神奈川県内を流れ、相模湾にそそぐ酒匂川。古くから農業用水や生活用水として利用され、川から流れてくる栄養で、相模湾の魚たちは育っています。その上流域に位置する神奈川県山北町の小学生たちが下流域に位置する小田原市の小学校の同級生たちと、川を通じた山と海のつながり、そして地域のつながりについて一緒に学びながら交流を深めました。
(首都圏局 記者 平岡仁)
県の教育事業の一環として6月9日に行われた「交流学習」に参加したのは、山北町の川村小学校と小田原市の山王小学校の4年生合わせて88人です。酒匂川の上流域にある川村小学校の児童たちが下流域にある山王小学校を訪問して、交流学習に臨みました。新型コロナの影響で、さまざまなイベントや交流の機会が減る中、それぞれの小学校の子どもたちはこの日を心待ちにしていました。
体育館に集まった子どもたちは、神奈川県真鶴町を拠点に海の自然や生態系の仕組みについて教育普及活動を行っているNPO法人「ディスカバーブルー」のメンバーから、浜辺にある様々な漂着物が、どのようにやってくるのか話を聞きました。
講師役のメンバー
「漂着物は波や潮の満ち引きや風の力などによって、浜辺に打ち上げられます。近海からは魚や海藻、貝殻などが打ち上げられるし、海流によって、遠い海や外国からそこに住む生き物や椰子の実、ときには深海から深海魚が打ち上げられることもあります」
講師役のメンバーは、川を通じて上流域の山の木の実や枝などさまざまなものが下流域から海に運ばれ、浜辺に打ち寄せられることや、川を通じて地域がつながっていることなどを説明しました。
このあと、子どもたちは浜辺に行き、貝殻など漂着物を拾って調べたり観察したりする「ビーチコーミング」を行いました。見つけた漂着物がどこから流れてきたのかなど、想像して楽しそうに話す子どもたちもいました。
子どもたちが拾ったものの中には、きれいな石や貝殻などに混じって、川に生えている水草やゴルフボールやクルミなどさまざまなものがありました。中には、ペットボトルやお菓子のプラスチック包装など誰かが捨てたと思われる人工物もありました。NPO法人のメンバーによると、浜辺によって流れ着くものは少しずつ違っていて、小田原の浜辺は、酒匂川が近いことから、上流域の山などから流れてきたと見られる木の実や枝などが比較的多いといいます。
山王小学校 土田崇朝教諭
「新型コロナの影響で、交流の機会が減る中、子どもたちが生き生きと交流する姿が見られて良かった。自分たちの暮らしが、ほかの地域ともつながっていることを学んでほしい」
川村小学校によりますと、ことし11月には山王小学校の子どもたちが川村小学校へ訪れ、ダムの見学など上流域の暮らしなどを学ぶことが予定されています。初めて出会ったのに、楽しそうに一緒に学び、交流する子どもたちの姿を見て、「川」を通した地域のつながりは、地理的なものだけでなく、人と人のつながりも生み出すのだと改めて感じました。