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ニベアに○○混ぜるとシミが消える? メーカー・医師“混ぜないで”

  • 2021年12月9日

インターネットでこんな広告を見たことありませんか?
美容液の広告なのですが、多くの人が知っている他社のクリームと混ぜて使えば「シミが1週間で消える」とうたっているものです。
ところが先週末、クリームの販売元が「混ぜないで」と注意喚起のツイートを投稿したことで、広告の情報が正しいのか、疑問の声が相次いでいます。
メーカーや医師に取材すると「そもそも混ぜないで」と明確な答え。どういうことなのでしょうか。調べてみました。
(首都圏局/ディレクター 横山紗也香)

見たことありますか? “ニベアに混ぜて”広告

このネット広告。私もたびたび目にしていました。自宅でネットサーフィンをしていると、頻繁に現れるのです。
東京・渋谷で女性たちに聞いてみると…。

 

広告はインスタグラムやツイッターで見たことがあります。

 

シミは消えないだろうと思っていても、へーっと思ってしまいます。

公式は“混ぜないで”

“青缶”という愛称でも呼ばれているこの製品は、大手日用品メーカーの花王とドイツのメーカーの合弁会社が製造・販売している全身用の保湿クリームです。手頃な価格で子どもから大人まで使えるとあって、年間1300万個を売り上げています。

その公式アカウントが、先週金曜日こんな投稿をしていました。

ニベア花王のキャンペーンアカウント

なぜ、こうした内容の投稿をすることにしたのか、メーカーに問い合わせてみました。

ここ数年、「ニベアに混ぜる」という内容の広告が出回っていることは把握していたといいます。
これまで、電話での問い合わせには個別に対応してきましたが、SNSでも質問があったため、それに応える形で投稿することにしたそうです。

広報担当者
「別の製品と混ぜて使うという使用方法を想定していません。顔にも体にも使うことができ、高齢者から子どもまで使うことができるシンプルな成分の製品なので、仮に刺激物を混ぜたりするとどのような影響が出るのかなど、心配しています」

皮膚科医に聞くと“混ぜるのはおすすめしない”

そもそも、異なる商品を混ぜるという使用法は肌にとってどうなのでしょうか。皮膚科の医師に
聞いてみました。

山本メディカルセンター 齋藤 真理子医師
「混ぜるというプロセスを経ることで、成分が分離して性質が変わってしまう可能性があります。簡単に言うと、水分と油分はけんかするんです。水分の多いタイプのものとクリーム状の油分がたっぷりあるものを混ぜても混ざりませんし、どちらの効果もあまり期待できないものになると考えられます。また、A社とB社の商品を混ぜて使うとどんな化学反応が起きるか、どちらの会社も実験していないのではないでしょうか。A社もB社も責任が持てない状況になるのでおすすめできません」

“混ぜる”と“重ね塗り”は違う?

医師の話を聞いていて一つ気になったことがあります。ふだん、肌の手入れをするときには、混ぜることはなくても、例えば化粧水のあとに乳液をつけるなど、重ねて塗ることはあります。混ぜることと、重ねて塗ることは違うのでしょうか。

齋藤医師
「重ね塗りをすると、一つの製品の成分がちゃんと肌の上で反応を起こし、その上で次のものをと、順序立ててやることになるので、そのつど効果が出ると思います。混ぜたことによる化学反応が起きてしまったものを塗ることとは全然違ってくるわけです。違うものになったものを顔に塗るのと、それぞれ単体のものをきちんと肌の上で反応させるのとでは圧倒的な違いがありますね」

正しくない情報が広告に なぜ?

メーカーも医師も「混ぜないで」という見解でした。ではなぜ、こんな広告が出回っているのでしょうか。インターネット広告の適正化対策を手がけている土橋一夫さんに話を聞きました。

デトリタス 土橋一夫さん
「誰もが知っている市販のクリーム名を出すことで、消費者の関心を引いて自社の化粧品を買わせようというねらいがあるのでしょう。また、広く拡散する理由としては、意外性のある情報を動画で発信して再生回数をUPして稼ごうという、ユーチューバーの戦略も影響しています。科学的根拠に疑問がある情報も多く、問題だと思います」

法的にも問題がある可能性

厚生労働省によると、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」66条では、医薬品や医薬部外品、化粧品などの効果や効能について、虚偽や誇大な広告をしてはならないと定められています。化粧品の広告について、認められている効果・効能は56項目。その中に「シミが消える」という表現は含まれていません。

広告を出した企業の見解は

自社製品を「ニベアと混ぜるとシミが消える」と広告を出していた化粧品販売会社に見解を聞くと、メールで次のような回答がありました。

健康美人研究所株式会社の回答
今回、一部ネットニュースにて取り沙汰されております広告の制作については、弊社は関与しておりません。
多数の媒体に出稿しており、どの広告代理店やメディアからどのような広告が出稿されていたか全てを把握できていない点があったという経緯のため、早急に確認・調査を行い厳正に対処するため、WEBプロモーションを停止させていただくという状況となっております。
この件で、日頃よりご利用いただいているお客様をはじめ、ニベア花王株式会社様、お取引先様、関係者各位の皆様に多大なるご心配とご迷惑をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げます。

取材後記

私にとってもこのクリームは身近な商品で、実際に広告を目にしたときは「どうしてこんな怪しい広告が出ているのだろう」と不思議に思っていました。
手頃な価格の商品できれいな肌にできる、という内容は多くの人が飛びついてしまう可能性があるものです。安全性や、既存の商品のブランドをおびやかしかねない広告がインターネット上にあふれていることに危機感を感じました。
引き続き、こうした身の回りの小さな疑問をスルーせずに調べていきたいと思います。

  • 横山紗也香

    首都圏局 ディレクター

    横山紗也香

    2017年入局。水戸局を経て2021年から首都圏局。若者や外国人、ダイバーシティーなどをテーマに番組を制作。

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