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学校の部活動が変わる!教員の働き方改革で経験豊富なコーチが指導

  • 2022年1月27日

今、部活動に改革の波が押し寄せています。
これまで学校が主体だった部活動を地域に移行しようという動きが出ているのです。教員に代わって指導するのは、スポーツスクールのコーチなど経験豊富な地域の人材。
背景には教員の働き方改革で、教員の長時間労働による負担を軽減しようという国の狙いがあります。
生徒と教員、ともによりよい“ブカツ”の模索が始まっています。

始まった部活動改革

東京・日野市の三沢中学校は全校生徒700人あまりで、およそ20の運動部や文化部があります。去年から、部活動改革の一環で女子バスケットボール部の指導を外部指導員が担うようになりました。

取材した去年12月上旬、学校の教員ではなく、経験豊富なバスケットボールスクールのコーチが平日と土・日どちらかのあわせて週2日、生徒のレベルに合わせて指導を行っていました。

 

前より上達したと思う。

 

自分たちにあった練習方法を考えて、楽しく厳しく教えてくれるので毎日が充実しています。

部活動改革が教員の働き方改革に

改革の効果は教員にも及んでいます。
女子バスケットボール部の顧問、岩橋右京教諭はバスケットボールの競技歴はなく、指導は難しいと感じていました。

女子バスケットボール部顧問 岩橋右京教諭
「ルールは本を見て覚えていますが、教えるのには限界があります。『こうやったらうまくなるよ』というアドバイスも自分には難しいので、生徒にどう声かけていいかわからず関係が作りにくい」

教員になって2年目の岩橋教諭は、今年度、初めてクラスの担任になったばかりでした。クラス運営や授業の準備、それに生徒指導など毎日、忙しい時間を過ごしていました。それに加えて土日の部活動の試合への対応や慣れないバスケットボールの指導は心身ともに負担感の大きいものでしたが、状況は改善されつつあります。

三者面談を翌日に控えたこの日の放課後、岩橋教諭は部活動が行われている体育館にいました。
指導はスクールのコーチに任せて練習の始まりにだけ顔を出したあと、担任を務める1年生の教室へ向かいました。
そして、三者面談を前に、生徒たちに向けたメッセージを黒板に記しました。

   おはようございます
 今日から三者面談期間に入ります
 みんなの良いところをたくさん伝えられるような時間になればと思っています
 いつも以上に集中していこう
 今日も1日頑張っていこう!!

岩橋教諭は、部活動の負担が減ったことで、心に余裕ができ、クラスの生徒たちに向き合う時間が増えたと実感しています。

岩橋右京教諭
「学級経営や生徒指導にもしっかり時間があてられるので、クラスのためになっていると思っています。わたしも1時間ほど早く帰宅できるようになりました」

課題は人材確保

三沢中学校では、生徒や保護者に説明が行われたあと、12月下旬から休日の部活動が地域に移行されることとなりました。
改革が進む一方、学校はふさわしい人材をどれだけ確保できるかが課題と感じています。

三沢中学校 石川晴一校長
「今のところ、生徒にとっても教員にとってもよい方向で部活動改革が進められていると感じているが、今後すべての部活動を同じように休日、地域に移行するとなると、外部指導員を誰に頼むのか、資質も気にしていかないといけない」

多様なニーズに応える“合同部活動”

新たな形で改革を進める自治体もあります。
東京・渋谷区では、去年11月、区内の8つの中学校の生徒が参加する「合同部活動」が発足しました。
運営には渋谷区が関わっていて、生徒の多様なニーズに応えようと、ダンス部、女子ラグビー部、パソコン部など9つの部が設けられました。

取材したダンス部では、毎週土曜日、プロのダンサーが生徒の指導にあたります。
区内の8つの中学校から希望者を募った『合同部活動』で、地元の中学校にはダンス部がなく習い事としてスクールに通っていた生徒たちが、アップテンポの音楽に合わせて体を動かして汗を流しました。

 

自分の好きなことができるのがすごくうれしい。

 

いろいろな学校の子がいて楽しい。

渋谷区では、部活動のあり方を変える一歩になると期待を寄せています。

渋谷区 田中豊スポーツ振興課長
「生徒たちの新たなニーズにこたえて渋谷の部活動が変わっていく流れを作りたい。中学校を卒業しても部活動を継続して楽しんでいけるようになれば、まさに中学生、高校生、大学生、社会人になっても地域の部活動として楽しむことができる。学校とともにもう1つのコミュニティを形成していくという思いで進めている」

“ブカツ”どうあるべき

スポーツ庁は部活動と教員の働き方改革を両立させるため、令和5年度から休日の部活動を地域のスポーツクラブなどに段階的に移行していく方針を示しています。
そして、スポーツ庁が設置した有識者会議が当初の予定を前倒しして、ことし5月には提言をまとめることにしています。

部活動改革に詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授は、改革の上で大切な視点を訴えます。

名古屋大学大学院 内田良准教授
「部活動は過熱し、肥大化してきた。学習指導要領では『自主的・自発的な活動』とされ、趣味にすぎないはずなのに、成績を向上させたい一心で過度なトレーニングが行われ、生徒がけがをする事例もある。部活動を地域へ移行することは必須だが、その際に、練習日数を少なくするなどダウンサイズしていく必要もある。特に地域へ移行するにあたっては受け皿となる指導者や練習場所、それに運営資金が必要となるので、このタイミングで持続可能な部活動のあり方を考えるとともに、何より、参加したい子どもたちが安全・安心に参加できる仕組みをつくってほしい」

これまで献身的な教員の勤務に支えられてきた部活動。学校と生徒だけの問題ではなく、企業や地域を巻き込んだ改革が進められるなか、生徒や教員にとってどのようなあり方が望ましいのか。今後も取材を通して考えていきます。

  • 浜平夏子

    首都圏局記者

    浜平夏子

    2004年(平成16年)入局。宮崎局、福岡局、さいたま局を経て、2020年から首都圏局。医療取材を担当。

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