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ゼレンスキー大統領のG7電撃参加 ウクライナからの避難者は

  • 2023年5月24日

「震えながら会見を聞きました」
埼玉県川口市の市営住宅の1室で、女性たちがくぎづけになっていたのは、ウクライナのゼレンスキー大統領。
G7広島サミットでの対面参加を果たした大統領の発言を、どう聞いたのか取材しました。
(首都圏局/記者 岡部咲)

「大統領は年を取った」

21日午後7時半ごろ、ウクライナから避難している2人の高齢者が、目に涙を浮かべながらゼレンスキー大統領の会見の映像を見つめていました。

埼玉県川口市に避難しているイリーナ・スヴィドランさん(65)と、ステファニヤ・シトニツカさん(75)。
軍事侵攻が始まる前、2人は別々の街にいましたが、埼玉県で暮らしていた娘を頼ってそれぞれ避難し、ここで知り合いになりました。

「大統領はこの1年で年をとったよね」

イリーナさんの悲しげなつぶやきに、彼女自身が去年から置かれてきた境遇を痛感しました。

私(記者)がイリーナさんを取材したのは去年5月。
避難してきた当初は家に閉じこもって、ずっとスマートフォンを見続けていました。
ウクライナに残った息子のことが気がかりで、ウクライナ現地に防空警報が出たことを知らせる通知を見るたび、いても立ってもいられない気持ちだったといいます。

今では日本語も少しずつ話せるようになり、新橋にあるウクライナ料理の店で働くようになりました。
生活が軌道に乗り始める一方、時間がたつにつれて家族とともに過ごしていたウクライナでの生活への思いは大きくなっているそうです。

そんな中、自分が避難している日本でG7のサミットが開かれ、ゼレンスキー大統領が対面参加することになったことに、大きな期待を寄せていました。

ロシアを改めて非難し、ウクライナの街を将来的に復興させる決意を示したゼレンスキー大統領。
「対面訪問によって、かつてから話し合いがすすんでいない部分について努力する機会となった」という大統領のことばに、イリーナさんは大きくうなずいていました。

イリーナさん
「ゼレンスキー大統領は逃げることなく、最後まで責任を全うしようとしている。大統領が来日したことで、オンラインでは話せないことまで協議できたのではないでしょうか。世界が侵略に立ち向かい、平和が訪れるのではないかと希望がわきました」

「戦争は終わりがあるはず」

「ウクライナのバフムトで起きている破壊とかつての広島の写真が似ている」と述べ、復興を成し遂げる決意を示したゼレンスキー大統領。

イリーナさんの隣で静かに会見を見守っていたステファニヤさんは、戦争で多くの命が失われた広島で、ウクライナの復興に向けた決意を発信することに大きな意味を感じていました。

ステファニヤさん
「大統領がG7広島サミットに招待されたということが、とても重要です。ウクライナで起きていることをサミットの場から世界に伝えられてよかった。全ての国々が大統領の話に耳を傾け、ウクライナを支援してほしいです」

ロシアによる侵攻が始まってから1年が過ぎ、「支援疲れ」も指摘されるようになりました。
ステファニヤさんは、今回のサミットがウクライナ人の安全確保やロシアへの制裁強化などの動きにつながるのでは、と期待を示していました。

取材の最後、ステファニャさんは静かな声でこう話しました。

「戦争は永遠に続くのではなく、終わりがあるはずです」

  • 岡部 咲

    首都圏局 記者

    岡部 咲

    2011年(平成23年)入局。宮崎局、宇都宮局を経て首都圏局。 去年2月からウクライナについて継続して取材。

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