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学童保育が足りない!待機児童問題が深刻に 保育園は増えたけど…

シリーズ保育現場のリアル
  • 2023年3月27日

子どもの入学を控えた今、わが子の放課後の過ごし方に頭を悩ましている保護者も多いのではないでしょうか。
「保育園落ちた 日本死ね」という匿名のブログが話題になってから7年。保育園が次々と作られた一方で、今、深刻になっているのが学童保育に入ることができない「待機児童」の問題です。
調べてみると、東京23区だけでも、待機児童の数は2500人を超えていました。
(首都圏局/記者 氏家寛子)

#学童落ちた 相次ぐ

小学生の預け先として※学童保育の利用を希望する保護者は年々増えています。
しかし、今、その学童保育に申し込んでも利用が断られるケースが相次いでいるのです。公立の学童保育の多くで結果が出る2月から、SNS上には「#学童落ちた」ということばが並び、話題になっています。

夫婦フルタイムで働いてて学童落ちた。実家は県外、義実家も車で50分。
2年生だけど学童おとされてまじでどうしろってゆーーの?
鍵っ子で不安しかないんだけど…

※学童保育(放課後児童クラブ)とは 
共働き家庭など留守家庭の小学校に就学している児童に対して、学校の教室や児童館、公民館などで放課後などに適切な遊びや生活の場を与え、その健全な育成を図るもの。厚生労働省の事業。児童福祉法に基づく事業として、補助の対象となっているものは、公立公営や公立民営が多い。

“保活”も苦労したのに…

ことし2月、公立の学童保育に落選したという目黒区の団体職員の40代の女性に話を聞くことができました。息子はこの春、小学校3年生になります。

落選の結果を知った時、女性は「保育園に入るのもとても大変だったので、学童でもその可能性があると、うすうす感じていました。でも、『またか』と。子育て支援策から突き放されたような気がします」と打ち明けました。

今は毎日午後6時ごろまで仕事をしているといいますが、4月からは学童保育が使えなくなるため、民間の学童や習い事などに新たに申し込む必要があるといいます。

女性
「就業率が上がり、保育所を利用する家庭が増えていることは自治体もわかっていると思うので、学童の受け皿が十分でないのは当事者としては納得いかない気持ちがあります。“女性活躍”とは言いますが、安心して子どもが過ごせる場所がないと働くことは難しいと思います」

仕事に影響も 民間頼るも負担増

さらに、公立の学童が利用できないと、働く保護者のキャリアに影響したり、金銭的な負担が増したりするという声もあります。

杉並区の40代の会社員の女性は、去年、小学3年生になる娘が公立の学童保育に落選しました。女性はフルタイムで働く予定でしたが、午後4時までの時短勤務にせざるをえず、任せてもらえる仕事内容も変わってしまったといいます。

そのため、ことし1月からは民間の学童保育を毎日利用して、フルタイムで働くことにしました。しかしそれにより、月におよそ5万円の費用がかかることになりました。これは月額4000円で利用できた公立の学童と比べて大きな金銭的負担となります。

女性
「子どもを見てもらえる場所があるというのはとても大事なことだと思います。自分が帰宅するまで、自宅でひとり、動画などを見て過ごすより、大人の目がある安全な場所で、友だちと関わる時間を過ごして欲しいです。核家族だと、なかなか子どもの居場所は見つけられません。公立の学童の数は、少ないのではないかと思います」

東京23区の学童待機児童 2500人あまり

この「学童保育」の今年度(令和4年度)当初の待機児童はどのくらいいるのか?
待機児童が多い東京23区の自治体に、NHKがアンケート調査した結果、待機児童は23区全体で、2514人に上ることが分かりました。

内訳をみますと、最も多いのが、江東区で313人、次いで、墨田区と葛飾区で281人、練馬区で273人、足立区で244人、中央区で243人、杉並区で242人となっています。江東区で待機児童が多い理由としては、背景に、マンションの建設が相次ぎ子どもの数が増えていることがあるということでした。

それぞれの自治体では、学校の教室の一部を新たに学童保育のためのスペースとして使えるようにすることで定員を増やすなど、待機児童を減らす取り組みは進めているものの、それを上回る需要があり、対策が追いついていないということでした。

一方、千代田区、品川区、世田谷区、渋谷区、豊島区、荒川区、板橋区、江戸川区の8つの区では、待機児童は「いない」と回答。

23区のなかでも地域によって事情が大きく異なっていました。

待機児童対策は

厚生労働省が去年5月時点の利用状況によりますと、利用する児童の数は全国で139万2158人。統計を取り始めた1998年以降、最も多くなりました。

一方で、学童保育の空きを待つ待機児童は1万5180人で前の年より1764人増加。3年ぶりに増加に転じています。

待機児童が増えたことについて、厚生労働省は「新型コロナの感染拡大直後は利用控えで減少したが、徐々に戻ってきたのではないか」としています。

国は、2019年度から2023年度までの5年間で約30万人分の学童保育を整備する方針です。しかし、その達成率は去年5月の時点で5割ほどにとどまっています。

それでは、放課後の小学生の預け先は、学童保育以外にないのでしょうか。
実は、学校内で展開する「放課後子供教室」というものがあります。学童保育(放課後児童クラブ)が厚生労働省の事業なのに対して、こちらは文部科学省の事業となります。

親の就労状況に関わらず、登録した児童が学習や交流活動に参加できますが、開設時間が短く、夏休みなど長期休みには利用できない場合もあります。自治体の中には、こうした事業と学童保育を一体化することで、受け皿を拡大しようとする動きもあります。

専門家は

学童保育については、4月に発足するこども家庭庁でもその内容の充実が議論されています。新潟県立大学の植木信一教授は、誰もが利用できるよう十分な整備が必要だと指摘します。

新潟県立大学 植木信一教授
「学童保育は、これまで補足的な扱いだったが共働き家庭の増加で、今や必要不可欠となっている。小学校の空き教室を使うだけでは足りないところもあると思うので、利用者が減っている幼稚園の施設など、地域の資源を学童保育の受け皿として検討していくべきではないだろうか。こうした取り組みに、自治体が補助を出すなど後押しすることが求められる」

保護者・保育現場のみなさん 体験談などお寄せ下さい

学童保育の待機児童の数は正確な把握が難しいと言われています。
利用を希望しても入れなかったことからほかの居場所を見つけることで申し込みを取り下げたり、利用の選考では低学年が優先されたりすることが多いため、学年が上がると諦めてしまうケースも少なくないからです。

希望の学童保育に入れない待機の問題を踏まえ、都市部では民間学童も増えています。
ただ、送迎、長時間の預かりなど手厚いサービスの一方で、利用額は高額です。
また、習い事や塾に流れる傾向もありますが、利用の可否は家庭の経済状況によるところが大きく、“放課後格差”も懸念されます。
保護者の就労ニーズをかなえ、人手不足を改善するためには、きめ細かな対応が必要だと思います。

みなさんの子どもたちが通う学童保育や放課後の居場所はどんな状況でしょうか。
また、学童保育の現場で働くみなさんの意見もぜひこちらよりお聞かせください。

  • 氏家寛子

    首都圏局 記者

    氏家寛子

    岡山局、新潟局などを経て首都圏局 医療・教育・福祉分野を幅広く取材。

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