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マスク着用方針見直し 外す?外さない?企業、学校、電車などの対応は?

  • 2023年3月17日

新型コロナ対策としてのマスク着用の方針が、3月13日から見直され、原則、個人の判断に委ねられました。
都内の企業に勤める男性はマスクに苦手意識があり、この日を期待していましたが、さまざまな場面で判断の難しさに直面しました。

すいている電車の中は、マスクは外して大丈夫?
乗車したタクシーの運転手が、高齢だった場合は?
取引先の企業を訪問するときは…?

はたしてどう判断し、着脱を決めていけばいいのか。学校や各業界の対応とともにお伝えします。

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

方針見直しを期待していた会社員 ところが…

都内の商社に勤める、速水響平さんです。以前からマスクに苦手意識があり、外せる場面が増えることを期待して、3月13日を迎えました。

速水さん

最近、暑くなってきて、だんだんマスクをつけているのが苦痛に感じつつあったので、外して通勤できるのは快適です。

速水さんが勤める会社では、これまで、業務中は常にマスクの着用が求められていました。しかしこの日から、一部の場合を除いて、マスクの着用が個人の判断に委ねられることになったのです。

あいさつを交わす出社の時は、マスクをつけていた速水さんですが、着席するとすぐにマスクを外しました。

暑いので外しましょうかね。そんなに誰かとしゃべり続けることはないので。

しかし、マスクを外したのもつかの間。打ち合わせなど対面での会話の際は、今もマスクをするのが会社のルールとなっています。

気付けば、1人で作業をする時もマスクをつけていました。

速水さん

マスクを外すのを忘れていました。つけたり外したりしなければならない動作や、常に、つけなきゃダメとか考えなければいけないのは面倒だなと感じます。

マスクの着脱を判断する難しさ

午後、取引先との約束があった速水さん。都内中心部から、取引先がある埼玉県草加市まで電車で移動します。
国の方針では、通勤ラッシュなど混雑している場合、マスクの着用が推奨されています。

移動中の電車内はずっとすいていましたが、速水さんはマスクをつけ続けていました。

取引先の最寄り駅に到着した速水さん

周りの皆さんがマスクをつけていたので、つけたほうがいいかなと思いました。外す雰囲気ではないと感じました。

取引先でも判断を求められる場面がありました。販売した機械の設置作業。周りに人はいませんでしたが、マスクをつけたまま行いました。

暑いので、本当はマスクを取りたいなという気持ちはありますが…、周りに人がいなくても、その会社さんのルールをよく知っているわけではないので、外さずに対応したいです。

3時間におよぶ作業を終えた速水さん。帰りのタクシーの中では、運転手に断った上でマスクを外すことにしました。
 

マスクをとっても大丈夫ですか?

運転手

きょうから個人の自由ですから

じゃあちょっと外しちゃいますね。

ところが…、数分後には再びマスクをつけていました。

降車後に理由を聞いてみると。

運転手の方がご高齢だったので、なんとなく、つけたほうがいいかなと思ってつけました。

この日、さまざまな場面で判断を求められた速水さん。食事以外でマスクを外したのは40分ほどでした。

速水響平さん
「自分が期待していた状況とはほど遠く、今までとあまり変化がなかったと感じました。個人で判断して、マスクを外していいということですが、個人の判断は、人によって基準が全然違いますよね。人と基準が違ったときに、指摘されたり、相手に不快な思いをさせたり、そういう望ましくないことにつながるのではないかなと…、すごく迷って疲れてしまいました。難しいです」

マスクに関する公共交通や商業施設の対応

マスク着脱について、国はどのような方針を示しているのでしょうか。これまでは、特に屋内ではマスクの着用を推奨してきましたが、3月13日からは、屋内・屋外問わず、原則「個人の判断に委ねる」ことになりました。

一方で、引き続きマスク着用が推奨されるところもあります。医療機関を受診する時や、重症化リスクの高い人が多い医療機関や高齢者施設などを訪問する時、通勤ラッシュなど混雑した電車やバスに乗るときなどです。

このほか、高齢者やがんなどの基礎疾患、そして妊娠している女性など重症化リスクの高い人が流行期に混雑した場所に行く時にもマスクの着用は効果的だとしています。

政府の方針を受けた、各業界の対応をまとめました。

<公共交通機関>
鉄道業界では、JRや私鉄の業界団体などで作る「鉄道連絡会」が新型コロナの感染対策に関するガイドラインを改定し、これまであった「マスクの着用や会話を控えめにすることの協力を求める」といった記述がなくなりました。これによって、3月13日以降はマスク着用などの対応が事業者に任される形になりました。

このうち京王電鉄では、13日からマスクの着用や、会話を控えめにするよう呼びかける対応を行わないことにしています。一方、時差通勤の呼びかけなどの感染対策は続けることにしています。

また、都営バスでは、利用者にマスクを着用して会話を控えめにすることを求めていましたが、13日の始発までにすべての車内に掲示していた呼びかけのポスターを撤去しました。13日からは、利用者のマスクの着用は個人の判断に委ねることにしていますが、乗務員はマスクの着用を続けることにしています。

 

<商業施設>
流通大手のイオンは、3月13日以降も従業員のマスク着用を継続する一方、客に対しては原則、着用のお願いをしないとしています。

コンビニ業界大手では、セブン‐イレブン・ジャパンやファミリーマート、それにローソンが来店客のマスク着用は個人の判断に委ねます。従業員についても個人の判断に委ねるものの、加盟店のオーナーを通じ、引き続き着用を推奨するとしています。

【関連記事】外食・デパートなど各業界の対応を詳しく

学校は“4月以降マスク着用求めないこと基本”

学校での教育活動については、文部科学省が、4月以降の着用を求めないことを基本とする方針を、全国の教育委員会などに通知しています。「教育活動」には体育を含めた授業全般や合唱、運動部の活動などが含まれるということです。

また卒業式については、マスクを着用しないことを基本としますが、国歌や校歌の斉唱などでは、マスクなどの対策をした上で実施するように求めています。

【関連記事】都内の小学校の対応は…

マスク着用について 専門家の知見は

マスクの着用が個人の判断に委ねられることになりましたが、マスクの効果が否定されたわけではありません。

マスクの着用で自分の感染を防ぐ効果について、各国の78件の研究を解析した結果では、マスク着用者の1週間あたりの感染リスクは、着用していない人に比べ0.84倍に下がり、2週間あたりだと0.76倍に下がると推定されたとしています。

さらに、アメリカの研究では、マスクの着用者が10%増えるとそうでない場合に比べて3.53倍、流行が制御しやすくなると推定されたとしています(厚生労働省の専門家会合のメンバーなどがまとめた資料による)。

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こうした知見を踏まえた上で、個人が想像力を働かせて判断していくことが重要だと、専門家は指摘しています。

東邦大学 舘田一博教授(政府分科会メンバー)
「最近は感染者の減少が続き、死亡率も抑えられています。マスクを外した日常生活を取り戻すことを探る時期にさしかかっていると思います。

ただ、油断すると新たな流行を生んでしまうおそれもあります。なにより、重症化リスクの高い人たちを守ることが重要です。特に、満員電車など不特定多数の人で密になる場面や、医療機関や高齢者施設を訪問する際は、引き続きマスクの着用が必要です。

また健康なように見えても、生活の中で常にマスクを着けている人もいます。実は人知れず、持病があるのかもしれません。お年寄りと一緒に住んでいて、家にウイルスを持ち込みたくない人もいるでしょう。

マスク着用が個々人の判断となるからこそ、私たち一人ひとりが、周りの人の感染症への振る舞いや考え方に気を配ることが、大切になるのではないかと思います」

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