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東京・杉並区 岸本聡子区長が語る“区政の現在地”~議会各会派の評価は

  • 2024年1月19日

初当選から約1年半。
先月(2023年12月)、東京・杉並区の岸本聡子区長が私たちのインタビューに応じました。
当選以来、掲げてきた「対話の区政」への手応え、そして直面する課題について、聞きました。
その区長を支えたり、対じしたりする区議会の会派(所属議員6人以上)にも、岸本区政に対する評価を尋ねました。(全2回の後編/前編を読む

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

みずからが掲げた“対話の区政”への手応えは

杉並区は去年の統一地方選挙(区議会議員選挙)で、東京23区で唯一、女性議員が半数を占める議会となりました。住民たちの暮らしがどのように変化しているのか、前編の記事でお伝えしました。

杉並区で、約1年半前から区長を務める岸本聡子氏。政治を行う上で重視しているのは「対話の区政」だといいます。その実現のため行っているというのが「さとことブレスト」などの住民との対話集会。就任以来、およそ30回、開いてきました。

杉並区 岸本聡子区長
「対話の集会を行っていく中で、区の職員から、区民が見てわくわくするような、字だけではなくて、グラフやビジュアルを使った行政の計画を作ってみようという発想が出て来まして、こういう機運が生まれたのはとてもうれしいですね。

ただ、まだまだこれからではありますし、常に続けていく取り組みです。先日あった東京都の道路計画に関する対話集会でも、住民の方から、十分な情報がなければ正確な議論ができないと言われたんですね。

事業主体である東京都にきちんと情報を出してもらわないといけない。これはきわめて建設的な考えです。ただ単に感情的に反対というところを超えていくというところに、非常に杉並区民のポテンシャルを印象的に感じました」

「ガス抜きだ」との批判に対しては

岸本区長の対話を重視する姿勢。
ただ、これについては「ガス抜きでは」との批判があったことについてただすと、次のように話しました。

「私は『住民合意がない事業については立ち止まります』と言ってきましたので、『立ち止まる』とはどういう意味なんだ、結局、変わらないなら立ち止まってもしかたない、ただのガス抜きだと言われることもあります。これは本当に私も苦しいし、区民も苦しい。物事が変わるというのは、こういうことを経験することかなと思います。

これから新しくみんなで決めていくことに関しては、本当に理想的なやり方でできるだろうと思うんですね。

ただ、難しいのは過去に決まって、もう進んでいる事柄ですよね。修正できるところがあるのかどうか。

過去の民主的に行われた決定を覆すには、それだけの理由が必要ですし、それだけの合意が必要ですので、時間も必要です。これは私が首長として判断しなければなりませんが、その時はやはり多角的にさまざまな角度から長期的な思考でもって判断することになります。

これは区民の皆様からすると、なかなか見えにくい部分です。情報開示と対話という、たゆまぬ努力で、区長である私の姿勢、私たち行政の姿勢を伝えていくしかない。

人によってはこれはガス抜き的にやっているんだと思われても、ある程度はしかたないかもしれません。受け止めは強制できません。本当に痛みを共有しながら、少しずつ変えていこうということかなと思っています」

“まちづくり”進めるか 立ち止まるか

区内では、JR阿佐ヶ谷駅前の小学校の移転計画など、さまざまな“まちづくり”に関する議論が進んでいます。これを進めていくのか、立ち止まるのか。区民との対話を進めつつ、岸本区長はどう考えているのでしょうか。

JR阿佐ヶ谷駅前の小学校

「これはなかなか答えはないのですが、進めてほしい、進めないでほしいという立場について、共通の言語を作っていくのは、本当に正確な情報しかないと思うんです。

例えば、道路計画であれば、進めてほしいという方々は、渋滞を解消してほしい、災害時に緊急車両が走れるのかといった懸念を持っている。一方で、道路を広げてほしくないという人たちは、今の時代、環境に配慮して、歩行や自転車中心の新しい都市の未来を見ている。

いずれも決してそんなに住民として違うところに立っているとは思わないんですね。ただ、データやシミュレーションなど共通の土台、情報がないから、どうしても分断されてしまうのかなと思うんです。

きちんと情報をわかりやすい形で共通の土俵に乗せて、それをもとにみんなで議論する。そして課題解決を目指す、これに尽きると思います。

行政と議会だけではなく、住民も巻き込んだ形で、いかにして社会的合意を作っていけるか。そういう未来を見せていくことで、初めて納得感が出て来るのかなというふうに思っています」

関心がない人にどう関心を持ってもらうのか

区民を取材すると、岸本区長となって区政との距離が近くなったと評価する声がある一方、区政そのものに関心がないという声も少なからず聞かれました。こうした無関心層にどのように働きかけていくのでしょうか。

「これはちょっと永遠の課題のようなところもありますけれども、キーワードは、どれだけ自分事だと思えるものが増えていくかということですね。

本当に社会に無関心な人って、私はいないと思うんです。無関心と言われたり、思われたりしているだけで、この社会に対して無関心でなんか絶対にいられないのが人間。

人間は社会性のある生き物なので、常に人と関わって、自分以外に対して、よりよいもののために働きたいという本能的な気持ちがある。そういう気持ちを開いていく、そういう力を政治は持たなければいけないんじゃないかと思います。

知ること、関与することで、考えたり、友達ができたり、その先にコミュニティーの一部になっていくというような体験ですよね。公共政策に影響できるんだっていう実感をさまざまな形で行政の方がプロデュースしていく。そういう仕掛けやチャンネル、仕組みを作りたいと思います」

今後の岸本区政 評価の指標は

ことしの夏には任期の折り返しを迎えるなか、最後に今後の区政運営への思いについて、聞きました。

「目指しているところは多様な人の熟議によって、地域の合理的な未来というのが少しずつ作られていく。それをもとに公共政策ができていく。そして、その公共政策で成し遂げた施策が地域に還元していく、戻っていく、それを実感できるというのが、私が考えている地方自治の姿、1つの姿だと思っています。

この双方向的なコミュニケーションということで、少しずつ未来思考の地域になっていくのかなというふうにイメージをしています。

自分事化、自分も地域の課題解決の一部なんだっていう思いを持つ区民が、何年後かにどれだけ増えているか。これが岸本区政のたぶん一番重要な指標の1つになってくるんじゃないかなというふうに思っています」

岸本区政 議会の各会派はどう評価する

岸本区長の区政運営を時に支え、時に対じするのが、二元代表制における区議会の存在です。議員が6人以上、所属する会派の幹事長に、これまでの岸本区政の評価をアンケートの形で聞きました。字数の制限は設けていませんが、分量が多かった回答については一部抜粋して掲載します。また、回答の全文は、こちらに掲載しています。


自民党・無所属杉並区議団 吉田愛 幹事長
「長期最適の視点が不十分と考えられ、課題の多い区政だと感じています」


立憲民主党杉並区議団 樋脇岳 幹事長
「岸本区政に変わってからは、重要計画について素案の段階から住民に意見を聞く取り組みや、区長と区民の対話の取り組み、区民参加型予算など、住民意見に向き合う区政運営が進められています。

区立施設についても、地域ごとに住民対話でどういう施設が必要なのか話し合って決めていく方針が打ち出されました。試行錯誤の段階ではあるものの、対話の場に参加した住民はもとより、区の職員にとっても好意的な反応が見られたことは重要な一歩です。

区民一人ひとりの人権が尊重され、誇りを持って区政に参画し、協働する『自治のまち』を創っていくことを目指して制定された、杉並区自治基本条例に則った区政運営が少しずつ着実に進んでいることを評価します」


杉並区議会公明党 川原口宏之 幹事長
「政治の経験も、行政の経験も、杉並区で生活した経験も無かった方が、いきなり区長になって、公約と現実とのギャップに苛まれながら、なんとか少しでも自分らしさを出そうとしているようにも見受けられる。

仮に、区長が公約にこだわり過ぎ、前区政との差別化を強調するあまり無理に計画を変更したり、敢えて立ち止まったり、いたずらに時間を費やすことがあれば、区民にとって負の影響が発生しかねない。

その一方で、我々が要望し、推進してきた区民福祉の増進に資する政策を、都との連携や補助事業を活用したものも含め、適切に実現している側面もある。

また、財政運営に関しても、我々が以前より主張している『財政の健全性・持続可能性』と『区民福祉の増進』の両立を意識した仕組みを前区政から踏襲していることは評価している」


共産党杉並区議団 山田耕平 幹事長
「岸本区長のもとで、住民自治の実現を目指し、様々な努力が行われています。住民との対話の機会の保障、住民参画によるまちづくりの検討、区立施設のあり方も住民との協議によって検討、等々です。

これらの取り組みは、これまでの区政では極めて不十分だったことです。こうした取り組みは時間もかかりますが、これまで区に意見を上げても無視され続けてきた住民から歓迎の声が寄せられています。

さらに、情報公開を徹底する努力が始まっており、就任直後から情報公開を推進しています。他区に後れをとっていた福祉施策も前進しています。
区長就任から1年半程度の短期間で、こうした変化が始まっていることは、岸本区政の前向きの変化と受け止めています」

施設再編や道路計画、“再開発”は

岸本区長は、区立施設の再編や、大規模な道路拡幅計画、それに駅前のいわゆる“再開発”のまちづくりなどについて、「住民の合意が得られないものはいったん停止し、見直す」と公約に掲げ、議論を呼んでいます。これらの計画に対する考えを聞きました。


自民党・無所属杉並区議団 吉田愛 幹事長
「総合的かつ長期的な観点や負担を先送りにしない視点等から、必要なものは着実に行っていくべきだと考えます」


立憲民主党杉並区議団 樋脇岳 幹事長
「岸本区政に変わってから、こうした課題について住民との対話を重視し、熟議によって答えを見出そうとする取組への転換が図られましたが、これは私たちの会派がまさに求めてきたことです。

区に求められるのは、徹底した情報公開と、住民対話の場の創出です。納得のいく結論を得るのには時間がかかるかもしれませんが、それは民主主義のコストであり、行政が一方的に決め、『ご理解ください』と押し切るような再開発は、住民の分断を生むことにもつながり、100年後のまちの未来にとって良い結果をもたらすとは思えません」


杉並区議会公明党 川原口宏之 幹事長
「施設再編については、老朽化した施設の利用状況や周辺地域での再編とコストの適正化をバランス良く図りながら進めていくべきと考えるが、適正化の正当性を具体的なデータで示していくことが肝要と考える。

道路整備については、区民の安全性・利便性の向上という最優先すべき観点から、着実に進めていくべきと考える。
『地震による焼失危険度』が高い地域や『狭あい道路の拡幅』など必要性が高いと思われる事案については、各種要素を十分に検討した上で着実に進めるべきと考える」


共産党杉並区議団 山田耕平 幹事長
「新たな区政では住民との対話を重視し、施設再編整備計画や都市計画道路事業等について、住民と共に見直しを開始したことは重要な変化です。

前区政が抱えていた諸問題の改善には時間と労力が必要となります。短期的に施設の廃止等を進めざるを得ないこともあります。住民と課題を共有し、対話を通じて議論を深めるなかで方向性を定めていくことは、住民自治のまちづくりを体現する重要な取り組みと考えています。

住民自治は、行政だけではなく住民の側の努力(住民参画)も求められます。これまでの区政では、あまり定着していない考え方であり、時間もかかる取り組みでもあります。しかし、新たな区政で始まった前向きの変化を一歩ずつ着実に進めていくことが必要だと思います」

前編の記事では、岸本区長の政策や区民の受け止め、杉並区議会で女性議員が半数となり、どのような変化が起きているのか取材しています。こちらもあわせてお読みください。

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