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長岡特産 大口れんこんがバングラデシュへ?母国の貧困救う夢

  • 2022年5月11日

新潟県長岡市特産の「大口れんこん」。およそ100年前から栽培されているといわれています。このれんこんにバングラデシュ出身の男性が惚れ込み、れんこん農家で修行して栽培方法を学んでいます。バングラデシュとれんこん、という不思議な組み合わせにひかれ、私は長岡のれんこん畑へと向かいました。
(新潟放送局 カメラマン/小菅 悠人)

バングラデシュにはない、れんこん

「うまーい!」

モハメッド・ヌルル・エラヒさん(55歳)。バングラデシュ出身です。

れんこんは日本に来てから初めて食べましたが、シャキシャキの食感と淡泊な味わいが癖になり、いまでは大好物となりました。さらに、エラヒさんはなんと、このれんこんを母国バングラデシュに持ち帰り、食文化として根づかせたいというのです。

えっ、と驚く話ですが、エラヒさんのこれまでを振り返ると、その理由が透けて見えてきました。

バングラデシュと日本を愛し 人を思う

エラヒさんは小学生の頃にサムライの映画を見て以来、いつか日本に行きたいと思っていました。22歳のときIT技術を学ぶために来日して以降も、日本の文化への興味と熱意は冷めることなく、居合いや空手に熱中しました。いまでは居合いは師範、空手は九段という、人に教えることが出来るほどの腕前です。

エラヒさんが無類の日本好きだといっても、母国バングラデシュへの思いは消えることはありません。妻の美砂子さんと結婚し、自動車部品を作る会社に勤めながらコツコツと貯めたお金で、母国バングラデシュの郊外、ナマプティア村に夫婦で学校を作るなど、私財を投じて母国の支援を続けてきました。

母国のため、そして、人々の役に立ちたい・・・エラヒさんの心の中には常にそんな思いがあるようです。

エラヒさん
「私は体が元気でさえあればいいと思っています。人に夢や希望を与えることができれば、それ以上のことはないです。お金ではその喜びは買えません。その喜びは何物にも代えがたいものです」

バングラデシュでも育つかもしれない

もう長いこと日本に暮らすエラヒさんですが、地元で毎年美しく花を咲かせるハスが、れんこんの花だと知ったのは昨年の5月頃のことでした。確かに畑でれんこんが育つ姿を見る機会はめったにありません。このことを知って、エラヒさんは目を輝かせました。

というのも、バングラデシュでは、ハスと同じように水の中の土に根を張る「すいれん」が盛んに栽培され、国の花にも指定されています。バングラデシュは長岡より気温も高く、このハスの栽培には適しているのではないかと、エラヒさんは考えるようになりました。

バングラデシュでは急速に経済成長を続ける一方、地方の農村部などはまだまだ貧しく、子ども達は労働力とみなされて十分な教育を受けることがかなわない地域もあるといいます。

これから先、一過性の支援だけでなく、現地の人々が自立して収入を得られる仕組みはないか・・・そんな思いでいたエラヒさんにとって、ハス(れんこん)の花との出会いは願ってもないことでした。ハス(れんこん)を栽培することが出来れば、地域や国が豊かになる可能性があると考えています。

エラヒさん
「れんこんの新しい文化が生まれると、人の働く場所が生まれます。バングラデシュの人々は、れんこんを今まで見たことも食べたこともなく、最初はなかなか大変だと思いますが、たくさんの人の仕事が見つかり、すごくいいと思います」

地元の人たちも応援

居合いも空手もそうだったように、好きなものにはまっしぐらなエラヒさん。その後、3ヶ月ほどして地元のれんこん生産組合の組合長のもとに通い始めました。栽培方法だけでなく、市場のマーケティングなどについても学びを深めるなど、活動を進めています。

 いまエラヒさんは、れんこんに興味のあるバングラデシュの若い世代を長岡に呼び寄せて、栽培技術を一緒に学び、持ち帰ってもらおうと考えています。そうした人たちの生活拠点にしようと、去年12月には長岡市の空き家を買い取り、母国の若者達を受け入れるための準備を始めました。地元の人たちも空き家の清掃や修繕を手伝うなどして、エラヒさんの活動を支援しています。

大口れんこん生産組合 組合長  高橋秀信さん
「れんこんを作るのはなかなか大変ですが、夢ではないと思います。ひとつずつ課題をクリアしていく中で、長岡のれんこんがバングラデシュで花開いたとしたら、とても嬉しいです」

もちろん、エラヒさんは料理方法の研究にも余念がありません。まずはバングラデシュの国民食ともいえるカレーに混ぜてみようと、試行錯誤を続けています。

実は、エラヒさんは来日してから3年ほどカレー店を営んでいたことがある「カレーのプロ」。れんこんに合うようにスパイスを調合したり、れんこんの食感が生きるように下ゆでの時間を短くしたりするなどして、現地の人々の口に合うよう工夫を続けています。地元の人にまだなじみの薄いれんこんの味や食感に早く慣れ親しんでもらうため、その他にも様々な料理の試作、試食を続けています。

エラヒさん
「最初にれんこんを知ってもらい、食べてもらう。栽培して挑戦してみます」

試験農場を作りたい

エラヒさんは寝ても覚めてもれんこんのことを考えています。先月はついに自宅の裏にれんこん畑を作ってしまいました。組合長の高橋さんに教えてもらいながら、きょうも栽培に励んでいます。

エラヒさんは近い将来、バングラデシュに試験農場を作り、実際に現地でれんこんを栽培し、さらなる課題や改善点を見いだしていきたいと話しています。

エラヒさん
「まずは自分が動かなければ始まらない。ちょっと少し時間かかるけど、れんこんを食べる文化をどんどん広げていきたいです」

  • 小菅悠人

    新潟放送局 カメラマン

    小菅悠人

    2021年入局 趣味は登山と酒蔵巡り 好きなれんこん料理はれんこんステーキ

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