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多摩川スカイブリッジ開通 川崎と羽田が徒歩10分 期待と工夫は?

  • 2022年3月16日

3月12日、東京・大田区の羽田空港周辺と川崎市をつなぐ橋、「多摩川スカイブリッジ」が開通。橋には新しい産業創出への期待が込められている一方で、環境を守るための工夫もこらされています。(横浜放送局/記者 佐藤美月)

2つの国家戦略特区を結ぶ

3月に開通した多摩川河口に架かる橋、「多摩川スカイブリッジ」(全長675メートル)
建設費用は300億円で、川崎市と神奈川県が、およそ90億円を負担しました。

橋がつなぐのは、川崎市と東京・大田区にある2つの国家戦略特区です。
川崎市側にあるのが医療産業の集積地、「キングスカイフロント」。
対岸の羽田空港周辺で開発が進められているのが「ハネダグローバルウイングズ」。
来年度には、最先端の医療施設が誘致される計画です。

川崎市と大田区、それにそれぞれの事業者は、連携して地域一帯を新産業創出の拠点にしたいと意気込んでいます。

川崎市 
福田紀彦市長

2拠点が有機的につながる連携強化の形できたので、一体となったエリアになる意義は大きい。ここからオープンイノベーションが次々生まれてくるのを期待している。

新産業創出への期待

橋の開通には、特区に集まる最先端の企業などからも期待が集まっています。
川崎市側にあるこの研究施設。1ミリのおよそ2万分の1というナノサイズのカプセルを使って病気を治療する研究などを行っています。

そのひとつががんの治療です。抗がん剤が入った赤いカプセルが緑のがん細胞の中に入ると、がん細胞が次々と破裂します。正常な細胞には作用せず、副作用を抑えることもできるということです。
このような基礎研究を実用化する上で、大田区側にできる医療施設との連携が鍵になると見込んでいます。

開通の日、さっそく橋をわたった研究者たち。徒歩で10分弱という近さを実感し、気軽に相談し合える関係が築けると期待しています。

島崎眞 博士

ちょっと時間ができた時に、この先生に会いに行ってみようかなとか、逆に向こうの先生を呼んでみようかなとか、時間をあまり気にしなくてもできる。それが本当にイノベーションにつながっていくと信じている。

「干潟を守る」環境面の工夫

一方、橋を建設するに当たって、最も注意が払われたのは環境の保護でした。
実はこの地域、河口にわずかに残る干潟が国の「生態系保持空間」に指定されています。

シジミやシギの仲間など、絶滅の危機にさらされている生き物が多く生息しています。

東邦大
風呂田利夫
名誉教授

東京湾の生き物にとっていちばん重要な生物多様性の保全の場所になっていて、非常に貴重な環境。

干潟を守るため川崎市などは、環境の専門家の助言を受けながら橋の工事に工夫を凝らしました。干潟に重機を入れずにすむように、水上と陸地からすこしずつ橋を伸ばす工法を採用しました。

船をいれるときに削らざるを得なかった川底の土は、生態系にとって重要とされる表層部の15センチを剥ぎ取って保管。施工後、川底に戻しました。

東邦大 風呂田利夫名誉教授
「積極的に産業誘致して使わなきゃいけないところに、自然環境が残っているということの一種の社会的評価を世界的な評価として受けられるのではないか」

川崎市 福田紀彦市長
「空港近くに生態系の保護空間となっている貴重な場所。環境に正しい作り方ができたと思っている。これが世界のスタンダードになっていけばと思う」

自然環境を残しながら新しい時代の技術をつなぐ多摩川スカイブリッジ。新産業創出の起爆剤となるか注目が集まります。

  • 佐藤美月

    横浜放送局 記者

    佐藤美月

    2010年入局。甲府局、経理局を経てことし7月から横浜放送局。児童福祉や子どもの学習支援などをテーマに取材。

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