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立体駐車場火災 神奈川・厚木以外にも世界で相次ぐ 原因に“車両の進化”を指摘する声も

  • 2023年12月8日

立体駐車場の大規模火災が世界各地で相次いでいます。8月には、神奈川県厚木市で152台の車が燃える火災が発生しました。

大規模火災の要因の1つに、車の材質の変化が関係しているという指摘があります。かつての車体に比べてプラスチックや軽い金属が多く使われるようになり、燃えにくくする加工はされていますが、一度火が付くと、火災が大規模になる可能性があるというのです。

私たちの身近で突然起こりうる大規模火災のリスクに独自取材で迫ります。(全2回の後編/前編を読む
(首都圏情報ネタドリ!取材班)

車両の高性能化が思わぬリスクに

2023年10月撮影 神奈川 厚木

152台の車が燃えた厚木市の立体駐車場火災。熱や煙がこもりにくいと考えられてきた立体駐車場で、なぜ被害が広がったのか。専門家が指摘する「プール火災」「フラッシュオーバー」の脅威については、前編の記事をご覧下さい。

2017年 イギリス リバプール

6年前、イギリス・リバプールの立体駐車場でおきた火災では、1400台近くの車が被害を受け、世界中の専門家に衝撃を与えました。なぜ火災はこれほど大規模になったのか、国際機関が報告書をまとめました。

記されていたのは現代の車における新たな危険性です。

全米防火協会 研究プロジェクトマネージャー ビクトリア・ハッチソンさん
「車体が主に金属でできていた時代には、こうした事態は起きませんでした。しかし今はプラスチックが多く使われるようになり、その量は300キロほどに上ります。それが熱にさらされることで、火が付きやすく、さらに燃え広がりやすくなっているのです」

材質の変化は車の燃え方にどのような影響を与えるのか。

車に関する調査・研究を行っている日本自動車研究所では、実際の車で実験を行っています。

左は、車体にプラスチックや、鉄よりも軽い金属が使われた新しいタイプの車。右は車体が主に鉄で作られた古いタイプの車です。同じ場所に火をつけ、燃え方を調べてみると…。

10分後

20分後

左の車は10分後には火が車の前方に到達。20分たつと車全体が炎に包まれました。一方、車体が主に鉄でできている右の車は後方が燃えるにとどまりました。

日本自動車研究所 主席研究員 田村陽介さん
「今の車は安全装備や快適性を向上させるために、必然的に重くなっています。軽量化を図ろうとして、樹脂系や、鉄に比べて低い融点で溶ける軽量の金属材料が使われ始めています。このため炎の広がりが早くなる傾向になっているのです」

なぜ、燃え方にこれほどの差が生じたのか。

火災のメカニズムを研究している豊橋技術科学大学の中村祐二教授の協力のもと検証しました。

用意したのは車体に使われるABS樹脂というプラスチックの素材。薄く切った破片に火をつけてみると、溶けて、炎がついた破片が落ちる様子が見られました。

実際は燃えにくくする加工をしますが、想定をこえる熱にさらされると、燃えて溶けてしまいます。

さらに燃えたプラスチックが次々と垂れ落ちるため火は消えることなく燃え続けます。

車体にプラスチックなどが使われた車の燃焼実験を詳しく見ると、溶け落ちた材料が車両を下からあぶり続け、全体を燃やす熱源の一つとなっていました。

豊橋技術科学大学 中村祐二教授
「溶けて変形して、たくさん燃えるところが増えて、ガス化するというのがプラスチックの特徴的な燃焼方法です。全てのプラスチックがこのように簡単に燃えるわけではなく、燃えにくい加工は当然しています。
プラスチックだから、ただちに危険というわけではありません。想定以上の熱量がかかると、プラスチックが燃料になります。火災を早めに検知をして、早めの消火をすることが重要になります」

取材からは、車の進化に伴い素材が変わったことで、大規模火災につながりうることが見えてきました。

一方で車両火災の件数は、20年程前のピーク時には年間8400件以上あったものの、去年はその半分以下にまで減っています。車の安全性が高まっていることが要因です。

日本建築学会で火災関係の委員を歴任している専門家は、まずは今回の火災の十分な検証が必要だと指摘します。

東京理科大学 大宮喜文教授
「厚木の火災でも、イギリスなど世界の火災でも死者は出ていません。こうした状況の中で、新たな消火設備を一律に導入することは、費用などの面で現実的ではないと思います。

車を大切な財産と捉えれば多大な損失が出たことは確かで、これまでなかったリスクが顕在化している現実を踏まえ、どんな対策を打つのか、社会のコンセンサスが必要です」

安全は何よりも大切である一方、そのためにどれだけコストをかけるのか。簡単には答えが出せませんが、議論が必要な問題です。そのためにも、今回なぜ大規模な火災が起きたのか、まずはしっかりと検証が進められることを期待します。  


前編を読む
「神奈川・厚木 立体駐車場火災 被害拡大の原因に「プール火災」の指摘も」

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