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  • 2023年8月4日

キャンプ・アウトドアでトラブル多発 初心者急増も原因か 女性キャンパーへの声かけやたき火に注意

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夏休みに入ってにぎわいを見せるアウトドアスポット。グランピングやソロキャンプの流行などすそ野が広がる一方で、初心者の急増などを背景としたトラブルが各地で多発しています。

知らず知らずに冒してしまう“危険行為”や、思わぬ事故やけが、さらにマナー違反が地元住民の生活を脅かすことも・・・。

その末に閉鎖に追い込まれていたスポットも。この夏を楽しむための注意点を取材しました。

(首都圏局/ディレクター 林秀征、梅本肇)

「たき逃げ」「バカまき」思わぬ危険

ソロキャンプ愛好家およそ2万人が所属するグループの代表を務めている、小山仁さん。河川敷など「野営地」と呼ばれるアウトドアの人気スポットで、草むしりやゴミ拾いなど、環境整備を自主的に行ってきました。

小山さんたちのグループでは、アウトドアでのマナー違反に独自のネーミングをしてSNSなどで発信し注意を促しています。

各地で横行している、たき火を放置したまま帰る行為「たき逃げ」。この日訪れた神奈川県内で人気の河川敷でも、多発していました。

日本単独野営協会 代表理事 小山仁さん 
「『(炭は)もともと、木でできているから、捨てていっても土にかえるから、もうこのまま放置していいや』と思っている人もいるのですが、全然違って、これはもう全然土にかえらないので」

放置された炭は土にかえらずに残り続け、地面が炭だらけになるだけでなく、川から海に流れ込んで汚染の原因にもなりかねないといいます。

さらに、火消しが不十分なまま放置されている場合もあり、火災の原因になるといった危険も考えられるそうです。

これは「バカでかいまき」という意味からくる「バカまき」。 
本来、まきは割って燃えやすい太さにして燃やしていくというのが基本にも関わらず、大きなまま燃やしたため大部分が焼け残っていました。

さらに、アウトドアでのたき火は延焼などを防ぐために専用の台を使って行うのがマナーとなっていますが、ここ数年、地面の上で直接たき火を行う「じか火」という行為が横行しているといいます。

中でも危険なのが、石を組んでかまどを作り、火を燃やす行為です。石が温度差で割れ、思わぬ事故やけがの危険が潜んでいるといいます。

小山さん 
「どうなるかというと、このようにものすごく鋭利に割れます。夏になると子どもたちが川遊びに来ますが、これ足元に置いてあったらどうでしょうか。刃物が置いてあるのと一緒ですよね」

現地を訪れていたこの日、取材班は、河原に到着した直後に、車のオイルが漏れて困っている家族に、その原因を聞くと、たき火の跡に残された石にぶつかったり、はねたりしたこととみられると話しました。

さらにこの河原では、キャンプで出たゴミを持ち帰らず、放置する利用者も相次いでいます。 
壊れたテントがそのまま放置され、その中にはぎっしりとゴミが詰め込まれていました。 
小山さんは、こうした日本のアウトドアレジャーの現状に危機感を抱いています。

小山さん 
「『自分1人だったら大丈夫だろう』という行為をたくさんの人がやると、とんでもないことになる。ゴミが捨ててあるから、じゃあ俺も捨てていいやっていうのでどんどんゴミを詰め込んでいったって感じで、ゴミがゴミを呼んでしまいます。全員が気持ちよく楽しめるように、常にきれいにするのを心がけていたほうがいいですね」

『ソロキャン』トラブル 女性キャンパー急増の陰で

近年急増する女性のソロキャンパーの間では、ある対人トラブルが問題となっています。

きっかけとなったのは、SNS上で大きな反響を呼んだ動画。キャンプ中とみられる女性が夜、見知らぬ男性に突然、連絡先の交換を迫られるものでした。

女性が誘いを断り、「警察を呼びますよ。怖いです」と言っても、男性が「警察って何?」「キャンプの輪を広げたい」などと話しかけ続ける様子が投稿され、「怖すぎる」「私もこのような経験がある」「キャンパーとしてありえない行為」といった反応が寄せられました。

アウトドア情報を発信するウェブメディアの編集長、森風美さんは、こうした事態を受け、ことし6月、「今一度考える女性キャンパーへの声かけ事案」と題する記事を発信。

男性のキャンパーと女性キャンパーそれぞれに向けて注意喚起を行っています。

「なちゅガール」編集長 森風美さん 
「友達で『怖かった』みたいなことを言っている子もいたので、“人ごとじゃない”という気持ちがしました。いろいろ話は聞いていたけど実際に、動画で生々しく見てしまうと、怖いなという部分も大きく、感情を揺さぶられました」

<男性キャンパーへの呼びかけ> 
・話しかけられない限り話しかけない 
・挨拶は軽く、短めに、昼間のうちに 
・夜に声をかけるのは厳禁

大切なのは、お互いに気持ちのよい距離感。初心者が設営や火起こしに手間取っていると、つい声をかけたくなるものの、相手から助けを求められない限り、そっとしておくことも大事だと訴えています。

さらに、女性のキャンパー向けには自身が実践してきた『身を守るための対策』も発信しています。

例えば、小さなカギをかけてテントのジッパー同士を連結させたり、男性用の大きめのサンダルをテントの入り口に置いたりすることなど。

こうした対策が必要な背景には、寝ている間に外からテントを開けられそうになったという体験をした人の存在があります。森さんは、女性が制限を受けるのではなく、男性や業界全体の意識の改善も必要だとしています。

森さん 
「楽しい遊びとして発展しているものにストップがかかるのは、もったいないと思うので。こういうことをキャンプに行ったときには気をつけましょうと、お互いにいい距離感でキャンプできたらいいねと思います」

対応に追われる自治体

利用者のマナー悪化が原因の一つで、一時閉鎖に追い込まれていたアウトドアスポットもあります。年間8万人が訪れる埼玉県の飯能河原です。

最寄りの駅から徒歩15分で、豊かな自然を無料で楽しめる手軽さが人気を呼んでいました。

しかし、一昨年の夏、この河原は閉鎖され、一切利用できなくなりました。理由は利用者が残す大量のゴミと深夜まで続く騒音に住民から苦情が相次いだことでした。

住民によると、警察への通報は、1週間で100件を超えたことも。窓を閉め、洗濯物も干せず、日常生活に大きな支障が出ていたといいます。

自治体と観光協会は周辺住民とともに2年にわたり対策を検討し、今年、観光協会が管理を徹底する形で河原の利用を再開しました。

バーベキューができるエリアを限定。スタッフは常駐とし、ゴミ捨て場も設置しました。 
こうした費用を捻出するために河原を一部有料とする苦渋の決断を下しました。

さらに、騒音対策として河原の利用を午後6時までに制限しました。 
しかし、夜間のゴミの投棄は今でもなくなっていません。

奥むさし飯能観光協会 小槻成克さん 
「やはり何かルールをつくると、そこの抜け穴ができてしまうので、あまり変なことにならないように対処していければなと思っております」

この夏 守りたい7つの原則

なぜ、いま、こうしたトラブルが相次いでいるのか。背景にあるのが、アウトドアレジャーのすそ野の拡大です。

これまでメインとされてきたファミリー層だけでなく、キャンピングカーを保有するシニア層の増加や、若者を中心にひとりで楽しむ『ソロキャンプ』や、いわゆる女子会をアウトドアで行う『女子キャンプ』、そして、テントの設営がいらないグランピング施設も登場。

コロナ禍でも楽しめる娯楽としてこの数年拡大を続け、アウトドアレジャーの市場規模は今後も右肩上がりの成長が見込まれています。

キャンプの社会的意義について研究を続ける専門家で、キャンプ歴40年の青木康太朗さんが指摘するのは、気づかぬうちにマナー違反を冒してしまう初心者の急増です。

特にアニメやYouTubeの影響で始めた人の中には、正しいキャンプの楽しみ方は知らないといった人が多く、トラブルの原因の1つと考えられるそうです。

國學院大学 人間開発学部 青木康太朗准教授 
「マナーの問題は、昔から言われていることではありますが、今、これまでと違うフェーズにあるように感じます。現場でよく耳にするのが、『そんなマナーがあるなんて知らなかった』という声です。キャンプのすそ野が広がり、参加する初心者が増えること自体は喜ばしいことですが、学ぶ機会がないままキャンプに訪れている人が多い印象です」

青木さんは、最近アウトドアの魅力に目覚めた人たちや、この夏に旅行を計画している人たちに、ぜひ心にとめておいてほしい7つの原則があるといいます。

「リーブノートレイス(Leave No Trace)」と呼ばれ、30年以上前にアメリカで示されたものですが、現在の日本でも、アウトドアを楽しむことにおいて、極めて重要な原則だといいます。

<リーブノートレイス(Leave No Trace) 7原則> 
(1)事前に計画し準備をすること 
(2)影響の少ない場所を選んで活動やキャンプをすること 
(3)ゴミは適切に片付けること 
(4)自然の中で見つけたものは持ち帰らないこと 
(5)たき火の影響を最小限にすること 
(6)野生の動物を大切にすること 
(7)他の訪問者を思いやること

青木さん 
「SNSやバーチャルの世界がどんどん広がる中で、“本物”に触れられる時間は、大人と子ども双方にとって、貴重な体験です。本物の自然には、日常で出会えない、五感を揺さぶる要素が無数にあります。自然と共生し、持続可能なレジャーのありようを一人ひとりが意識して楽しんでほしいと思います」

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