働きながら親などの介護も担う“ビジネスケアラー”。
2025年に「団塊の世代」がすべて後期高齢者になり要介護者の急増が見込まれる中、誰もがビジネスケアラーになりうる時代になるといえます。
この課題にどう向き合うか。両立の専門家に介護のための制度の使い方や企業が取り組むべきことについて話を伺いました。
※「首都圏情報ネタドリ!」 11月17日(午後7:57) まで見逃し配信があります。
(首都圏情報 ネタドリ!取材班)
話を伺ったのは、企業向けのセミナーなどを通じて両立支援のアドバイスを行う、一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事の和氣美枝さんです。自身も認知症の母親を在宅で介護しながら、介護する人の支援を行っています。
Q.「介護休業」と「介護休暇」の使い方について、教えてください。
「介護休業」については、直接的な介護をするのではなく働きながら介護できる体制作りに使っていただきたいです。例えば、介護保険を使ったサービスは、導入まで少し時間がかかるんですね。ケアプランを作ったりケアマネジャーを決めたり、方針を決めたあとに、2週間程度介護休業の申請をしていただきたいなと思います。最初の1週間では、ケアプランにあった介護事業者さんと契約したり、残りの1週間では親御さんの新しい生活スタイルが回るかどうかというのをそばで見守ったりしてほしいです。
「介護休業」の93日は、3回に分けて取得することができます。
初動の1回目は先ほど説明したとおりなのですが、介護は生活なので大きく変化があり、体制を変えなくてはいけない時が出てきます。そうしたら、先ほどのとおりの手順を踏んでいただきたいです。また、最後のみとりでも、「介護休業」は使えますので、活用できるのではないかと思います。
また、年間5日ある「介護休暇」ですが、こちらは当日に申請してもいいというお休みです。例えば、要介護者のお父さんお母さんが発熱してしまったり、急病など、また、デイサービスや訪問介護サービスが何らかの理由で急に使えなくなったりすることがあるんですね。そういう突発的な理由でやむを得ず自分で介護しなくてはならない時とか、役所手続きや通院同伴する時などに使っていただきたいです。
Q.企業は何ができるのかということですが、和氣さんはこちらの3つのポイントをあげていますね。
企業にはこの3つの仕組みを作っていただきたいと思います。
まず1つ目が3つの情報周知
仕事と介護の両立ってそもそも何なのかという概念の周知ですね。介護に専念することではなくて、仕事に集中できる環境を作ることが両立だということです。次に介護の合言葉、“介護といえば、『地域包括支援センター』が相談先になる”ということです。最後に、「介護休業」など制度があるということ。まずはこの3つの情報周知をしていただきたいなというところです。
2つ目が話しやすい職場づくり
介護について話しやすい職場の雰囲気、土壌づくりというのは、とても大事です。制度があっても使ったら、周りの人から白い目で見られてしまうような環境ではいけません。仕事と介護の両立というと、どうしても介護に直面している人ばかりが当事者だと思われがちですけれども仕事をカバーしてくれる人たちも当事者です。仕事をカバーしてくれる人をないがしろにしないコミュニケーションが大事ですし、場合によっては、そういう人たちを評価する制度があるといいと思っています。
そして、3つ目が管理職への研修
会社には、定期的な個人面談をして、介護の有無の実態を調査してほしいと思います。介護しているかどうか、聞いてほしいということです。その中で、“隠れ介護者”の発掘もできるし情報周知もできます。介護の状況を会社に報告するかしないかは本人が決めればいいことなので、言っていい雰囲気とか言える機会を作ることは大事かなと思っています。面談するのが管理職なので、管理職の研修は、大事なポイントなのかなと思います。
Q.働き方が多様化している中で、こんなご意見が寄せられています。
「会社がさまざまな介護の手助けをしているのが羨ましいです。フリーランスとして仕事をしているが、自営業にそういう制度はありません」どう支えたらいいのでしょうか。
フリーランスの方は、会社員よりもさらに仕事と介護の両立の情報を得にくいですよね。さらに、会社員より時間とか場所の融通が利くために、親の介護にあわせて引っ越ししたり同居したりする選択をする人も多いです。そのため、行政からの情報周知が必要ではないでしょうか。例えば、40歳になったら3年に1回、仕事と介護の両立のパンフレットを送るとか。行政には両立支援の相談窓口も作っていただきたいなと思います。仕事と介護の狭間で孤立しないような積極的な働きかけをしてほしいです。
Q.仕事と介護の両立についての悩みや問題に直面する当事者を支えるために、どんなことが大切だと考えますか。
国は介護離職ゼロを進めていますが、大切なのは「介護不幸ゼロ」だと思っています。
離職までいかなくても、苦しむ人がいてはいけないという視点に立って、介護される人とする人のどちらも笑顔でいられる社会になってほしいと思います。
そのために、国には既存の仕組みに家族介護者を支援させるのではなくて、要介護者に“ケアマネジャー”がいるように、介護者に“ケアラーマネージャー”がいるようなそんな仕組みや法律を確立することが必要だと考えています。