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  • 2024年1月26日

発達障害の子“通級利用に数か月かかる場合も”都内の4割以上 自治体アンケートからみえた“学びの壁”

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発達障害の子どもが、学校で学習や生活の困難を克服する方法を学ぶ「通級指導」(いわゆる「通級」)が、検査体制の問題などにより、東京都内の4割以上の自治体で、利用に数か月程度の遅れが生じていることが分かりました。

支援が受けられず不登校になるケースもあり、発達障害の子どもにとっては学びの”壁”とも言える状況が見えてきました。(全2回の後編) 
(首都圏局/都庁クラブ 尾垣和幸・生田隆之介)

(前編)「発達障害の子ども「通級に入れない」相次ぐ 検査に1年待ちも 教員不足も深刻」

視聴者の声を受け アンケート実施

発達障害の可能性がある子どもは、年々増加傾向で、全国の小中学校の通常学級に8.8%、11人に1人程度いると推計されています。

国は、こうした子どもたちに対する特別支援教育の1つとして、学校で週に数回、別の教室に移動して、学習や生活の困難を克服する方法を学ぶ「通級指導」の充実を求めています。

通級指導の様子(江東区立豊洲北小学校)

こうした中、NHKに対して「通級指導が受けられない」といった声が複数寄せられたことから、その実情について、都内の62の自治体にアンケート調査を行い、56の自治体から回答を得ました。

検査の“壁”

その結果、都内では「通級指導」の利用条件とされている臨床心理士など専門家による検査に時間がかかるなどして、通級指導の利用までに数か月かかる場合があると答えたのが全体の4割を超える24の自治体に上りました。

24自治体 
▽新宿区 ▽墨田区 ▽江東区 ▽世田谷区 ▽中野区 ▽豊島区 ▽練馬区 ▽足立区 ▽八王子市 ▽武蔵野市 ▽青梅市 ▽小平市 ▽福生市 ▽狛江市 ▽東大和市 ▽武蔵村山市 ▽多摩市 ▽羽村市 ▽あきる野市 ▽桧原村 ▽奥多摩町 ▽新島村 ▽神津島村 ▽三宅村

◆自治体担当者の声◆

▽世田谷区 
「発達検査の結果が出るまでに時間がかかるため、通級等の利用については半年近くかかる場合がある」

▽墨田区 
「検査できる機関も少なく、検査枠も取れないため、次回以降の判定会(※)での検討となる可能性もある」

▽あきる野市 
「医療機関において検査待ちが慢性的に発生していることにより、教育相談所への申し込み件数が年々増加している状況だ。検査件数の増加に伴い、発達検査を実施する日時の調整などに困難さがあり、発達検査の予約が取りづらい状況が発生している」

 ※判定会・判定委員会:子どもへの支援策などを検討・判断する場。豊島区は、検査の遅れではなく、判定委員会の開催時期の影響。

教員不足の“壁”

さらにもう1つの“壁”もありました。 
自治体へのアンケートでは、慢性的な教員不足などにより、通級指導の利用までに数か月かかる場合があると答えた自治体も7つに上りました。

7自治体 
▽墨田区 ▽中野区 ▽板橋区 ▽練馬区 ▽足立区 ▽三鷹市 ▽東大和市

◆自治体担当者の声◆

▽中野区 
「教員不足により、すぐに指導が開始できない場合保護者に理解を得た上で利用を待ってもらっている」

▽練馬区 
「学校の受け入れ体制によっては、特別支援学級への転学や通級指導の利用開始時期が、年度替わりや学期の節目になるなど、支援開始まで時間を要することはある」

専門家「支援充実を」

今回の調査結果について、専門家は次のように指摘しています。

全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会 大関浩仁会長 
「支援のタイミングを逃してしまうと、学校生活での失敗で心が傷ついたり、人間関係でとても苦しい思いをしたりして、不登校や自分の部屋から出ることも難しくなるといった二次障害になる子どももいる。

子どもにとって学校生活という限られた時間の中での1か月や1年なので、子どもたちが、必要とする教育を受けることのできる環境を整えていくことが大切だ。発達検査などは、行政の予算措置でクリアできる部分もあり、支援を充実することが重要だ。

また教員不足の課題に関して、文部科学省は年度の途中で通級指導の希望者が増えていく状況を前提に、教員を配置する措置をしてもらいたい」

東京都も対策に乗り出す

こうした状況を受け、都は、検査体制の充実に向けて緊急的な支援を行う方針です。 
  
具体的には、区市町村が▼検査を行う心理士の増員や、▼検査の外部委託、▼それに個別に民間の検査機関を利用した際の負担軽減などに新たに取り組む場合、都が費用の半分を補助します。 
  
また、区市町村や検査機関、それに保護者などに調査を行って、検査の予約待ちなどの実態や課題を把握し、解決策につなげたいとしています。 
  
検査や教員不足など発達障害の子どもの学びをめぐる課題について、引き続き取材を続けていきたいと思います。

前編の記事では、通級に入るための検査を受けるまでに1年以上かかり、不登校になったという当事者や、通級の教員確保に悩む学校の事情などを取材しています。こちらもあわせてお読みください。)

 

発達障害の子どもの学びに関して、皆さんからの意見を引き続き募集しています。こちらの投稿フォームよりお寄せください。

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