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更年期 症状自覚も病院行かないが6割 医師“1人で解決はやめて”

  • 2021年12月24日

「真冬でも、急に汗が噴き出してくる」「集中力が低下して、仕事にならない」
主に40~50代の女性を悩ませる更年期障害。
ことしNHKが専門機関と共同で行った調査では、更年期症状を経験したと答えた女性の6割以上が、婦人科を受診していないことが明らかになりました。
自己流の対策、これでいいの?治療の最新事情は?専門の医師に話を聞きました。
(首都圏局/ディレクター 木村桜子)

更年期に関する悩み・ご意見をこちらからお寄せください。男性からもお待ちしています。

症状を自覚した女性の6割超 “受診していない”

更年期とは、女性ホルモンが減少し、生理がなくなる閉経の前後10年間を指し、一般的には、45歳から55歳ころとされています。女性の心や体のバランスを保つ女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減るため、不快な症状が現れます。

日常生活に支障が出るほど重い症状の場合「更年期障害」と診断されます。
NHKと専門機関との共同調査では、更年期症状を経験したと答えた女性およそ1万人のうち、「婦人科を受診していない」と回答した人は6割以上にのぼりました。

SNSでも…

頭がふらふらしてまっすぐ歩けない。更年期?こんな時どこに行けば…
更年期かなぁ。病院行く暇なんてどこにもない。

更年期の正しい対処法 専門家に聞いた

更年期症状にどう対処すればよいのか、日本女性医学学会理事の寺内公一さんに話を聞きました。

 更年期症状を疑う場合は、主に以下の項目を目安にしてください。

(1)月経が不順、もしくは閉経している。
(2)ほてり・のぼせ・発汗に限らず、心身に様々な不調を感じる。

 更年期障害を引き起こす要因は、次のようなものが挙げられます。

●閉経や加齢によるからだの変化
●本人の性格や気質
●子育てや介護、仕事のストレスなど

更年期には、適度な運動・バランスのよい食事・休養を心がけて過ごすことが大切です。

これってホント?更年期のウワサ

Q.ネットを見ていると「更年期になると太る」という情報が。本当?

A.更年期に体重が増加する原因はおもに2つあります。
(1)加齢による筋肉量の減少
更年期かどうかに関わらず、加齢によって筋肉の量が減ります。それにともなって基礎代謝量が落ち、太りやすくなるとされています。

(2)女性ホルモン(エストロゲン)の減少
エストロゲンはコレステロールの値を正常にし、脂肪の代謝を促す働きがあり、肥満の抑制になります。
ところが更年期に入り、エストロゲンが減少すると、悪玉コレステロールが上昇しやすくなるので、肥満になりやすいといわれています。また、患者さんの中にはコロナ禍で家で過ごす時間が増え、体重増加が悪化してしまったという方も多いです。
バランスのよい食生活や、ウォーキングなどの適度な運動をこころがけてください。

Q.産後に無理をすると、更年期障害がひどくなる」と聞いたことがあります。本当でしょうか?

A.事実ではありません。
ただし、月経の前に非常にうつ症状がひどくなる月経前不快気分障害(PMDD)がある人や、
産後にうつ病を発症した人は、更年期の時期にうつ症状がひどくなりやすいことが分かっています。
ホルモンの変動に対する感受性が高く、それにより心身の不調をきたしやすいという方は、更年期に注意しなければならないと思います。

“更年期に効く” サプリや食品は

Q.更年期によいという市販薬やサプリメントは効果がありますか?

A.全てのサプリメントや漢方薬が有効と証明されているわけではありませんが、科学的に効果が証明されているサプリメントもいくつかあります。また、漢方薬の効果は長い歴史の中で経験的に確認されてきました。
私は「患者さん自身の満足がもっとも重要」だと考えています。患者さんが気に入って使用するものに対し、「そんなものは効かない」「飲んではダメ」と言える立場ではありません。
ただし、サプリメントの中には非常に高額なものもあります。しばらく使ってみて、目に見えた効果があらわれなければ服用をやめ、婦人科を受診すべきだと思います。

Q.「更年期症状に対して効果がある」と科学的根拠が認められている食品成分はありますか?

A.日本産科婦人科学会が出しているガイドラインには、以下の成分についてはエビデンスがあるとされています。
・大豆イソフラボン
・エクオール(大豆イソフラボンから腸内細菌によって作り出される成分)
・豚胎盤抽出物
・ブドウ種子ポリフェノール

また、私たちの研究では、ビタミンB6をとっている人ほど、更年期のほてり・のぼせ、あるいはうつの症状が軽いと言うデータがあります。ビタミンB6は赤身の魚や肉、レバー、バナナなどに多く含まれています。
ただし、何か1つの栄養素だけをとればいいという話ではありません。「バランスの良い食事をとること」が一番大切です。

ちゃんと知りたい 更年期障害の最新治療

まだ気軽に口にしづらい人も多い更年期。
インターネットの情報や、すぐ手に入る市販のサプリなどで解決しようとしがちになりますが、寺内さんは「更年期症状を自分1人で解決するのはかなり無理がある」といいます。
1人で悩んでいるうちに症状が重くなって生活習慣が乱れ、さらに状況を悪化させてしまうこともあるそうです。「困っていたら病院へ」。今どんな治療が行われているのでしょうか。

薬を使う治療法と使わない治療法があります。

(1)薬を使う治療法
・ホルモン補充療法(HRT)
不足している女性ホルモン(エストロゲン)を補い、更年期症状の不快な症状や、閉経後のトラブルを予防するもの。
主に、のぼぜ・ほてりを押さえたり、気分の落ち込み、関節痛をやわらげる効果がある。
・漢方薬
「心と体は一体」と考え、全身のバランスを整える治療法。同じような症状でも、人によって治療薬が異なる。
・その他の対症療法
抗うつ薬や抗不安薬など、症状別に薬剤を選び処方。

(2)薬を使わない治療法
・生活習慣の改善
・カウンセリング、心理療法

寺内さんによると、1つの治療法を選択したら、それをずっと続けなければいけないわけではなく、「これが効かなければ、次はこれ」というふうに、様々な治療法が選択できるそうです。

 

Q.ホルモン補充療法は、乳がんのリスクが高まるのではないかという声もありますが、本当ですか?

A.乳がんが増えるということに関しては、必ずしも否定はできません。
女性ホルモンにさらされている年数が長ければ長いほど、乳がんのリスクは上がります。
ただし、そのリスクは食生活や飲酒など、生活習慣が原因によるものと同じ、もしくはそれ以下ということが分かってきました。また、ホルモン補充療法をすることによって、骨粗しょう症や動脈硬化など、よくなる疾患もたくさんあります。

ホルモン補充療法は、エストロゲンと黄体ホルモン(プロゲストーゲン)の2種類のホルモンの組み合わせで行います。
ことし11月末には、最新の黄体ホルモン製剤が発売されました。日本初の天然型(人体で作られるホルモンと同一のもの)で、保険適用もされています。
天然型のホルモン製剤を使えば、乳がんのリスクは上がらないという話もあります。
一方、ホルモン補充療法については、病歴などを理由に行えない患者さんもいますので、リスクとベネフィットの両方を説明しながら行っていきます。

Q.「更年期障害をうたがって婦人科に行ったが、症状がよくならない」という声もありました。どうしてでしょうか?

A.「更年期障害」ではなく、別の病気が隠れている可能性があります。
また、産婦人科の医師全員が更年期障害を得意にしているかというと、そうではありません。婦人科の治療に満足できないという方は、分娩やがんの手術を専門にする病院へ行っている可能性もあります。
日本女性医学学会では、更年期障害に積極的に取り組んでいる「女性ヘルスケア専門医・女性ヘルスケア指導医」の情報をホームページに掲載しています。これを病院選びのひとつの基準としていただくのもいいかもしれません。
最近では、医師が監修を行うオンラインの相談サービスなども登場していますので、そういったサービスを活用するのも一つの手だと思います。
「規則正しい生活の大切さは分かっているが、なかなかできない」という方には、私たちの外来では、薬を出すだけではなく、生活習慣の指導なども行っています。ぜひ治療の伴走者を見つけていただきたいです。

更年期症状に詳しい専門医・専門資格者は
日本女性医学学会 https://www.jmwh.jp/
※ホームページの地図から近隣の専門医を探すことができます。

  • 木村桜子

    首都圏局 ディレクター

    木村桜子

    2012年入局。大阪局、神戸局などを経て2020年から首都圏局。保育や教育、ジェンダーの問題に関心を持ち取材中。

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