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顔写真を修整(加工)するアプリやスタジオが人気 就活の証明写真も 効果とリスクは?

  • 2023年8月9日

証明写真の修整(加工)を行う都内の写真館では、客の数が去年の約3倍に増えています。特に多いのは就職活動中の学生が、履歴書などに貼る写真の修整を希望するケースです。
写真加工アプリを使い、自分で写真の修整を行う人も多く、中には世界で4億人が使うアプリも。写真の修整が広がる背景や、そのリスク、注意すべき点について取材しました。
(首都圏局/ディレクター 古田優季)

アプリで理想の顔を作ることが可能に

自分で顔写真を修整することができる“加工アプリ”の利用が広がっています。街で聞いてみると。

10代女性

ふだんの自分の顔、嫌です!やっぱり加工しないときつい。

20代男性

今の時代、もはや加工が正義。無加工のカメラで撮ろうって言われると少しちゅうちょします。

40代女性

加工アプリだときれいに写るので、どうしても使いたくなります。

 

加工アプリの中には、全世界で4億人が使っているものも。スマートフォンで目や鼻、口などの大きさや形を思い通りに変えることができます。

アプリで目の大きさを変える

利用者から求められる加工の機能は変わりつつあるといいます。

左が2015~2016年に流行した加工。顔のパーツを大きく変え、キャラクターのように見せる加工をしています。右が、いま主流になっている「ナチュラル加工」。AIの進化に伴い、現実の面影を残しながらの加工が可能になりました。

SNOW Japan 日本事業統括 崔智安さん
「理想の顔が作り出せるようになったので、自分が見たい自分、自分が作りたい自分をそのままアプリを通して写し出しています。若い方にとって加工アプリは必要不可欠であると考えています」

就職活動で“修整”求める若者も

修整のトレンドは就職活動の現場にも広がっています。
証明写真を修整するサービスを提供している都内の写真館は、連日、予約がほぼ満員です。去年と比べ、来客数は約3倍に増えています。特に就活シーズンは、大学生の姿が絶えません。
※運転免許証などに使う画像の加工・修整は認められていません。

大学3年生

すごく修整したいわけじゃないけど、コンプレックスを隠したい。「選考に残るのはかわいい子」みたいな話を聞いたので、やっぱり採用の場では写真の印象は強いのではと思って撮りに来ました。

大学3年生

SNSで証明写真を修整してくれる写真館があると聞いて来ました。エントリーシートの段階では、写真と文でしか評価されないので、写真で人柄を見られるのかなと思いました。

この日、写真館を訪れた、都内の大学に通う3年生は、「日常的に写真を修整しているわけではないが、証明写真も盛れていたらうれしい」とこの写真館を選びました。夏から始まるインターンに向けての撮影です。

この写真館では、顔の部位の好みなどを事前に"問診票"に記入。「キリッとした雰囲気にしたい」、「ゴージャスな雰囲気にしたい」といった印象の要望や、「目のかたちをたれ目にしたい」、「肌をつやつやさせたい」、「顔のかたちをほっそりさせたい」など、自身の希望に沿った修整を依頼することができます。

撮影のあと、学生が記入した"問診票"をもとに、店員とカウンセリング。写真館が就活中の学生に勧めるのは、「面接で対面しても不自然に思われない」修整です。

韓国式証明写真館STORYBOOTH(ストーリーブース)金森賢広さん
「肌を白くしすぎたり、過度に口角を上げたりするような修整はおすすめしないことが多いです。不自然にならない修整を提案します」

大学生

肌荒れなど消したいんですが、あまり修整した感じにはしたくないです。

金森さん

わかりました。肌の色など変えすぎてしまうと、修整している雰囲気が出てしまうので、そのあたり大切にしながら、修整しますね。

修整してできあがった写真がこちら。顔や首もとの肌荒れ、頭上の浮き上がった毛などを修整。眉や口元の左右のゆがみも整えました。

就活中の学生
「肌荒れなど、日によってはどうにもできないものを、自然に修整してもらえてうれしいです。就活に対する気持ちが楽になりました。頑張ろうと思えます」

金森賢広さん
「このサービスをはじめて思うことは、他人が感じる以上に、みんな、自身の見た目にコンプレックスを持っているのだなということです。自信のない部分を少し修整してあげるだけで、物事に対する心持ちが変わるのだと感じています。

単に写真を撮影、修整するということだけではなく、ご来店いただいた方の悩みやコンプレックスに寄り添っていきたいです」

ポジティブな心理効果もたらす修整 一方でリスクも…

広がる、写真の修整に対するニーズ。
その需要の背景について、社会心理学に詳しく「写真の加工が感情状態に及ぼす効果」について研究している、信州大学人文学部の佐藤広英准教授に聞きました。

信州大学人文学部 佐藤広英 准教授
「以前の研究から、自身の容姿にコンプレックスがある人も、ない人も、自撮り写真の加工によって、自尊感情が増加していることが分かりました。顔写真の加工は、利用者に対し、基本的には、ポジティブな心理効果をもたらすと言えます。そうした喜びが加工に対する欲求をかき立てていると考えられます。

また、証明写真を加工するサービスが求められることについても、不思議なことではありません。

『実際のところは分からないが、外見を魅力的にしたほうが、就活がうまくいくのではないか』と学生が考えるのは納得がいきますし、そうした欲求が技術の進歩によって解消されるようになったと考えれば自然な流れであるように思います。そうした技術を利用することで、より前向きに、就活に取り組める学生も多いのではないでしょうか」

一方で、「加工・修整しすぎる」ことへの懸念もあるといいます。手軽に何でも加工できる便利な世の中だからこそ、利用者1人1人がその向き合い方を考え、上手に利用することが求められます。

「心理学では、化粧など、意図的に自身の印象を変えようとする行為を『自己呈示(ていじ)』と呼びます。画像の加工も『自己呈示』の一種であると言えます。こうした『自己呈示』は、その強さや、相手との関係性によっては、人間関係を築く上でネガティブな効果をもたらします。

就職活動など、場面によっては、過度な加工が相手に『写真の印象と実際の顔が異なる』など、不信感を与える可能性があります。『どんな場面で』『どのくらいの程度』加工した自分を見せていくのか、自分自身で適宜判断していく姿勢が大切です」

  • 古田優季

    首都圏局 ディレクター

    古田優季

    2021年入局。きつ音や不登校などをこれまで取材。

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