ことし6月、千葉県八街市の通学路で児童5人がトラックにはねられて死傷した事故を受けて、いま全国で危険な通学路の洗い出しと対策の検討が進められています。こうしたなか、重大事故を防ぐ効果が期待されるツール、「ハンプ」の実証実験が港区で始まりました。たった10センチの段差でどんな効果が生まれるのか。地域の人たちの期待が高まっています。
(「その通学路、安全ですか?」取材班 首都圏局/記者 直井良介)
「ハンプ」は英語では「hump」と綴り、日本語に訳すと「こぶ」を意味します。
その名の通り、道路上に物理的な「こぶ」を作ることで車の速度を抑制するものです。
このハンプの実証実験が9月17日、東京港区で始まり、設置作業が行われました。
敷き詰めていたのは強化ゴム製の板。厚さは最大で10センチほどです。
並べた板はボルトで道路に固定します。作業は半日ほどで終わりました。
端の部分はなだらかなスロープになっているうえ、厚みもわずか10センチですが、スピードを出して走行すると衝撃があります。ハンプに気づいたドライバーは衝撃をやわらげようとブレーキをかけるため、速度抑制の効果が期待されるということです。
ハンプが設置されたこの場所は、信号がなく見通しのいい直線道路です。
また「ゾーン30」と呼ばれる制限速度30キロの通学路。速度規制とハンプのように物理的にスピードを抑制させる装置を合わせることでさらに安全性が高まるかどうかを試します。
子どもたちが数多く通る道。ここは抜け道として使われていることもあり、以前から危険を感じていたという人もいました。
国道から抜ける裏道になっていて、朝の交通量はかなり多いです。スピードは正直なところなかなか落としてもらえないですね。なるべく早めに旗を振って止まってもらうようにしていますが、横断する子どもにとっては危ない道だと思います。
今回の実験では、9月29日から10月1日までの3日間、現場付近にカメラを設置して通行する車のスピードのデータを収集します。ハンプ設置前の速度と比較して効果を検証し、今年度中に結果を公表することになっています。
速度規制だけでなくハンプの設置が必要とされているのは、速度の抑制が重大事故を防ぐカギとなっているからです。
この表は車と歩行者の事故で、車の速度と歩行者の致死率の関係を示した表です。車の速度が時速30キロを超えると、死亡率が上昇しているのがわかります。
一足早く平成30年に実験を行った横浜市の現場ではハンプの速度抑制効果が報告されています。
横浜国道事務所が速度の上限が30キロの道路で行ったハンプの実証実験の結果では
ハンプの設置前:平均速度 時速約32キロ
ハンプの設置後:平均速度 時速約25キロ
と速度の抑制効果があったということです。
今回の設置場所は通学路や保育園児の散歩コースでもあります。設置工事を見ていた近隣の人々からは安全性が高まることへの期待の声が上がっていました。
子ども連れの夫婦
「子どもが生まれてから、すごく道路の危険なところが気になるようになりました。こういう安全対策を試して成功事例を作ってもらって、多くのところに広まっていってほしいです」
今後どの程度の速度抑制効果がみられるのか。結果が出たときには改めて取材してお伝えします。