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韓国発の人気 “カラシ制服”をレンタルで 高校生たちのSDGs

  • 2021年11月22日

韓国の人気芸能人から広がった“制服ファッション”。中高生を中心に人気で、インスタグラムにはカラシ色などのカラフルな制服を着て撮った、たくさんの写真が投稿されています。
茨城県日立市には、現役の高校生たちがボランティアで運営する“制服レンタル”のお店があります。流行に乗って始めた事業かと思いきや、その活動の裏には“自分たちの未来を大人だけに任せてはいられない!”という熱い思いがありました。
(首都圏局/ディレクター 横山紗也香)

“制服ファッション”で楽しむ #JKLIFE

「えー!かわいい~!」

スマホで楽しそうにお互いを撮影しあっている高校生たち。
実はこれ、学校に着ていく本物の制服ではなく、「おしゃれ用の制服」なんです。

中でも目を引くのが、このカラシ色(!)のブレザー。
かなり派手な感じもしますが、これが一番人気のカラーなのだとか。

 

カラシ色の制服は、韓国の芸能学校で実際に着られている制服にそっくりなんです。圧倒的人気ナンバーワンの制服です。

 

いま、高校生を中心に放課後や休日、制服風ファッションで友達と遊びに行くのがブームになっているといいます。SNSにはカワイイ制服を着て、いつもとはちょっと違った#JKLIFE を楽しむ高校生たちの写真がたくさんアップされています。

近年、韓国ドラマやK-POPアイドルの人気が上昇したことで、アイドルたちが着ているような、日本の制服とはちょっと違ったデザインやカラーの制服を着るのがはやっているんです。

高校生たちが運営する “制服レンタルショップ”

この制服、インターネットで借りることができます。

茨城県にあるこのオンラインショップでは、一時間800円~、1日でも2500円という価格設定。都内のレンタルショップなどと比べても割安で、学生でも利用しやすい値段です。
さらに、レンタルの店舗は新大久保など都内に多い一方、このショップでは郵送のほか、JRいわき駅近くの商業施設でも直接受け取りや返却ができるサービスも行っています。

実はこのオンラインショップ、運営しているのは現役の高校生たちです。

メンバーは全員中学生・高校生で、ボランティア団体として日立市を拠点に活動しています。
制服の仕入れやSNSでのPR、レンタル商品の発送、クリーニングなどすべて自分たちでこなしているのです。

 

制服を店舗で受け取って1~2時間写真を撮りに行く方や、2~3日借りて遠方に出かけたり、テーマパークに行く方もいます。

大好きなファッションの厳しい現実 “変えたい”

活動している様子はとても楽しそうで、ファッションが大好きなことが伝わってきます。
しかし彼女たちは、ただ「ファッションが好き」なだけで、このレンタル事業をやっているわけではありませんでした。

代表の花塚来実(はなつか・くるみ)さんは、高校1年生のときに初めて授業でSDGsについて学びました。その時、好きな洋服にまつわる深刻な現実、「衣類廃棄」の問題を知り衝撃を受けたといいます。それが活動を始めるきっかけになりました。

花塚さん
「私が好きな洋服とか、そういうカテゴリが否定されてしまうような世界があるんだなというショックがまずありました。行動しなきゃ変わらないんじゃないかなと思いました」

環境省が民間のシンクタンクに委託して行った調査によると、国内で去年1年間に再利用されず廃棄された衣服は51万トンにのぼると推定されています。

そこで環境省ではいま、服のシェアやレンタルを活用することで廃棄される服の量を減らす“サステナブル(=持続可能な)ファッション”を推進しています。
自分たちにもこうした取り組みができないかと考えついたのが “制服レンタル”でした。

花塚さん
「最近コワーキングスペースなど場所をシェアする文化や、カーシェアリングがある。それなら洋服もレンタルでシェアしてしまえばいいんじゃないかと思いました」

さらに、花塚さんを突き動かしたのは“大人のことば”でした。
活動を始めるにあたって、相談した企業の人から、こんなことを言われたのです。

「高校生のうちからそんなボランティア活動なんて、おもしろくないからやめなよ…みたいな感じで言われて。SDGsの取り組みは年齢で壁があるわけじゃない。何なら私たちの世代が一番被害を受けるのに、率先していくはずの大人が制限してしまう世の中がすごく残念でした。ファッションにすごく密接している私たちがやらなかったら、誰がいつやるんだ!と思って始めました」

去年の夏、事業を始めるために自分の貯金と両親から借りたお金でおよそ40万円を用意しました。業者との慣れないやりとりに苦労しながら、韓国から制服30着以上を仕入れることに成功。ことし1月、ついにレンタルサービスを開始しました。

同世代に届け!デジタルネイティブのSNS戦略

制服レンタルの取り組みを広げるため、花塚さんたちが特に力を入れているのがSNSの活用です。
どうすれば投稿を見てもらえるのか?生まれたころからSNSが身近な、デジタルネイティブ世代ならではの視点が生かされています。
メンバーが共有しているメモにはSNSでのPR方法が詳細に書かれています。

“投稿時間は、学生が帰宅してSNSを見る19~21時” 
“制服のハッシュタグには韓国関連のものを”

高校生や、韓国ファッションが好きな人がよく見るハッシュタグをつけることで、検索で表示されやすくしています。

広報担当 山野邊夏凜さん
「本当にハッシュタグって結構使うんですよ。一番今はやっているものだったり、かわいいものだったりをSNSにみんな載せるので。ハッシュタグは“命”ですね」

地方から全国に発信できるのもSNSのメリット。今では関東を中心に、全国からレンタルの依頼が舞い込むようになりました。

等身大のことばで 広がるSDGsの輪

制服レンタルの活動は、実際に同世代のSDGsへの意識を高めています。
鹿児島県の高校生は、レンタルを利用したことをきっかけに環境問題に関心をもつようになったそうです。

鹿児島の高校生
「最初はSDGsに関して意識したり、考えたりはしていなかったんですけど、制服を借りてみたことによってこういう少しのことでも貢献できているんだなと思いました。リサイクルされたものや古着のファッションを、私も着てみたいと考えるようになりました」

さらに、メンバーの発案で新企画も始めました。
毎週の投稿でSDGsの17項目を取り上げ、自分たちのことばで伝えようというものです。

澤田千紘さん
「自分たちの身近な内容から取り上げないと、きっと関心をもってもらえないなと思ったので、分かりやすく、具体的な例をあげるようにしています」

例えば、SDGsのゴール「14.海の豊かさを守ろう」の紹介では…

近年、世界中の健康志向が高まっていることでたくさんの魚が食べられるようになりました
ですがそのせいで今や、魚の捕りすぎが問題になっているんです (中略)
私たちに今できることは…
・お魚を週1回にしてみる ・お魚を無駄にしない ・プラスチックゴミを減らす …

 

SNSでこうした投稿を始めたところ、ファッション好きな中学生が一緒に活動したいとボランティアに参加してくれることになりました。

中学3年生 菊池心音さん
「制服レンタルを見て、まずかわいいなと思って。最初はSDGsって全然分からなかったんですが、いろいろ投稿を見て『えっ、こんなことがあるんだ!』と。自分も広めていけたらと思います」

おしゃれやファッションが好きなだけでなく、SDGsにも関心のある仲間たちが着々と増えています。
さらに、取り組みに共感した県内の企業から運営資金の支援をしたいという申し出がくるなど、同世代だけでなく、“大人”のSDGsに対する意識にも変化を生み出している花塚さんたち。
今後も活動を通して、若者たちがSDGsについて考えるきっかけを作りたいと考えています。

花塚さん
「自分たちの活動の基盤にある衣類廃棄問題、制服レンタルを通してレンタルの概念を植え付けたいっていうのが永遠のテーマなのかな。高校生もSDGsに取り組めるよ!と、高校生が活動するターニングポイントになればと思います」

カジュアルに、身近なところからSDGsを考える取り組み。
取材を通して、肩ひじ張らずに、ポジティブに考えていくことの大切さに改めて気づかされました。
大好きなファッションも地球の未来も諦めない、彼女たちの“等身大”の挑戦は続きます。

  • 横山紗也香

    首都圏局 ディレクター

    横山紗也香

    2017年入局。水戸局を経て2021年から首都圏局。若者や外国人、ダイバーシティーなどをテーマに番組を制作。マイボトルを愛用しています。

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