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ヤングケアラーVR座談会 当事者どうしで話してもらいました

  • 2021年12月29日

「同じ経験をしている同世代の子たちと話してみたい」

これは、ヤングケアラーの当事者の子どもたちを取材していて、よく聞くことばです。そこで当事者の子どもたちにバーチャル空間に集まってもらい、互いに“本音トーク”をしてもらいました。

参加してくれた4人の声を、4回にわたってお伝えします。
1回目は、高校2年生の女子高生、“ゆずさん”(仮名)です。
(さいたま放送局/記者 大西咲)

バーチャル当事者会 参加者1人目 “ゆずさん”

ゆずさんのアバター

高校2年生の女子高生。4歳年下の弟の介護やケアをしてます。弟は先天性の難病と重度の心身障害があるそうです。最近は、弟の介護やケアで体調を崩しがちな母親の話し相手になっているほか、母親の代わりに買い物に行ったり、料理を作ったりしているといいます。

なんでバーチャル当事者会に参加しようと思ったの?

障害のあるきょうだいがいる子どものことを“きょうだい児”と言うのですが、きょうだい児では(ヤング)ケアラーをやっている子が多くて、ふだんはきょうだい児の集まる「きょうだい会」にオンラインで参加しています。ヤングケアラーだけの会は初めてだったので、みんなとしゃべってみようかなみたいな感じで参加しました。

“ヤングケアラー”と打ち明けるのはハードルが高い?

友だちにケアのことを話せないのはなんでだろうって考えたら、今までは“ゆず”として接してくれていたのに、話すことによって、“ヤングケアラーのゆず”とか、“弟に障害があるゆず”とか思われるのが嫌だなって。数日前に親戚から「昔はめちゃくちゃ弟の世話をしてて(ヤング)ケアラーだったけど、今は行政の力とか借りて少しは楽になったかい?」みたいな話をされて、人から改めて(ヤングケアラーと)言われるのって嫌だなって感じました。

大人と接する中で悩んでいることはある?


自分の場合は、両親の間で弟の将来への方針みたいなのがずれていて…。福祉(関係者)の人は平日しか来なくて、お母さんにしか会わないから、お母さんの意見しか聞かない。家族の意見、みんなの意見を聞いて、そこから支援につなげてくれる“交渉人”みたいな人がいてくれるといいなと思います。

あと、学校の先生は「何でも聞くよ」みたいな態度や空気を見せてほしいです。最初は、学校では学校の悩みしか相談してはいけないのかなとか思っていました。先生が忙しそうだと、どうしても遠慮してしまう。本当は学校以外で、いつでも行けて、しゃべって、帰れるみたいなところがあればいいけど、それがないなら、先生たちがもうちょっと話を聞いてくれればなぁと思います。

学校に「何でも聞くよ」的な相談窓口はある?

ないですね。私は、去年の担任の先生と、ことしになっても結構しゃべることができるんですけど、先生が去年、私が困っているときに声かけてくれなかったら、それはできなかったなって思う。本当、奇跡みたいな感じで…。

いま悩んでいることは?

2つあって、ひとつは大学に進学するときに1人暮らしをするかしないかっていうのを迷っているのと、あとは勉強のこと。家でやっていると、リビングの音が気になっちゃって、やりにくいなーって最近感じることが増えてきたので、みんなどういうふうに勉強の環境を確保しているのかが聞きたいです。

相談している友だちとか先生は「(家を)出てみたほうがいい」って言うし、「きょうだい会」の先輩の大学生とかは「(実家から)離れたからありがたみがわかる部分もある」って言うんですけど、自分がどうしたいっていうのはあんまりわかってなくて・・・。でも現実は、自分がいないと(家のことが)回らないのかなみたいな感じ。それに自分も「弟や家族のケアをしている自分という一面を捨てたら何が残るんだろう?」みたいな気持ちがあるから、どうしようかなって。

「家にいたくない」と思うことはある?

家にいたくないときは、週に1回は絶対あります。土日とかに両親がけんかすることがあるんです。そういうときは家にいたくないんですけど、学校の先生とオンラインチャットでつながっているので、「月曜日、お話できませんか」って連絡して、週明けを迎えるモチベーションを作ってます。学校に行って、話して、リセットする感じです。

自分は反抗期で、お母さんから愚痴とか、その日あったこととかを聞かされたりすると「めんどくさいな」「ウザいな」とか「あなたがこれをできてないからそうなってるんだよ」とか、いろいろ感情が浮かんでくるんですけど、言い返すと(お母さんが)落ち込んで寝込んじゃったりするから、言いたいことが言えないなって感じてます。みなさんは反抗期があるのかなっていうのと、反抗期の過ごし方っていうか対処法を教えてほしいです。

弟の介護やケアをしていてうれしかったことは?

寝たきりの弟が、ちょうど(新型)コロナの自粛期間中にちょっとだけ寝返りが打てるようになりました。今までできなかったことができるようになって、「ああ、やっと成長したんだ、うれしい」と思いました。本人も調子に乗って、何度もやり出して、頭も自分で上げられるようになってきました。

ヤングケアラー支援に期待することは?

大人の人には、もしこれからヤングケアラーの支援が広まって、実際に子どもが大人に相談してみようと行動を起こしたときに、受け止めてほしいです。何か解決策がほしいとかじゃなくて、ただ聞いてほしいときもあるから「うんうん」って聞いて、まず受け止めてくれたらいいなって。あと、個人的に自分は将来、資格を取って、(自分と同じような)子どもたちの居場所づくりをしたいなと思っています。

 

今回VR当事者会に参加したゆずさんは、12月30日午後10時55分からEテレで放送予定の
「セルフポートレート わたしの風景 ヤングケアラー×2021年 冬」
にも参加しています。

NHKではこれからも、ヤングケアラーについて皆さまから寄せられた疑問について、一緒に考え、できる限り答えていきたいと思っています。
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