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大麻草由来CBD入りのグミやビールって大丈夫?健康影響は?

  • 2022年4月7日

「大麻草から抽出したCBDが入っているんです」
ある日飲食店で、新しく入荷したというビールを紹介されました。「最近人気ですよ」と店主。気になって調べてみたところ、すでに国内ではCBDを使用したさまざまな製品が流通していることがわかりました。
でも、大麻草由来の成分って飲んでも大丈夫なの?そもそも違法じゃないの?気になる点を専門家に聞いてみました。
(首都圏局/ディレクター 横山紗也香)

大麻草由来の成分「CBD」とは?

渋谷の街を歩いていると、たばこ屋ではCBD電子たばこ、スーパーではCBD入りグミや美容パック、化粧品などが売られているのを見つけました。
グミの価格は10粒で2000円~と、お菓子としてはかなりお高めです。

街中で買ってきたCBD製品

インターネットの通販サイトでも入手でき、「リラックス時間に」「美容をサポート」などといった効果がうたわれています。人間用だけでなく、犬や猫のペット用のCBDオイルもありました。
 

CBDとは
「カンナビジオール」の略称で、大麻草から抽出されるカンナビノイドという成分のひとつです。国立精神・神経医療研究センター依存性薬物研究室元室長の舩田正彦さんによると、幻覚作用や依存性がなく、不眠や不安状態の緩和に一定の効果があるという報告があるといいます。しかし、臨床研究が小規模であることや、長期的な使用による影響については臨床研究が十分ではないため、効果についてはさらなる研究が必要だということです。
現在は、健康食品などとして店頭やインターネットで販売されている状態です。

CBD入りメニュー出すカフェも

さらに、CBDが入った飲食メニューを提供しているお店も。

渋谷区にある若者に人気のカフェで「CBDコーヒー」を注文したところ、運ばれてきたのは至って普通のコーヒー。そこへ、店員がCBDのオイルを3滴ほど垂らしました。

飲んでみましたが、味や香りに違和感はありません。CBD入りのスイーツもあり、そちらも普通のチョコレートケーキの味でした。
食後の体調に大きな変化はありませんでしたが、気分がぼんやりするような感覚がありました。とは言え、甘いものを食べた満足感ともあまり区別がつきませんでした。

このカフェを運営する企業では、ほかにもCBD入りのチョコやビール、電子たばこといった製品を開発しています。都会のストレスフルな環境で過ごす人にニーズがあるのではないか、と考えたことがきっかけだったといいます。

店舗事業部 佐々木 祐穂さん
「大麻草由来ですが、違法な成分は含まれておりません。 CBDを使った製品の販売は2020年末ごろから始めました。若い方を中心に幅広い世代に好評をいただいており、売り上げは好調です。リラックス効果がある成分としてSNSで口コミが広がり、足を運んでくださるお客様も多いです」

違法じゃないのはナゼ?

大麻(マリファナ)は違法薬物だったはずです。大麻草由来の成分にもかかわらず、なぜCBDは「違法ではない」のでしょうか。

厚生労働省によると、現在、大麻についての規制は「大麻草の部位」で定義されています。
大麻取締法が制定された当時(1948年)は、大麻の有害作用がどの物質によってもたらされるか判明しておらず、部位で定義して制定されたのです。

「花穂」や「葉」など複数の部位が規制対象になっている一方で、「成熟した茎と種子」は大麻に該当しないとされています。成熟した茎や種子から抽出するCBDは、違法ではないというわけです。

“チル”を求める若者 コロナ禍も影響?

それにしても、なぜ大麻草由来の成分が入ったCBD製品を求める人が増えているのでしょうか。
その背景には、現代の若者の心理とコロナ禍の影響があるといいます。“チル”と呼ばれる感覚を求めている人が増えているのだそうです。
(チル…英語のChill outに由来し、「落ち着く」「冷静になる」などの意味で使われている)

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子さん
「デジタルネイティブである現代の若者は、SNSで常時誰かとつながっているストレスから、ひとりで過ごす時間も欲しています。“チル消費”といわれる、サウナやキャンプなどリラックスできるモノや体験にお金を使う傾向があります。
さらにコロナ禍で、家にひとりでいる時間が増え、感染しないよう気を張ることも多くなりました。そうしたストレスの発散や、気分転換のツールのひとつとしてCBD製品の需要が増えているのではないかと考えられます」

健康への影響やリスクは?

東京都消費生活総合センターに寄せられたCBD製品についての相談は、2020年度に316件と急増。2021年度は減少傾向で64件となっています。
多くはCBDが入った電子たばこの定期購入に関する相談ですが、健康被害の相談も2020年度に11件、2021年度に5件ありました。
内容は「気分が悪くなった」「湿疹が出た」「眠気がある」「頭痛がする」といったものでした。

このような現状を踏まえ、薬物依存について詳しい舩田正彦さんに話を聞きました。舩田さんはCBDを含む製品に関して次のように指摘します。

国立精神・神経医療研究センター 依存性薬物研究室 元室長 舩田正彦さん
(現 湘南医療大学 薬学部教授)
「医薬品であれば臨床研究をもとに用法・用量が定められ、厳密にコントロールされます。しかし、現在販売されている医薬品以外のCBDを含む製品については、その用法・用量に関して明確な規定が不明なものがあります」

舩田さんによると、CBD製品を使用する際に懸念されるポイントは以下の3点です。

1) CBDを含むとうたっているが、実際に成分が入っているか
2) 幻覚作用などがある成分が入っていないか
3) 有機溶剤や重金属など、人体に害を及ぼす不純物が入っていないか

その上で、体調に異変があった場合は、すぐ医療機関などに相談するよう呼びかけています。

また、CBDを摂取すべきでない人もいるといいます。

「CBDの使用に関してはアメリカの食品医薬品局(FDA)から注意勧告が出ており、妊娠中や授乳中の女性にCBD製品の使用を避けるよう警告しています。臨床実験の事例が少なく、長期間の使用についてリスクが明らかでないためです。子どもに対しても同様で、適切な使用法などに不明な点があるので注意が必要です」

前出のカフェでは、18歳未満の場合CBDメニューの注文はできない決まりで、過剰摂取を防ぐためコーヒーのおかわりの提供は1杯までとしているとのことでした。

幻覚成分の混入事例も…

CBD製品の安全性に懸念が生じる事態も起きています。
国内で流通しているCBD製品から幻覚作用のあるTHCが検出されるケースが複数出てきているのです。
 

厚生労働省 監視指導・麻薬対策課 担当者
「CBD製品から有害成分のTHCが検出された例についてこれまで3回厚生労働省ホームページで発表しています。THCが検出されたCBD製品は、大麻取締法上の『大麻』に該当する疑いがある製品であるため、手元に商品が残っている販売業者、購入者に対しては、最寄りの麻薬取締部、薬務主管課、保健所などに提出するようお願いしています」

THCとは 規制めぐる検討

大麻についての規制は「大麻草の部位」で定義されていますが、その後研究が進み、幻覚作用を起こす有害な成分はおもにTHC(テトラヒドロカンナビノール)であることが分かってきています。取り締まりを行う際には、規制部位かどうかを判断する必要がありますが、近年ではTHCが検出されるかに着目して規制対象かどうかを判断し、取り締まっているのが実態です。
厚生労働省では、昨年6月に公表した「大麻等の薬物対策のあり方検討会」のとりまとめを踏まえ、今後の大麻規制のあり方について、大麻取締法の改正も視野に入れて検討する方向だとしています。

事業者などによると、製造過程でTHCが混入した海外の製品が輸入されたのではないかといいます。CBD製品の輸入にあたっては、大麻取締法の「大麻」に該当しないという証明書や、成分分析書の提出が求められ、厚生労働省でも市場の買い上げ調査を行っているものの、製品すべての安全性をチェックすることは困難だといいます。

課題は安全性の確保

CBD製品を販売する事業者の間では、いま、製品の安全性を事業者自身が担保できる環境を作っていくための動きが始まっています。

CBD議連総会で発表する柴田さん

CBD原料の卸売りなどを手がけている会社の社長、柴田耕佑さんです。
昨年発足したCBD議連(カンナビジオールの活用を考える議員連盟)の総会で発表を行うなど、法整備に向けた活動を行っています。

柴田さんの会社では、税関に必要書類を提出するほか、輸入前・輸入後・最終的に製品になった時点の計3回、幻覚作用のあるTHCが混入していないかチェックしているといいます。
しかし、事業者によっては検査体制が不十分なところや「気分がハイになる」など不適切なアピールをして販売している現状があり、合法ドラッグのような認識が広がってしまうことに懸念を抱いています。

柴田耕佑さん
「安全性をどのように確保するのかは業界としても大きな課題です。国内でも事業者が守るべき成分の基準値や、安全性の基準が定められるなど規制が進み、適切な管理が行われることを望んでいます。事業者がガイドラインを徹底することも重要だと考えます」

CBDについては、さらに研究や規制の検討が進んでいくと見られます。今後の推移を注意深く見守る必要がありそうです。

  • 横山紗也香

    首都圏局 ディレクター

    横山紗也香

    2017年入局。水戸局を経て2021年から首都圏局。若者や外国人、ダイバーシティーなどをテーマに番組を制作しています。

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