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介護と仕事 両立のポイント“ビジネスケアラー”予兆がわかるチェックシートも

  • 2023年11月10日

「まだ大丈夫」、「まだ先のことだから」、「うちの親に限って…」
そう思っているうちに、あなたの仕事の都合や家庭の事情に関係なく突然担うのが、“介護”です。取材を進めると、ほとんどの場合、過去の病歴や日常生活の中に介護の予兆は存在するといいます。ただ、家族にはそれが見えない、元気でいてもらいたいという思いから気づけないでいるというのです。

では、どうしたらこの予兆を見つけることができるのでしょうか。チェックシートを使って、考えてみませんか。

“ビジネスケアラー”といわれる、働きながら親などの介護をする人たちが抱えがちな悩みについても専門家にアドバイスをもらいました。

目次
● 増えるビジネスケアラー
● 介護の予兆は?チェックシートで確認
“ビジネスケアラー”の悩み 専門家は

 

増える“ビジネスケアラー”

“ビジネスケアラー”ということばをご存じでしょうか。
働きながら親などの介護をする人たちを指すことばです。年々増え続けていて、いま、多くの人が「ひと事」とはいえない状況になっています。

経済産業省は“ビジネスケアラー”が2030年には家族を介護する人のうち4割にあたる 318万人に達するという試算をことし公表。

2015年の232万人から15年間で86万人も増え、労働生産性の低下などに伴う経済損失額は、9兆円に上るとしています。

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介護の予兆は?チェックシートで確認

では、どうすればその予兆を見つけることができるのでしょうか。

厚生労働省の資料を元に作成された、こちらのチェックシートを活用してみてください。
実家のご両親など心配な家族を想像しながら、設問に応じてチェックを入れます。

出典:NPOとなりのかいごHPより作成

このシートを作ったのは、NPO法人「となりのかいご」の代表理事、川内潤さんです。 

NPO法人「となりのかいご」 川内潤 代表理事 
「全てを完璧にチェックする必要はありません。わからない場合は不明にチェックを入れてください。

青い色の部分に3つ以上チェックが入った場合、介護の予兆かもしれません。なんらかのケアが必要になる可能性があるので、心配な家族が住む自治体の『地域包括支援センター』に電話をしてみましょう」

川内さんは施設・在宅の介護職員としての経験があり、今は、企業の従業員の介護相談にものっています。

見守りや介護の体制をスムーズに作るためには、介護の予兆をできるだけ早く発見し、備えることが大切だといいます。

「どのタイミングで親の介護について相談したらいいのか悩む方がすごく多いので、厚生労働省の資料をもとにわかりやすい基準になればと作りました。

『地域包括支援センター』は公的機関で、地域の高齢者の"よろず相談所"です。地域包括支援センターに連絡する時にはチェックシートの情報をシェアした上で相談すると、家族がいま、なにができない状態なのかが伝わるので、話がスムーズに進むと思います」

 

“ビジネスケアラー”の悩み 専門家は

もし、あなたが介護を担ったらどんな課題に直面するのか。“ビジネスケアラー”が抱えがちな悩みについても、川内さんに話を聞きました。

◆ケース1 “遠方に暮らす親の介護”

遠方に暮らす親の介護を行う男性

 

遠方に住む親の介護が突然始まった。仕事もあるのにどうしたらいい?

「突然介護が必要になったら、まずは親が住んでいる自治体の地域包括支援センターに電話をして『親がこういう状況なんです』と伝えます。その上で、『自分は、こういう仕事をしていて、なかなか帰省もしづらい』など、介護に関わることになる自分の状況についても併せて伝えたほうがいいですね。

そして、遠方に住む親を介護のために呼び寄せるか考えるときは、家族を介護する上での"目標"を確認します。私は、親がどんな介護状態になってもお互いが崩れずに、関係が良好に維持されていくことがいちばん大事だと伝えています。

実は、介護職であっても、直接、自分の家族の介護をするのは難しいものです。もし、近くに呼ぶとしても、 介護のプロの力を頼ることを前提にしたほうがいいと思います。

親を呼び寄せるかどうか悩んでいるという相談は多く寄せられますが、『あなたが安心したいのか、本当に親のためのケアをしたいのか、どっちですか』と聞いて、分けて考えるよう促します。“親のため”と思ってやっているかもしれませんが、いつの間にか、自分の不安を解消することが目的になってしまうことが多いです」

◆ケース2 “施設か在宅か”

親に施設に入ってもらった女性

 

自分の子どもの世話をしてもらった親に、施設に入ってもらったことに罪悪感があります…。

「自分の気持ちに余裕がないと、お父さん、お母さんによい声がかけられなくなるんですよね。

自分のキャリアを諦めて親の介護をした場合、親に対して怒りの気持ちが向かうことがあります。『あのとき辞めてなかったら、こうだったのに』などと思った瞬間に、きっと嫌なことばが出るでしょう。

それを防ぐことができたと考えてみてはどうでしょうか。お母さんに優しくできる、また、面会に行った時によい声がかけられることが、子育てを手伝ってくれたことへの恩返しなのではないでしょうか。

介護施設で働いていたときに、最期を迎えようとする方が、自分の娘や息子のことを『仕事に行ったか』『風邪をひいていないか』と心配する姿を見ました。体の健康は維持されなくても、心の健康は維持できている。それを支えてるのは家族の存在なんですよね。

だからこそ、家族の適切な距離感だったり、まず自分の生活を優先できていることが、大事だと思います」

◆ケース3 “隠れ介護”

 

介護していることを会社に言えません。

「会社に言えないのは、言いにくい会社の組織のせいだと思います。だとしたら、せめて地域包括支援センターには相談はしてほしいし、ケアマネージャーには、親の介護のこと以外に自分の心の内も含めて伝えてほしいです。

ただ、まずは、上司でなくても同僚や部下など言いやすい人に、軽い感じで『いや、なんか最近おやじが調子悪いんだよね』などと言ってみるのはどうでしょうか。そして、その時の自分の気持ちを振り返ってみるといいのではないかと思います。言ったら絶対、楽になるので。

周りの人は、もし打ち明けられたら、まずは『話してくれてありがとう』と伝えてほしいです。打ち明けた人は、感謝の気持ちを伝えられたら 『こんなこと言っていいのかな』とか『雰囲気悪くなるな』とか思わなくなりますよね。

そして、『地域包括支援センターに相談できている?』とか、『ケアマネージャーに自分のつらさも伝えられている?』などと声をかけて、最後に『また、いつでも言ってね』と言ってあげると、きっとあなたの周りの半径5メートルの介護離職者は減ると思います。

そして、声をかけ続けていたら、いざ自分の家族に介護が必要になったときも、辞めなくてすむでしょう」

最後に、川内さんに「ビジネスケアラーが、介護と仕事を両立するために大切なこと」を伺いました。

NPO法人「となりのかいご」 川内潤 代表理事
「家族ができるのは、ちょっとサポートする、ということだと思います。なので、介護の目標を“自分がどれだけたくさん手助けをしたか”ではなくて、“親子関係を良好に維持すること”に置いてみたらどうでしょうか。

自分だけで全部背負うのではなく、自分の気持ちも周りの人に伝えてほしいと思います。まず自分の生活を大事にする、という心構えをぜひ持ってほしいです」

 

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“ビジネスケアラー”が直面する課題や必要な備えについて詳しく放送します。
11月13日(月)午後7:30~
クローズアップ現代「仕事と介護に挟まれて ビジネスケアラー318万人時代の現実」
(見逃し配信は11月20日 午後7:57まで)

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