再来年(2024年)4月から土地や建物を相続した際、登記をすることが義務化されます。背景には全国各地で所有者がわからない土地が次々に出ていることがあげられています。相続登記の手続きとは、どういったものなのか、自分で手続に取り組んだ経験者の話や、義務化を前に煩雑な手続きを支援しようという動きを取材しました。
(首都圏局/記者 金子泰明)
相続する際に登記手続きを行わないことなどが原因で、所有者がわからないまま放置されている土地が増えていることから、再来年4月から登記が義務化されます。
義務化に伴い、所有権の取得を知った日から3年以内に登記を申請しなければ10万円以下の過料が科せられます。
一方、申請の負担を軽減する制度も設けられ、相続人であることを証明する戸籍謄本を法務局に提出すれば過料が科せられることはありません。
ただ、その後は、これまでどおりのさまざまな手続きが必要です。
「相続登記」と聞くと、経験していなくても「なんだか煩雑なイメージ」という方が少なくないのではないでしょうか。
かく言う私(記者)も未経験。取材してみると、素人にとっては、とても複雑なように感じました。
例えば、配偶者と2人の子どもが家と土地を相続する場合。
亡くなった人(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍や不動産の固定資産評価証明書など、16種類以上の書類を集めなければなりません。
さらに「登記申請書」や「相続関係説明図」など、複雑な書類を作成する必要があることもわかりました。
このような相続登記に自力で取り組んだ女性に話を聞きました。
横浜市鶴見区の飯島尚美さん(54)。10年ほど前に父親が亡くなった際、相続人となった母親の手続きを引き受けました。
もう2度とやりたくないというのが、すべて終わってからの印象です。
当時、会社に勤めていた飯島さん。仕事もこなす中でもっとも大変だったのは、亡くなった父親が、生まれてからどこに本籍を置いてきたのか、戸籍を集めることだったといいます。
左:母親 右:父親
都内の区役所や神奈川県内の市役所に何度も出向き、最終的に手続きを完了するまでにはおよそ3か月かかりました。
心身ともにつらい状態で進めていく上で、とてもしんどい部分がありました。
「相続の専門家」とされる司法書士。
「東京司法書士会」は法務局などと連携して支援を始めています。義務化を前に無料の電話相談窓口を設け、専門知識を持つ司法書士などがワンストップで対応しています。
司法書士には登記の代行をまるごと依頼することも可能で、実際に依頼すれば、一定の費用がかかります。東京司法書士会ではトラブルを防ぎながら相続人の状況に適した形での相続につなげるとしています。
東京司法書士会 清水輝明副会長
「『登記とはどんなものなのか』、『義務化はどうしてなのか』という質問のほか、『費用はどれくらいかかるのか』といった質問が多く寄せられています。何を相談していいのか迷っている方もいると思います。ぜひ、気軽にご相談いただきたい」
東京司法書士会などが設ける無料の電話相談窓口は、今後も定期的に開催する予定だということです。
一方、自力で手続きしようとする人向けの新サービスも出てきています。
東京・千代田区にあるベンチャー企業は、「登記申請書」など複雑な書類を自動的に作成するシステムを開発しました。
まず、相続人が名前や生年月日、家族構成など基本的な情報を、システム上の所定の書式に入力。
書類を自動作成 システムの入力画面
その後、相続人や土地が複数の場合は、その割合などを決めて選択します。そうすると、作成が難しい書類が自動で出力されます。
エイジテクノロジーズ 塩原優太社長
「相続は悲しい状況の中で対応しなければなりません。このサービスでは、難解な書類作成を人が考えなくても、調べなくても簡単にできるようにしました。テクノロジーの強さというのが、手続きの領域においてはかなり発揮できていると思います」
司法書士や企業の取り組みのように、相続登記の義務化に向けては今後もさまざまな支援の動きが出てきそうです。
もし、土地や建物の相続登記に自分が対応しなければならなくなったら…。最適な形にするにはどうすればいいのか、この機会に検討してみるのもいいかもしれません。