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通学路の安全対策 事故を起こしたドライバーが語る 潜むリスク

  • 2022年6月1日

去年、児童5人が死傷した千葉県八街市の交通事故をきっかけに各地で通学路の安全を高める取り組みが進められていますが、ドライバーの視点から通学路の問題を考えます。
通学路で子どもと接触する事故を起こした男性を取材しました。
(千葉放送局/記者 渡辺佑捺 )

通学路で小学生と接触

船橋市に住む鈴木唯将さん(47)です。
3年前、軽乗用車を運転中、市内の通学路で小学生と接触する事故を起こしました。

鈴木さん

わたしが車で来たときに(小学生が)かけっこして、出会い頭でぶつかっちゃった感じですね。

現場は住宅街を通るセンターラインのない生活道路。鈴木さんはスピードを落としていましたが、左から出てきた小学5年生をよけきれずに接触。子どもは転倒し、軽いけがをしました。

事故の原因は前をよく見ていなかったことでしたが、道路の構造にも危険が潜んでいたと考えています。

事故当時の現場です。子どもが出てきたのはこの壁の裏。ドライバーにとって子どもの動きを捉えるには難しい構造でした。

 

完全に目隠しの状態になっていて、子どもからも車からもでてこないと見えない状態です。

認識しづらい校門

さらに、危険性を高めていることがあるといいます。

画面奥が小学校

子どもが出てきたこの細い通路、実は小学校に通じる校門です。地元ではよく知られていますが、初めて通るドライバーにとって、ここに校門があるとは認識しにくいといいます。

 

ここに門扉がある、小学校の校門があるってことがまず認識がなければ、やはり気をつけようがないと思います。

事故前(左) 事故後(右)​​​

船橋市は事故のあと、壁の一部を撤去し、フェンスに変更。以前に比べて子どもたちの動きを確認しやすくなりました。

しかし、校門の存在を知らせる看板は、ドライバーからは見えにくい位置に。鈴木さんは、ドライバーの視点も対策に取り入れてほしいと話しています。

 

本当に危険な場所ってここだけじゃなくてもっとたくさんあると思います。対策をどんどん練って、できるだけ改善していってほしいと思います。

“心にゆとり” 事故後に始めたこと

通学路で事故を起こしてしまった鈴木さん。事故の後、始めたことがあります。

 

数珠です。常に安全運転を意識するって意味も込めています。

仕事で運転中、取引先に急がなければならない時などは、この数珠を見て亡くなった祖父を思い浮かべ心を落ち着かせているといいます。
鈴木さんは、危険な通学路が早くなくなることを願っていますが、心にゆとりを持ってハンドルを握ることが大切だと考えています。

鈴木さん
「気持ちにゆとりを持つということですが、運転は感情が出ると思います。感情の乱れとかが、いちばん出てしまうと思うので。そういうときに一息置いて落ち着けるよう心構えをもって運転できればと思います」

交通心理学に詳しい実践女子大学の松浦常夫教授によりますと、家族など自分にとって大切なものを思い浮かべることは心のゆとりにつながるということです。鈴木さんの場合、数珠でしたが、写真やイラストなど人によって様々で、ただ運転の妨げにならないよう工夫することが大切だということです。

取材後記

鈴木さんが事故を起こした現場を私も訪れたのですが、あそこに校門があるとは気づきませんでした。現場は県道の抜け道になっていて、地元以外のドライバーもよく通っているということで、校門の存在を知らずに通過している危険性は今もあるわけです。船橋市は「看板の設置方法など対応を検討したい」としています。
今回、鈴木さんは、事故を起こしてしまった自分の経験が少しでも役に立てばという思いから取材に応じてくれました。通学路の安全をどう高めるのか。行政はドライバーの視点も生かしながら、対策を進めてほしいと思います。

 
  • 渡辺佑捺 

    千葉放送局 記者

    渡辺佑捺 

    2021年入局。警察・司法を担当。

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