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渋沢栄一の災害復興 コロナ禍の川越高校に受け継がれた精神

  • 2021年9月22日

「日本経済の父」渋沢栄一が残した功績の一つに、災害復興があります。たびたび火災に見舞われてきた埼玉・川越も渋沢の尽力で立ち直ってきました。
首都圏でも人気の高い観光地としてにぎわってきた川越は今、コロナ禍でかつてない苦境に立たされていますが、渋沢の志を受け継ぐ川越高校の生徒たちが町の人たちを応援したいと奮闘しています。
(さいたま放送局/ディレクター 池端祐太郎)

川越の復興支えた渋沢栄一

時は明治26年冬、埼玉県は川越で発生したのが大火災。北からの強風と乾燥した空気により火は瞬く間に街全体に広がり、実に街のおよそ4割、1300戸以上を焼き尽くしました。

そんなとき、苦しむ人々を放っておけないと名乗りを上げたのが渋沢栄一。渋沢は東京の名士たちを訪ねては支援を呼びかけたと言います。

ここ川越に届けられた現金、それに米やしょうゆといった物資。人々は復興へと立ち上がる力を取り戻しました。
いち早く再建に取りかかったのは、町の人の心のよりどころ「時の鐘」です。
刻まれているのは再建に尽くした人の名前。その筆頭には渋沢栄一。今のお金で数百万円を寄付したのです。

時の鐘のそばにある海鮮料理店の4代目、細田康次郎さんは町の人が悩まされてきた火事の話を幼いころから聞かされてきたといいます。町の復興に当たり、渋沢が時の鐘の再建に寄付をしたことに、その人柄がしのばれると話します。

細田さん
「人の痛みが分かる人だったのではないかと思います。川越のシンボルでもある時の鐘をまず建てて、復興のシンボルとすることで人の気持ちに寄り添ってくれたのではないでしょうか。人々を安心させることが町の復興、社会の復興につながるということで寄付をしてくれたのだと思いますね」

コロナからの“復興”目指す若者たち

今、川越はコロナ禍という危機に直面しています。主要産業の観光業が大きな打撃を受け、町の活気が取り戻せない状況が続いています。

そんな町に少しでも明るさを取り戻そうと奮闘しているのが、渋沢の精神を受け継ぐ高校生たちです。
埼玉県立川越高校。

ここには渋沢栄一が残した言葉が掲げられています。
「自分にゆとりができるのを待って人を救おうとするならば、いつまでたっても人を救う日はおとずれない」

 

3年生 外ノ池真志さん
「忙しい中でも川越を救って下さったってことはとてもありがたいことですし、そういった行動だとかこの言葉はとても私たちの心に響きましたね」

渋沢の言葉に感銘を受けたという3年生の外ノ池真志さんは、毎年9月に行われる「くすのき祭」という文化祭の実行委員長です。川越高校の文化祭は、生徒たちの自主的な運営によって開催される多彩な出し物が人気で例年1万人以上の来場者が訪れる一大イベントです。

毎年人気の水泳部による男子シンクロ

しかし、去年はコロナの影響で一般公開が中止になりました。地域の人たちからは中止を惜しむ声も上がったと言います。
ことし、文化祭をどう開催するのか。外ノ池さんたちは地域の人たちが楽しめるものにしたいと懸命に模索を続けてきました。

文化祭のシンボルだけでも楽しんでほしい

学校の中に入場できない状態でも、伝統の文化祭を楽しんでもらうために生徒たちが力を入れたのが、文化祭のシンボルである「門」の制作でした。

30年ほど前から、川越高校では学校の入り口に生徒が決めたテーマで大きな門が作られてきました。準備に1年をかけるという本格的なものです。
今年は首里城を模した門を作ることに決め、製作の過程をSNSでも発信してきました。

外ノ池さん
「約2年前に首里城の本殿が消失して多くの人が悲しみました。もちろん本物はどうしようもできませんが、モチーフにして門を作り、それを見てもらうことで少しでも元気を与えられればと、首里城というモチーフを決めました」

門ができあがると校門の前には多くの人が集まりました。門の前で写真を撮る人、生徒たちに「すごいね」と声をかけてくれる人など、少しでも文化祭の雰囲気を味わってもらえたのではないかと外ノ池さんたちは感じたそうです。

オンライン文化祭でより多くの人に

さらに、実際には見てもらうことができない恒例の出し物を動画にして配信する「オンライン文化祭」という形で開催しました。

応援団のパフォーマンスや吹奏楽部の演奏などさまざまな出し物を動画配信しています。

渋沢の言葉どおりやってみてよかった

実行委員会のメンバーは、町の商店などにポスターを配り動画で今年の文化祭を楽しんでほしいと呼びかけて回りました。
本当は地域の人たちみんなで恒例の文化祭を楽しみたい。そして町を盛り上げたい。それでも、今の状況の中で精一杯できることをやろうと前を向いています。

奔走する生徒たちを支えるのは渋沢のあの言葉 “自分にゆとりができるのを待って人を救おうとするならば、いつまでたっても人を救う日はおとずれない” だといいます。

実行委員長 外ノ池さん
「こんな状況下でも頑張っている友人たちを見ていると、地域の方々はもちろん自分が何より元気づけられています。例年とは異なる部分が非常に多かったですし、急な変更で対応に追われたりすることもありました。自分が率先して仕事して、それゆえに忙しかったけれど、それが人のためになったっていう実感があるので、この言葉のとおりにやってよかったなと思います」

  • 池端祐太郎

    さいたま放送局 ディレクター

    池端祐太郎

    2017年からさいたま局。埼玉県出身としての土地勘を生かして、埼玉県全域を熱心に取材。

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