WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. 箱根の湯立獅子舞 国の重要民俗文化財に “コロナ禍の今こそ続ける”

箱根の湯立獅子舞 国の重要民俗文化財に “コロナ禍の今こそ続ける”

  • 2022年3月10日

獅子にふんした人が釜に入った熱湯を振りまきながら舞う神奈川県箱根町の伝統芸能「箱根の湯立獅子舞」が、国の重要無形民俗文化財に指定されることになりました。獅子舞には、無病息災の願いが込められているとされ、保存会のメンバーは「コロナ禍の今だからこそ続ける意味がある」と決意を新たにしています。
(横浜放送局/記者 豊嶋真太郎)

湯立獅子舞とは?

「箱根の湯立獅子舞」は、およそ250年前の江戸時代から箱根町に伝わるとされる伝統の獅子舞で、町の神社のお祭りで披露されます。

獅子のかぶり物をした「舞方」とか「舞手」と呼ばれる人が、熱湯が入った釜を「湯たぶさ」と呼ばれるささの束などでかきまぜ、集まった人にお湯のしぶきを振りまきながら舞うのが特徴で、無病息災を願うものとされています。

こうした獅子舞が行われているのは、全国でも箱根町と、静岡県御殿場市だけで、国の文化審議会はことし1月21日、国の重要無形民俗文化財に指定するよう、文部科学大臣に答申しました。
必要な手続きを経て正式に指定される見通しです。

スペインかぜを収めたという言い伝えも

箱根町の宮城野地域では毎年7月、諏訪神社で開催されるお祭りで獅子舞が披露されていて、はやり病を抑えるとされる神様に奉納されます。

町や箱根宮城野獅子舞保存会のメンバーなどが行った調査によりますと、一時、中断されていた獅子舞を、スペインかぜが流行した大正時代に再開したところ、流行が収まったという言い伝えもあるということです。

18歳のころから60年近く獅子舞に携わってきた箱根宮城野獅子舞保存会副会長の神戸信由さん(75)は次のように話しています。

箱根宮城野獅子舞保存会副会長 神戸信由さん
「疫病がはやって、この獅子舞で魔よけできないかという思いがあったのだと思います。当時は神ががりで病気を治すというのが、1つの手段だったのではないか」

台風にコロナ…苦難の連続

しかし、神戸さんたちにとって、この数年は苦難の連続でした。

3年前の10月には、箱根町に台風が直撃。毎年、獅子舞を披露してきた神社でも土砂崩れが発生して、ふだん舞っていた場所が使えなくなりました。
さらに、おととし以降は、新型コロナウイルスが直撃して、年に一度のお祭りでも、無観客での披露を余儀なくされました。

それでもやめない

しかし、神戸さんにとって、獅子舞は「地域を一つにするもの」。祭りで披露すると、多くの人が見に来てくれるため、人が集まることができない今の状況はつらいといいます。

練習を続ける神戸さんたち

それでも神戸さんたちは、手の消毒や、マスクの着用、そしてイベント出演時には抗原検査を行うなど、感染対策を徹底して活動を続けています。

神戸さん
「コロナ禍だから、じゃあやめましょうというのではなくて、無病息災、悪疫退散というのが、獅子舞のもともとの使命なので、やめてはいけない、やるんだという気持ちです」

10代の若者に伝える神楽

保存会のメンバーには10代の若者も多く、神戸さんの孫で高校2年生の稜さん(17)も参加しています。

小さいころから神戸さんに連れられ、獅子舞が披露される様子を見ていて、小学6年生くらいのときに「自分もやってみたい」と活動を始めました。

稜さんが友だちを誘うなどして、今では15人いる保存会のメンバーのうち、9人が、中高生など10代です。
神戸さんもこうした若者に伝承しようと、力を入れて指導してきました。

舞い続けることは「使命」

重要無形民俗文化財への指定の答申が行われた2日後、保存会のメンバーは、小田原市で開かれた伝統芸能を紹介するイベントに出演しました。

獅子を演じた高校生は、笛や太鼓の音に合わせて熱湯が入っていると見立てた釜の中をかき混ぜたり、獅子の口をカタカタと震わせる舞を披露したりしていました。
神戸さんは、今後も獅子舞を続けていく決意を新たにしています。

神戸さん
「本当に感無量です。獅子舞は地域の生活の一部で、コロナ禍のなかでも負けないように続けていくことが私たちの使命だと再認識しています」

  • 豊嶋真太郎

    横浜局 小田原支局 記者

    豊嶋真太郎

    令和元年入局、横浜放送局で、事件や事故の取材を経て、現在は小田原支局で勤務。

ページトップに戻る