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「あさイチ」でヤングケアラー特集 “元若者ケアラー”のディレクターに聞いた

  • 2022年1月21日

「私と同じような悩みを抱えている子どもたちに、1人じゃないことを知ってほしい」

こう話すのは、NHKの朝の情報番組「あさイチ」を担当する女性ディレクターです。認知症の祖母と2人暮らしをしてケアした経験があるといいます。「あさイチ」では1月24日、ヤングケアラーの特集を予定していて、彼女はその中心メンバーのひとり。自身のケアの経験、ヤングケアラーへの思いについて聞きました。
(「あさイチ」担当ディレクター 本多真弥  聞き手/国際部記者 山本健人)

“元若者ケアラー”のディレクター

今回、話を聞かせてもらったのはNHK制作局で「あさイチ」を担当する入局7年目の本多真弥ディレクターです。
ヤングケアラーを担当する本多さんは、学生時代に認知症の祖母と2人暮らしをしてケアした経験があります。少しでもヤングケアラーが孤立せず、助けを求めやすい社会になってほしいという強い思いがあるといいます。

ヤングケアラーをより広く知ってほしい

山本記者

今回、特集を担当したのはどのような思いからですか。

本多ディレクター

ヤングケアラーの子どもたちの葛藤や悩みが、認知症の祖母をケアしていた学生時代の私が抱いていた気持ちと重なる部分があると感じたからです。ヤングケアラーについて少しずつ社会的に知られるようになりましたが、関係者やもともと関心がある人だけでなく、より広く、一般の人にも知ってほしいという思いを強くしました。

認知症の祖母のケアで追い込まれる

 

どうして祖母のケアを?

 

大学進学に合わせて実家を出ることになりましたが、大学の近くに1人で住んでいた70代の祖母のもとで暮らすことになりました。同居をはじめる少し前から、祖母には物忘れが増えるといった認知症の初期症状が見られましたが、当初は「生活費を節約するだけでなく、大好きな祖母の見守りも兼ねることができる」と考えていました。しかし、祖母の認知症の症状は想像を超えるスピードで悪化しました。祖母はお金をとられたと錯覚するようになったり、トイレを失敗したりするようになりました。
また、ある日は祖母がコンロの火を消し忘れて、あやうく火事になりかけることもありました。目を離すと何するかわからず、神経をすり減らすことが増えていきました。

 

学校生活への影響はありましたか?

 

週に3回、介護ヘルパーが入るようになったこともあり、学校の授業には休まずに出ることができました。一方で、ヘルパーがいない夜間に家を空けることができず、アルバイトは日中に入れるようにし、友人と遊ぶ予定があっても、できるだけ早く帰宅するなどしていました。
また、もともと気が強い性格の祖母は、一度思い込むと考えを曲げようとせず、手がつけられなくなることがありました。認知症のせいだとわかっていながらも、私も感情的になってしまい、しばしば衝突することも増えていきました。
どうして私1人が祖母と向き合い続けなければならないのか、気持ちが不安定になることがあり、部屋に閉じこもることもありました。

悩みを打ち明けられなかった

 

周りに悩みを打ち明けたり、助けを求めたりは?

 

隠そうとしていたわけではありませんでしたが、あえて周りの友人に話そうとは思いませんでした。誰かに相談したところで、かわいそうだと思われるだけで、状況は何も変わらないことがわかっていたからです。
一方で、両親に相談したこともありましたが、共働きで忙しいこともあり、悩みをすべて受け止めてもらえませんでした。家族だからやって当たり前、そう自分に言い聞かせて、周りに助けを求めることをいつしか諦めるようになっていきました。
祖母のケアは私が社会人になったことで終わり、3年前に祖母は亡くなりました。いまでも、もっと祖母との時間を大切にできなかったのか、祖母のケアと向き合うことができていたのか、自分を責めてしまうことがあります。

特集を通して伝えたいこと

 

特集では、視聴者に何を伝えたいですか?

 

取材したヤングケアラーたちは、家族の介護やケアのことを「家族だから当たり前だ」とか「仕方がないことだ」などと自分を納得させることで、自分の気持ちを押し込んでいるように感じることがあります。私と同じようなことで悩んでいる子どもたちに「悩んでいるのはあなた1人じゃない」ということを感じてもらえたらと思います。

 

当事者や関係者以外の人にはどんなことを伝えたいですか?

 

ヤングケアラーたちはなかなか自分から周りに悩みを打ち明けにくく、当事者だけではどうにもできない状況にいることが多いと感じます。
そのため、周りの大人が子どもたちのSOSにいかに気づいてあげられるのかがとても大事だと思います。そして、SOSに気づいた大人が、どういうことばをかけてあげられるかによって、その子どもの生き方も変わってくると思います。
ヤングケアラーについて、少しずつ社会的に知られるようになってきましたが、関係者やもともと関心がある人以外の一般の人たちにも広く知っていただき、身近なところで悩んでいる子どもたちに対して、どのように手を差し伸べていけるのか考えるきっかけにしていただきたいと思います。

「あさイチ」のヤングケアラー特集は2022年1月24日(月)に放送予定です。
詳しい番組の情報はこちらから

NHKではこれからも、ヤングケアラーについて皆さまから寄せられた疑問について、一緒に考え、できる限り答えていきたいと思っています。
ヤングケアラーについて少しでも疑問に感じていることや、ご意見がありましたら、自由記述欄に投稿をお願いします。

疑問やご意見はこちらから

  • 山本健人

    国際部 記者

    山本健人

    2015年入局。初任地・鹿児島局を経て現所属。 ヤングケアラー支援の”先進地“イギリスを取材。

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