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選手村マンション「晴海フラッグ」転売相次ぎ 2度目の販売方法見直し

不動産のリアル(14)
  • 2023年5月22日

6月の販売開始直前に大きな方針転換です。
「晴海フラッグ」のシンボルとなる2棟のタワーマンションについて、販売方法が“1人2部屋まで”とする戸数制限がされることになりました。これまでは申し込みに制限がなかったため、資金力に勝る投資家や法人に比べて、一般世帯が購入しづらい構図になっていました。
なぜ販売方法が見直されることになったのか、背景を探りました。

※私たちは「不動産のリアル」と題して、空前の高騰が続く東京の不動産を取材しています。
皆さんの体験や意見をこちらまでお寄せください。

(首都圏局/不動産のリアル取材班 記者 牧野慎太朗)

これまでの経緯は?

晴海フラッグのマンションをめぐっては、これまですでに販売された17棟について、周辺相場より割安な価格設定などもあり、転売目的の投資家や不動産会社などが参入し、最高倍率が266倍となった実態などをお伝えしてきました。

抽選方法を見直すも…

これをうけて、東京都は事業者に対し「今後予定されている販売においては、できる限り広く一般世帯の方に購入いただけるよう、例えば抽選の工夫など、特段の配慮をお願いする」とする文書を送付したところ、事業者が販売方法を変更。

具体的には、申し込んだ第1希望の部屋に限り、当選確率を2倍に設定し、2部屋目以降は確率を半分にする方法を取り入れました。
通常1部屋しか申し込まない一般世帯への優遇措置です。
ただ、この優遇措置は、一般世帯か投資家かを問わずに適用されるため、その実効性を疑問視する声が相次ぎました。

きっかけは転売住戸の出現

不動産仲介サイトに掲載されていた情報(4月17日時点)

こうしたなか、今回の急転直下の見直しにつながる出来事が起きます。
すでに販売された晴海フラッグの1部屋が、引き渡し前に実際に売りに出されたことが、不動産の仲介サイトで初めて確認されたのです。

販売価格は9500万円と、購入時の価格より3000万円以上高い値段に設定されていました。

これまでも投資家や不動産会社など、転売目的の購入者が多いことは分かっていましたが、実際の転売につながる動きが初めて表になったのです。

その後も仲介サイトには入居前の部屋が相次いで売りに出され、これまでに少なくとも5件以上、確認されています。

2度目の販売方法見直しへ

このため、都は6月から販売されるタワーマンションについては、同じようなことが起きないようにと、追加の対策を講じる必要があると考えました。
事業者側もそれに応じて、“申し込みは1人2部屋まで”とする戸数制限を設けることになりました。事業者によると、今回の対策と、第1希望の部屋の当選確率を2倍にする措置とセットで行われるということです。

東京都都市整備局 田中佐世子 公共再開発担当課長
「これまで転売は予想の域を出ませんでしたが、実際に転売されるケースが複数確認され、不動産価格の高騰が続く中で今後も転売目的の購入者が相当数申し込むことが具体的に懸念されるようになりました。これにより、一般世帯が購入しづらくなってしまってはいけないと考え、販売方法をさらに改善する、不公平感を是正する必要があると考えました。戸数制限により、販売方法はだいぶ改善されると受け止めています」

転売規制は難しい?

今回の戸数制限は、事業者側から提案された対策だそうです。ただ、転売目的の購入そのものを規制するよう、なぜ東京都は事業者に求めなかったのでしょうか。
担当者に尋ねると、「資金」の問題を挙げました。

東京都都市整備局 田中佐世子 公共再開発担当課長
「東京都の内部でも議論にはなりました。転売を規制する方法としては、期限を設けて転売が確認された場合に販売価格で買い戻す「買い戻し特約」を付けることが考えられました。しかし、実効性を担保するためには、実際に買い戻す資金が必要です。1戸あたり5000万円以上もする部屋を買い戻す資金をすぐに準備するのは現実的ではないと思い、事業者には求めませんでした」

購入検討者の受け止めは?

今回の戸数制限について、晴海フラッグを申し込んでも落選が続いている人たちはどう感じているのでしょうか。

50代男性 過去複数回落選
「一般世帯が購入しやすくなるのであればよかったです。これだけの人気が出ることを当初から想定するのは難しかったと思うので、これまで対策を講じられなかった点については、仕方が無いと思います」

50代の男性 過去4回落選
「いまになって転売されていることに慌てている東京都の対応には率直に違和感があります。今回も戸数制限はしているものの、転売自体は規制されていません。本当に一般世帯に渡るようにしたいなら、最初から転売防止の対策を講じるべきだったと思います」

一方で、戸数制限をしても抜け穴があるという指摘もありました。

30代の男性 過去2回落選
「戸数制限はないよりましだと思いますが、投資家が法人を複数作るなどして名義を増やしてしまえば、いくらでも申し込めることには変わりないと思います。東京都の要請に対して、事業者が本質的な改善を行わないと状況は変わりません」

30代の男性 過去5回落選
「すでに会社を持っている投資家の場合、個人と法人の両方の名義で申し込みができるのではないかと思います。一般世帯に行き渡らせたいのであれば、抜本的な対策として転売禁止もしくは法人による購入禁止を設けるべきです」

この抜け穴の懸念について、都の担当者に再度尋ねたところ「事業者側からは、同じ人が社長を務める別々の会社から申し込むことはできないという説明を受けているので、事業者側で当然チェックしているものと捉えています」と話していました。

どうなるタワマン販売??

6月から始まる晴海フラッグ、最後にして、最大のタワーマンション販売。今回の見直しはまさにその直前に行われたもので、取材している私も驚きました。
今回の見直しはこれまでよりは踏み込んだ内容で、購入希望者の中からも評価する声は少なくありません。

しかし、取材の中で聞いた「罪深い物件ですよね」という言葉がひっかかります。
販売当初の2019年から家が欲しいと思って晴海フラッグに応募し続けている人は、その間に周辺の不動産価格が上がってしまい、もうほかの物件は買える価格帯ではなくなっているといいます。
今回の見直しで、実際の販売はどうなるのか。今後も取材を続けていきます。

私たちは、東京の不動産事情をみなさんから意見や情報を募集しています。
住宅の高騰による困りごとなどの意見も、ぜひこちらの投稿フォームよりお寄せください。

  • 牧野慎太朗

    首都圏局 記者

    牧野慎太朗

    2015年(平成27年)入局。宮崎局、長野局を経て2022年から首都圏局。不動産取材を担当。

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