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神奈川県警で30年以上にわたり山岳遭難救助に携わった警察官の思い

  • 2022年7月5日

神奈川県警には30年以上にわたって山岳遭難の救助に携わる警察官がいます。これまでに700件を超える山岳遭難に出動し、1000人以上を救助してきました。“経験と技術を後継者に伝えたい“と語る警察官の思いを取材しました。
(横浜放送局/記者 尾原悠介)

県警で唯一の「技能指導官」に

神奈川県西部、丹沢山地のふもとにある三保駐在所です。相田一己 警部補(56)は、ここに30年近く勤務しています。

高校卒業後に警察官になった相田さん。刑事にもスカウトされましたが、人を助けたいと山岳救助の道に進みました。

相田さんには忘れられないことがあります。25年前、丹沢山地の玄倉川流域で起きた事故です。男性が増水した川に流されてロープで宙づりになり、死亡しました。相田さんは水が引くまでの3日間、現場に近づくこともできませんでした。

神奈川県警察 相田一己 警部補
「下からもいけない。上流からもアクセスできない。大増水のなか、わたしたちは接近できなかったんですね。結局のところ何の手出しもできずに帰ってくるっていう…」

 

富山県警の山岳警備隊で研修を受けていたころ

力不足を痛感した相田さんはよくとし、北アルプスを抱える富山県警の山岳警備隊で研修を受けました。体を固定するロープや金具の使い方などを、基礎から学び直しました。
その後も最新の技術や装備を学び続け、山岳救助のプロフェッショナルとして県警では唯一の「技能指導官」に認定されました。相田さんは、1件も現場を逃さずに行くというスタンスで業務にあたってきたといいます。

“1人でも多くの人を救ってほしい”

7月、丹沢山地で県警の山岳救助訓練が行われました。相田さんは指揮官として、若手警察官の指導にあたりました。滑落して動けなくなった登山者を想定し、80キロの担架を運びます。2泊3日、全長30キロ余りの過酷な行程です。

相田さんが何よりも伝えたいのは、自分たちの安全を確保することの大切さです。細い山道を運ぶとき、担架の横に立つと滑落してしまうおそれがあります。担架を運ぶことに集中しすぎると周りが見えなく、谷に落ちる可能性があるので注意するよう呼びかけました。
体力を無駄に使わないことも大切です。

相田一己 警部補
「人を助ける以上は、まず自分の身を守らなければいけない。最後の最後、要の安全管理というものを徹底していかないと人を助けられない」

ことし57歳になる相田さん、定年までに後継者を育て、1人でも多くの人を救ってほしいと願っています。

参加した
警察官

今回の訓練はいままででいちばんつらかったです。いかに要救助者を安全に、わたしたちも安全にするかが山で必要となれる隊員になりたいです。

 

相田一己 警部補
「私もやれることは後継者育成しかありませんので、技術をあとわずかな時間の中でどれだけこう若い人たちに伝えていけるかということを活動の重点に置いて仕事をしていきたい」

  • 尾原悠介

    横浜放送局 記者

    尾原悠介

    平成30年入局。大阪府警担当を経て現在は神奈川県警を担当。

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