「SDGsってことばを聞くけれど、自分たちの住んでいる地域ではどんな取り組みがあるの?」
SDGsの企業の取り組みを取材しようと、横浜市の小学校の児童たちが訪れたのは大手コーヒーチェーン。子どもたちが現場に行ってみると、“フードロス”や“プラスチック削減”の取り組みなど多くの発見がありました。
(横浜放送局/記者 古市悠)
地元の企業と連携してSDGs教育に力を入れてきたのは、横浜市西区にある「みなとみらい本町小学校」です。
商業施設やタワーマンションの相次ぐ建設で、児童の数が急増した「みなとみらい地区」の唯一の小学校として、2018年に10年間の期限付きで開校しました。
小学校は、自動車メーカーや鉄道会社の本社、さらには化粧品メーカーの研究所など最先端の施設が集まる地域の一角にあり、こうした企業と連携してSDGs教育に力を入れています。
開校宣言にも「持続可能な社会の担い手を育む」と明記しています。
社会の課題を主体的に捉える力を養ってほしいという思いから、SDGsについて学ぶテーマも、学年やクラスごとに児童たちが自分たちで決めています。
例えば、5年1組は「海の生き物守り隊」というテーマに沿って、学校のそばにある高島水際線公園で、水辺のゴミの種類や生き物の種類を調べて、生き物が暮らしやすい環境にするためには、どうすればよいか考えています。
5年2組は「人権ってなんだろう?」というテーマで、障害者スポーツやソーシャルサーカスを体験したりすることで社会の多様性について考えます。
そして、6年生のテーマは「まちとSDGs」。地域のSDGsの取り組みがほとんど知られていないと考え、自分たちで取材をして広めることにしました。
新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いていた去年11月から12月にかけて、6年生の児童たちは、大手コーヒーチェーンのほか外資系のホテルや鉄道会社など地区に施設がある8つの企業を取材しました。
この日は、学校の周辺にある大手コーヒーチェーンの12店舗を取材しました。取材のテーマは、地域にある企業のSDGsの達成に向けた取り組みについてです。
さっそく店長に質問をぶつけます。
フードロスの削減に取り組んでいると言っていましたが?
コーヒーを入れたあとに出る豆かすを牛のエサとして活用し、さらに、その牛からとれた牛乳を商品に使用しています。
さらに話題は“プラスチック削減”の取り組みにも。店長が子どもたちに手渡したのは“紙のストロー”です。
この店では、プラスチックのストローやカップの代わりに、特殊な加工をした紙のものを使うようになりました。
それによってプラスチックをどのくらい削減できたかを説明しました。
企業全体で、1年間でプラスチックのストロー2億本分。2億本分のプラスチック量の削減になっています。
取材が終わり、学校に戻るとグループごとに店舗の取り組みを発表します。グループに分かれて取材した大手コーヒーチェーン、12店舗の取り組みを発表です。
17あるSDGsの目標のどれにあたるか、話し合いました。
児童からは、プラスチック削減は目標14「海の豊かさを守ろう」にあたるなどといった意見が、出されていました。
6年生たちは、今後、取材結果をまとめて、地域の人たちに向けて発表する予定です。
コーヒーを売るだけじゃなくて、コーヒーを売ることによって地域とか地球の未来を守っているんだと分かって、すごく驚きました。
知られていない活動もあったので、それを多くの人に広められたらなって思いました。
みなとみらい本町小学校小正和彦校長
「社会との関わりを感じて、自分がこれから未来の社会を作っていくんだという思いを、小学校の段階から培ってもらいたい」
ふだんからSDGsについて学んでいる児童たちは、自分や周りの行動が、SDGsのどの目標に関係するか、自然と考えるようになっているということです。児童たちにとって、SDGsは新しい概念ではなく、生活の中に普通にあるものになっています。こうした子どもたちが社会に出た時、どんな活躍をするのか楽しみに思いました。
「みなとみらい本町小学校」は現状では、10年の期限付きの小学校ですが、このような取り組みは、是非、引き継いでほしいと思います。