首都圏ネットワーク

  • 2023年9月26日

発達障害の子の学び 検査まで半年 遅れる支援の現状

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「通級もすぐには通えず、検査を受けるのに半年かかった」(匿名の母親) 
「発達相談や検査の予約するにも数か月待ち」(仙台市・女性)

発達障害の子どもの学びの企画に対し、視聴者から寄せられた声です。 
この検査は「発達・知能検査」と呼ばれ、発達障害の有無や特性を調べるために行われます。学校で特別支援教育を受けるには、この検査結果を必要な条件としている自治体が多くあるとみられています。しかし、取材では、寄せられた声のように、検査を受けるのに時間がかかって、支援の開始が遅れたという体験談をよく聞きます。 
実は、私の息子も、発達障害の診断を受けていますが、検査の予約がなかなか取れず、同じく半年ほどかかりました。

取材を進めると検査体制の仕組みが誰でもすぐに受けられるようになっていないという課題が見えてきました。検査がどのように行われているのか取材しました。 
(首都圏局 都庁クラブ/記者 尾垣和幸)

「発達・知能検査」とは?

私が訪れたのは、東京都内で「発達・知能検査」などを行っている曽我部和広さんです。小学校の元校長で、スクールカウンセラーなども務めています。 
曽我部さんに、検査はどのように行い、何を調べるのか教えてもらいました。

検査には複数の種類があり、最もよく使われるのは「WISC」(ウィスク)と呼ばれる検査だといいます。

検査項目は大きく5つ 
▼ことばの理解力 
▼空間認知能力 
▼短期的な記憶力 
▼物事の因果関係を推理する能力 
▼作業の処理速度

具体的な課題の内容は非公開となっていますが、子どもは口頭で答えたり、用紙に記入したりして回答します。検査時間は、1時間から2時間ほどです。

曽我部和広さん 
「マンツーマンで行い、私の質問に答えてもらったり、自分で何かを操作してもらったりして行います。緊張で結果が悪くならないように、雑談を交えてリラックスしてもらうことも心がけています」

検査結果の読み取り方が重要

検査結果は、項目ごとに数値で表されますが、それをどう読み解き、子どもの特性を判断するかが何より重要だと言います。

例えば、上の写真は実際の検査結果ですが、「WMI」と書かれているのが「短期的な記憶力」を表す数値で、平均値は「100」ですが、「79」と出ています。 
しかし、これだけで、単純に「記憶力が低い」とは言い切れないと、曽我部さんは言います。なぜなら、その子の特性から、検査中にほかのことが気になり、課題に集中できていなかった可能性があるからだと指摘します。

検査を受けている時の子どもの態度などを細かく確認していくことが必要になるそうです。高い専門性が求められるため、検査を行うには、医師免許ではなく、公認心理師や臨床心理士といった資格が必要です。

曽我部さん 
「一生懸命悩みながら答えているのと、ふらふらと歩き回りながら答えているのでは、結果の数値が同じでも、その子の特性は全く異なります。数値が出ればいいわけではなく、受検態度から読み取ったり、可能ならば、ふだんの学校の様子も聞いたりします。そして、支援方法について、保護者や先生に伝わるように分かりやすく書くことも大切です」

無料の検査に予約が集中?

このように細心の注意を払いながら行われる検査のため、支援方法の作成までを含めると1人あたり5時間以上はかかるということです。このため、曽我部さんのような民間の施設で検査を受ける場合は、4万円以上の費用がかかる場合もあるといいます。

検査は基本的に医療保険の対象になっており、医療機関で、専門の医師による診断を受けて行ったり、自治体が運営する施設で行ったりした場合は、無料か、もしくは少ない負担で済みます。 
一方、曽我部さんの施設のように、医師のいない検査機関では、保険は適用されず、国からの補助もありません。

しかし、こうした状況でも、曽我部さんの施設には、多い時で週に3、4人の子どもが訪れます。発達障害のある子どもが増え続ける中、無料の検査には予約が集中し、すぐに受けられないため、有料でも検査を受けざるを得ない状況があるとみています。 

教室での学びで悩む子どもを、すぐにでも支援につなげたいと、少なくない自己負担をしてでも検査を求めている切実な思いが保護者にあるのではないかと、私は感じました。 
私は、曽我部さんに、検査ができないことで支援の開始が遅れる事態について、どう思うか尋ねました。

曽我部さん 
「最悪ですね。子どもは、今困っているし、日々困っている。毎日毎日、毎時間毎時間、学習があるわけですから。常につらい思いをするので、それで『もう学校行きたくない』となるお子さんもたくさんいます。行政がきちんと検査を受けられる状況をつくってほしい」

6年前の調査では「10か月待ち」も

こうした検査について、こども家庭庁の担当者は、主に専門医などがいる医療機関で行うことを想定していると説明します。こうした医療機関は、都内で200ほどが公表されています。国が6年前に行った調査では、全国の27の医療機関のうち、半数以上で3か月以上の検査待ちが起き、長いところで10か月の待ちが出ているという結果が出ました。

また、大阪府が行った調査では、ことし4月の時点で登録している府内の74の医療機関の検査待ちの平均期間が、1か月半あまりだったということです。

期間の差はありますが、こうした課題が各地にあり、なかなか改善されていないことがうかがえます。

今後どうすれば?

問題解決にはどうすればいいのか。 
検査できる医療機関を増やすことも1つですが、こども家庭庁の担当者は、「専門医をいかに養成するかという問題となり、簡単にはいかない」と難しさを指摘します。

曽我部さんは、民間の検査に対する補助を行うことや、資格を持ったスクールカウンセラーが学校内で検査を行えるようにすることが必要ではないかと指摘しています。

検査、そして支援の遅れは、不登校や自傷行為などの二次障害につながりかねません。国や自治体は、当事者たちが希望すれば大きな負担なく検査を受けられる体制づくりを早急に進めるべきだと感じました。

発達障害の子どもの学びに関して、皆さんからの意見を引き続き募集しています。こちらの投稿フォームよりお寄せください。

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