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東京のマンション高騰 社宅も閉鎖 どうすれば?専門家に聞く

不動産のリアル(7)
  • 2023年3月14日

新築や中古の分譲だけでなく、賃貸の家賃も上がっている東京のマンション。私たちのもとには、東京での家探しで途方に暮れているという声が寄せられています。なぜ都内でこうした値上がりが続いているのか、どうすればファミリー世帯が住居を確保できるのか、専門家に聞きました。

(私たちは高騰し続ける首都圏の不動産のリアルを取材しています。みなさんからの情報や意見をこちらまでお寄せください)(首都圏局/不動産のリアル取材班 記者 牧野慎太朗)

とても買えません 途方に暮れています…

先日、私たち不動産のリアル取材班は、都内の社宅に住む4人家族が、「都内では広さ60平米、築30年以内、家賃25万円まで」を条件に賃貸マンションを探しても、希望する物件がみつからないという体験談(詳しくはこちら)を記事にしたところ、いくつかの反響をいただきました。ありがとうございます。

「(記事に)深く共感しました。子どもたちと普通の生活を営むために身を粉にして働いても(都内で)住めなかったりするのは、おかしいです」(60代 神奈川)

「子育てをしていく若い夫婦が家賃の負担で将来に希望が持てなくなるという事態にはとても心が痛みます」(女性 東京)

「社宅が取り壊されることになり、今住んでいる場所で探していますが、郊外までエリアを広げても4人家族で住む広さは8000万くらいします。とても買えません。平均的な収入で親と子どもという家族はどのような住宅に住んでおられるのでしょうか。どうしたら良いのか途方に暮れています(40代 女性)

この40代の女性にオンラインで話を伺いました。
女性は、40代の夫と小学2年生の娘、この春小学校に入学する息子の4人暮らし、世帯年収は1300万円ほどだといいます。
東京23区にある社宅に住んでいますが、2年ほど前から新たな住まい探しを始めたそうです。
最初は、子どもが転校しなくて済むように同じ学区内で、家族4人が暮らせる3LDKの70平米ほどの中古マンション(月々の支払いは15万円以内)という条件で探したそうですが、予算に合う物件には巡り会えませんでした。

女性
「不動産業者に行き、ちょっと無理をして予算6000万という条件を伝えると、「このエリアでその予算では無理ですよ」と笑われてしまいました。その後、賃貸も探しましたが、同じ条件だと30万円弱くらいの家賃がほとんどでした。予算内の物件だと1部屋少なくなるうえに、風呂とトイレが一緒で子どもと生活するのに大丈夫かなと思うような物件しかなくて、一旦家探しは諦めていました」

頼みの社宅が…

しかし、そんな家族に再び部屋探しをせざるを得ない事情が起きました。住んでいる社宅が2年後に取り壊されることになったのです。
そこで、慌てて夫が都内の職場に通える範囲として、川崎市周辺も見てみました。でも、こちらも価格は上がっていて、予算内には収まりませんでした。

これまで、UR・都市再生機構の賃貸マンションも含め、20件ほど物件を見てきましたが決まらず、時間ばかりが過ぎる中で途方に暮れているといいます。

女性
「社宅がなくなると聞いた時の衝撃が大きすぎて。今は安く住まわせてもらっていますが、会社からは住宅手当はでないので、賃貸であっても全部自己負担となってしまいます。本当に社宅にいるみなさんは、私たちと同じように困っています」

この家族のケースのように、会社の社宅や寮は減り続けています。
国の調査によりますと、2018年時点でおよそ16万5000戸と30年前の半数近くに減少しています。

企業が手放したこうした社宅などの跡地には、マンションが建てられるケースも少なくありません。企業の側にたてば、これもコスト削減のためやむを得ないのかもしれません。

ただ、そこに住んでいた家族からすれば、会社の都合で住み慣れた場所から出て行かなくてはならない、そして、新たな住まいも簡単には見つからないとすればやるせない思いがします。

女性はインタビューの最後に「子どもは本当に楽しく学校通っていますし、できれば同じ学校に通わせてあげたいのですが、住居のことを考えると難しいですね」と打ち明けた上で、こう続けました。

女性
「教育費に加えて親の介護でお金も必要になると考えると、家だけにお金をかけるわけにもいきません。また、予算に合うような遠方の戸建てや築50年以上のマンションを買っても子どもに負債を残してしまわないかとも思います。みなさんどうされているのでしょうか。あまりに家が高すぎるのではないかという思いもあってすごく富裕層の方は買えるとは思うんですけど、一般的なサラリーマンはどうすればいいのでしょうか」

マンション値上がり 10年で1.8倍にも

この女性が訴えたように、分譲マンションの価格や賃貸マンションの家賃は高騰しています。
私たちも東京など首都圏で高騰し続けている不動産事情を伝えてきました。

国土交通省が毎月公表している「不動産価格指数」をみると、東京都では、2010年のマンション価格を100とした場合、最も直近の2022年(令和4年)11月時点では184.1。この10年あまりの間で、価格が1.8倍以上に上がっていることがわかります。戸建ての132.1と比べても高い伸び率です。これは販売価格でみても、同じ傾向が見られます。

高騰の理由を専門家に聞いた

賃金の上昇が抑えられるなか、家の値段だけ上がり続けている現状では、「いったいどこに住めばいいのか」と思い悩む人たちが増えるのは当然のことに感じます。

なぜ、ここまで価格高騰が続いているのでしょうか。マンション価格の動向を調べる民間の調査会社「東京カンテイ」の高橋雅之 主任研究員にその理由を尋ねると、
「(1)新築マンションの価格高騰と(2)投資家のマンション購入が大きな理由です」という答えが返ってきました。

○マンション価格を牽引する新築マンションの価格高騰
「供給するデベロッパー側の事情として、マンション建設にかかる費用は資材価格の高騰などで値上がりしているため、当然価格に転嫁され1戸あたりの販売価格も割高になります。デベロッパーの立場で、高くても売れる場所はどこかと考えると、都心やターミナル駅の近くの利便性や資産性が高い好立地になります。

今、東京、特に都心にはこうした好立地の場所はほとんどなく希少です。

そのため、土地代も高く、他社と競合して用地の仕入れ値はさらに高額になり、販売価格に上乗せされます。新築が高くなると周辺の中古マンションに需要は分散するため中古も値上がりします。そうなると、今度はさらに賃貸に流れてそちらも高くなるという構造になっています」

○投資家によるマンション購入
「安定的に価格が上昇している中で、投資商品としてマンションを購入する人たちも増えています。異例の高倍率になった晴海フラッグが典型的な例ですが、特に好立地のマンションは、資産を持つ投資家たちにも人気が高いため、買い手が多くなると実際に住むことを目的にした人たちの手に渡りづらくはなります。周辺相場の価格もあわせて上がりやすくなります」

専門家 家族向けの住宅支援を

今の時代、一般的なサラリーマンは住まいをどうすればいいのでしょうか。この疑問について、マンションの市場と流通に詳しい立教大学の田島夏与教授に伺うことにしました。

立教大学経済学部 田島夏与教授
「分譲も賃貸も価格が上がり、社宅も少なくなる中でファミリー世帯が住まいを手にしづらくなっているので、子育て支援の意味でも企業や行政によるファミリー世帯向けの住宅支援や手当を支給する仕組みがあってもよいのではないか。

一方で、相続などの問題で空き家やマンションの空き部屋など市場に出ておらず、塩漬けになっている住宅は大量にある。これらの住宅を市場に出して、必要とする世帯が借りたり買って住むことができる制度を早急に整える必要がある」

不動産にまつわるみなさんの体験・情報を

今回投稿を寄せてくれた女性は「きっと同じように家を探し、苦しんでいる一般家庭の方は多いのではないでしょうか」と話していました。
本当にそのとおりだと思います。東京は人口減少が続く地方と違い、今でも人口の流入が続きます。そうした受け皿として、今も多くの人たちがマンションという住まいを必要としながら、供給が追いつかず、価格が高騰して手が出せない事態を招いています。
ただ、その一方で、都心でも空き家の問題は深刻です。どうしてこんなミスマッチが起きてしまうのでしょうか。
空前の高騰が続く東京の不動産で今、何が起きているのか。私たちは引き続き皆さんからの情報や意見をもとに取材していきます。
ぜひこちらから投稿をお寄せください。

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