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東京 新宿 障害のある子どもたちの写真展 テーマは “ありのまま”

  • 2022年10月13日

9月、東京・新宿で障害のある子どもたちの写真展が開かれました。テーマは “ありのまま”。どの子もポーズを取ったりしていません。なぜ、このようなテーマが設定されたのか。そして、カメラマンたちは、“障害”にどう向き合ってシャッターを切り、どんな写真を出品したのでしょうか。
(首都圏局/記者 鵜澤正貴 )

コンセプトは “ありのまま”

写真展は、9月、多くの人が行き交う新宿の商業施設の一角で開かれました。
飾られたのは、知的障害や自閉症がある子どもたちの写真25枚です。

大きなボールに乗って笑う女の子。

お菓子の袋を前にして、大きな口を開ける男の子。

音に敏感で、耳をふさいでいる男の子。

コンセプトは“ありのまま”
どの写真も、子どもたちの日常の姿を切り取ったものとなっています。

来場者

リラックスしている表情とか、そういうのがいいなと思いました。見ていて、こういう子なのかなとか想像してみたり、すてきな写真展だと思います。

来場者

障害児のモデルがいるのを初めて知ったので、びっくりしました。明るく素直に笑っている写真が多くて、思わずはにかんでしまうような写真が多かったのが印象的です。

企画した母の思い“知ってほしい”

企画したのは、都内で会社を経営する内木美樹さんです。
もともと英会話のビジネスをしていましたが、去年から、障害児の写真モデルの事業を始めました。
そのきっかけになったのは、知的障害がある9歳の長男の子育ての経験でした。

内木美樹さん
「息子に障害があると分かった時、本当にショックで、目の前に見えていたはずの彼の明るい未来みたいなものが一気になくなって、本当に絶望したんです。でも、実際に育ててみたら、こんなに幸せなことがある、楽しいことがあるって、一気に世界が広がったんですね。障害者にマイナスなイメージを持つ方々にも、障害があってもこんなに明るいんだ、こんなに楽しそうなんだっていうのを知ってもらうにはどうしたらいいかなって考えて、出てきたのがこの障害児モデルなんです」

学生カメラマン 参加前は不安も

内木さんは事業を広く知ってもらうため、クラウドファンディングを活用して、撮影会と写真展を企画しました。
撮影会には、小学生から社会人まで21人のカメラマンが参加しました。

その中の1人、東京工芸大学1年の栗原みのりさんです。
栗原さんは、この春、写真学科に入学。大学で写真展の存在を知り、勉強になると思い、参加を決めました。
こうした写真展への参加は初めてでした。
障害のある子どもとは、あまり接したことがなく、参加前は不安に感じていました。

栗原みのりさん
「参加する前はとても緊張していて、案内にも、フラッシュを怖がるとか、クルクル回っているとか、声を出しちゃうかもしれない、何が起こるかわかりませんみたいなことが書いてあって、当初すごくびっくりして私の方が動揺してしまったらどうしようって、知らないがゆえに、不安はありましたね」

“身構える必要なんてなかった”

しかし、いざ参加してみると、目の前に現れたのは、無邪気に遊ぶ子どもたち。
その様子を撮影するうちに、不安は次第に薄れていったと言います。

栗原みのりさん
「会場の雰囲気はすごく和やかで、中には泣いちゃうみたいな子もいたんですけど、総じてとっても明るい雰囲気で、何も心配する必要なかったなって。自分が身構える必要なんて何もなかったんだなっていう風に撮っていて思いました」

“一瞬心が通い合った”1枚

40分程度の撮影会の間に、栗原さんがシャッターを切ったのは約140枚。
この中から、写真展に出品する1枚を選ぶことになりました。

選んだのは、モデルの1人、大石睦人くんを撮影した写真です。
睦人くんは6歳。自閉症と中度の知的障害があります。
撮影会当初は、運営に関わっていたお母さんが近くにおらず、ご機嫌ななめだったようです。栗原さんは、ほかのカメラマンたちがあまり近づいていなかったように感じたと振り返ります。

楽しそうに遊ぶ子どもがいる中で、そんな睦人くんの様子が気になり、睦人くんのお父さんの幸勇さんとともに見守っていました。しばらくすると、初めて栗原さんに目を合わせてくれたのです。

栗原みのりさん
「一瞬気になって見てくれたのがうれしかった。何か一瞬心が通い合ったみたいな、これもコミュニケーションが取れているっていうことなんだっていう風に気づかされた1枚だったりします。実は顔にちゃんとピントが合っていないんです。それでもこれを選びたかった」

障害児の親にも うれしい気づき

栗原みのりさんと睦人くんの父親 大石幸勇さん

写真展を訪れた栗原さんは、睦人くん親子と再会しました。
幸勇さんに、写真の印象を尋ねました。

大石幸勇
さん

「楽しいのが目の前にあって、みんなと一緒に遊びたいんだけど、自分のさまざまな特性から、みんなと一緒にいられない。遠くからうらやましそうに見ている感じなのかなと思ってて」

栗原みのりさん

本当に0.1秒くらいチラッと見た瞬間なんです。機嫌がちょっと揺らいでいる中でも、睦人くんの中で私をカメラマンとして認識してくれた瞬間なのかなって。うまく撮れなかったかなと思っていたんですが、あとで確認したら、たまたま撮れていたんです。

 

そういう目線で見てはいなかったというか、みんなうらやましそうに見ているのかと思っていたけど、こっちを見ていたのか。おもしろいですね。

幸勇さんは、睦人くんをモデルに参加させた思いについて次のように語っていました。

睦人くんの父親 大石幸勇さん
「息子は小さい時から、写真を撮られるとすごく喜んだので、モデルならできるのではと思っていました。将来、作業所などで働く道もありますが、収入は低く、社会には“それが当たり前だ”という雰囲気が蔓延しているのも問題だと感じています。障害者の可能性がもっと広がり、評価してもらえる社会を作り上げていきたいです。いずれは、息子たちが“障害児モデル”ではなく“モデル”として活躍できる日を夢みています」

“みんな違って当たり前の社会に”

写真展を企画した内木さん。
カメラマンたちの写真を見て、主催者としての思いが伝わったと感じていました。

内木美樹さん
「カメラマンたちから写真が届いた時、泣いてしまいました。当事者でないとわからない思いをカメラマン一人ひとりが受け取って、すてきな写真を撮ってくださったんだなって感じて、本当にうれしかったです。どんどん知る機会、理解する機会が広まって、障害のある子もない子もグレーの子もいる。算数が得意な子も、国語が得意な子もいる。みんな違って当たり前だよねって、多くの人が本当に心から言えるような社会、みんなが生きやすい社会を目指して、活動を続けていきたいです」

“心を込めて撮りたい”

睦人くんを撮影した栗原さん。そうした関係者の思いを、カメラマンとして受け止め、写真を通じて社会に広げていきたいと、思いを新たにしています。

栗原みのりさん
「撮影会で強く感じたのは、子どもたちの楽しい気持ちや揺らいでいる気持ちは、障害の有無でかわらないということです。そうした、かわらない気持ちが伝わってくる写真を撮影するには、カメラマンがその思いを感じていなければいけないと思いました。これからも、心を込めてシャッターを切り、そして思いが力を伴って、写真を見る人たちに伝わってほしいです」

取材後記

栗原さんは取材の際、私に「昔、不登校だった時期もあって、生きづらさを感じてきた」と明かしてくれました。障害の有無に関わらず、誰しも生きづらさを感じることはあります。互いを知らないと不安を感じますが、少しでも知ろうとする、理解し合おうとする、歩み寄りの姿勢を持つことで、誰もが生きやすい“共生社会”に近づいていくのではないかと、今回の取材であらためて感じました。

写真展 開催スケジュール(予定)
▼10/13~17 新宿マルイ本館
▼10/22~30 アトレ川崎
▼12/21~27 新宿高島屋

  • 鵜澤正貴

    首都圏局 記者

    鵜澤正貴

    2008年(平成20年)入局。秋田局、広島局、横浜局、報道局選挙プロジェクトを経て首都圏局。

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