかなと思い始めたのだと思います」

2年前からこの塾に通っている小学6年生の絵美さん(仮名)も、中堅校を目指しています。絵美さんに受験を勧めたのは母親。志望校は、偏差値ではなく娘の個性を伸ばしてくれるかどうかを重視して選びました。

絵美さんの母親
「高学歴であれば安泰ということが崩れ始めたのかなと思います。好きなことをやるほうが、可能性が広がるような気がして、あえて偏差値が高い中学校は考えなかったですね」

幼いころからおとなしかったという絵美さん、自分を表現するのもあまり得意ではなかったといいます。そんな絵美さんが自ら希望して続けてきた習い事が、英会話です。

絵美さん
「外国の人としゃべることができるのが、一番の喜びです。英語なら自分を変えられる。自分をポジティブに捉えられたり、相手の言葉をポジティブに捉えられたりするから。英語は自分を明るくできるチャンスだと思っています」

志望したのは英語教育に力を入れている中堅校。生徒全員が留学の機会を得られます。

入試では国語と算数に加えて英語力も問われます。勉強の負担は少なくありませんが、母親は、先行き不透明な時代を生きぬく力を身につけてほしいと、絵美さんと話し合い、受験を決めました。

「好きなことをとことんやってみる。好きなことだったら多少の困難も乗り越えられると思います」

2月上旬。絵美さんは、志望校に合格することができました。

私立中学の危機感が変化の背景に

学校側の変化を加速させている要因の一つが、首都圏でも直面している少子化です。

20年以上にわたり私立中学などの相談を受けてきたコンサルティング会社によれば、最近、依頼の内容に変化が見られるといいます。

かつては、経営ビジョンの策定など学校改革に関するものが主でした。ところが近年、あらたな教育を導入したいという相談が増えているといいます。

コアネット教育総合研究所 福本雅俊さん
「いまは、教育改革がトレンドとなっています。少子化していく中では、努力をしなければ生徒数の維持はできないですから、危機感や改革意欲みたいなものは、中堅校ほど強いですね」

都内の女子校です。創立98年の伝統校ですが、受験者数の減少に直面し改革を迫られました。

いま、この学校が独自のカリキュラムとして磨いているのが”教科横断型授業”です。ひとつのテーマに異なる教員が向き合うことで、生徒に多角的な視点を身につけてもらうものです。

この日は物理の実験で振り子の動きを観察。それを数学の教員が、解説しました。会社の担当者も授業を見学し、終了後、授業が生徒の学力向上にどのように結びついているかなどを教員と確認し合っていました。

新たな教育を導入して以来、この学校の受験者数は改善しています。来たるべき厳しい時代に備え、多くの学校がこうした改革に乗り出しているのです。

田園調布学園中等部・高等部 清水豊校長
「これから少子化の時代を迎えたときに、私学としてどうやって生き残っていくかという危機感は常にあります。客観的に見たときに、今のこの学校はどういう立ち位置にいるとか、こういうところが弱いんじゃないかとか、そういう視点が必要だと思います」

情報があふれる時代 教育環境どう選ぶ?

そもそも中学受験をするのか、しないか。そして受験するのであれば、どんな視点で学校を選べばいいのか。

40年以上にわたり、受験生の指導や、中学受験塾・中高一貫校のコンサルティングなどに関わってきた森上展安さんに聞きました。

森上教育研究所 代表 森上展安さん
「まずは、『公立中学の情報』を調べて相性を確認してほしいと思います。通学時間が短いぶん、勉強のほかにやりたいことをやる時間を作ることができ、公立の学校があっている子もいます。

中学受験をする際に重要なのは『校風』の見極めです。その校風があらわれる体育祭や文化祭に親子で足を運び、子どもが6年間通うイメージが持てるか確認してください。

そして、子どもがどんな学校に魅力を感じているのか、どんなことがしたいのか、親が決めつけずに、聞いてあげてください」

教育の選択肢が多様化する中で、親子のコミュニケーションの重要性がますます高まっています。しかし、中学受験にどう向き合えばいいのか、悩みを深める親も少なくありません。

後編の記事では、ネットの情報に振り回され葛藤したという体験談や、子どもを追い詰めないための親の心構えについてお伝えします。

【後編の記事】
中学受験 ネット情報に翻弄される親も『翼の翼』朝比奈あすかさんに聞く 親の心構えは

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