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渋沢栄一の精神受け継ぐ深谷商業高校 部活に「ビジネス部」も

  • 2021年9月21日

大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一。訪れた異国の地フランスで証券取引所を視察しました。少ない元手を集めることで社会に役立つ大きな事業ができる仕組みに感嘆した渋沢は、帰国後「みんなが幸せになる」ことを重んじる“商人魂”をもった人材の育成に力を尽くしました。
その精神を実践に役立てているのが渋沢の故郷、埼玉県深谷市にある県立深谷商業高校の生徒たち。なんと「ビジネス部」なる部活まであるそうです。
“栄一スピリット”を受け継ぐ人たちを訪ねました。
(さいたま放送局/ディレクター 関根幸千代)

異国で知った 商人の地位

1867年、徳川家のパリ万博見学に帯同した渋沢栄一は、初めて訪れた異国の地で「国債」や「社債」といった債券の仕組みを知り驚かされます。

 

少ない元手を数多く集めることで、国や社会に貢献する大きな事業につなげることができる仕組みに感嘆した渋沢は、日本への制度の導入や株式会社組織による企業の創設・育成に力を入れました。
また「道徳経済合一説」を説き続け、生涯に約500もの企業に関わったといわれています。

“商人魂”は今も故郷の高校に

この経験からもうひとつ、渋沢が尽力したことがあります。それは「みんなが幸せになる」事業への情熱“商人魂”をもつ人材の育成です。充実した商業教育が必要だと、一橋大学をはじめとする多くの教育機関の設立に関わりました。そのうちの一つが、渋沢の故郷・深谷にある県立深谷商業高校です。今年、創立100年を迎えました。

在学中に簿記などのビジネスに必要な資格を取ることができるほか、ユニークな部活動もあります。その名も「ビジネス部」。企業と協力して商品開発を行い、社会に出ても役に立つ経営感覚を身につけようという部活動です。

いま取り組んでいるのはパンの新商品開発です。
渋沢栄一が好きだったという、さつまいもと抹茶を取り入れたパンを開発。SNSでの宣伝方法も研究しています。
「渋沢栄一のいいところをみんなに知ってもらいたいなってことで、意見を出し合って作っています」

学校には今も大切にされている校訓があります。創立2年目に訪れた渋沢の直筆で力強く書かれている「士魂商才」です。
西木成男校長にこのことばに込められた意味を聞きました。

西木校長
「士魂は武士の崇高な精神を現しています。商才は商人の才覚や知恵。自分のもうけだけでなく、それを社会に還元しようという精神の大切さを説いています」

“商人魂たたき込まれた”卒業生の人生

その校訓を大切にしながら経営者になった卒業生がいます。
埼玉県内でホテルなどを経営してきた高橋福八さんです。深谷商業高校で商人魂を叩き込まれたといいます。

高橋さん
「『1ににっこり、2におじぎ、3に言葉をかけましょう』これをわが社の常識にしています。“深商思想”の世の中のために働けというのは基本中の基本なんですよ」

高校卒業後、家業の履物問屋を継いだ高橋さんは全国に店舗を出すほど事業の拡大に成功しました。それと同時にホテルなどのサービス業に乗り出します。
その後も地域の人たちのニーズに応える形で、結婚式場や葬祭場、日帰り温泉、生花店など次々と新たな事業に挑戦してきました。

高橋さん
「みんなのためにならならなければ意味はないと。一人だけ金儲けしてもだめだと教わりました。人のためにならなきゃ、自分の欲徳だけでやることは長続きしないんですよ。人のために奉仕をすれば最後は自分のためにもなる」

渋沢の“商人魂” 次の世代へ

高橋さんは今、自身の人生を支えてきた商人魂を次の世代へつなぎたいと考えています。

訪ねたのは、母校の簿記部。高橋さんが在学中に創部しました。
ヨーロッパ式の簿記を日本に導入したのは渋沢栄一です。深谷商業高校は、今では全国大会に35年連続出場するほどの強豪校に成長しています。

髙橋さん

いま何級だ?

部員

日商簿記2級をとりました。

髙橋さん

へ~2級。すごいね。みんな2級?
私たちのときはあんまり2級とる人はいなかった。簿記部を作ってよかった。こんなにすごいとは思わなかったよ。後輩に拍手

活躍している簿記部の他に、もうひとつ高橋さんたち卒業生が後輩に残したものがあります。それが、創立当時に建てられた木造校舎です。取り壊しが計画されたこともありましたが、高橋さんたち卒業生の訴えで県が保存を決め、国の有形文化財に指定されています。
中には渋沢栄一の生涯を学べる展示があり、この場所を通して次の世代にも商人魂を伝えていきたいと考えています。

高橋さん
「渋沢栄一の思想がこの学校に全部入っています。時代が大きく変わっている今こそ、渋沢栄一の生き方を学ぶべきです。今は自分も一緒にかわらなければ生き残れない。今こそ若者ががんばって、勇気を持って新しいことにチャレンジすることが大事なことなんじゃないかと、私は思いますね」

  • 関根幸千代

    首都圏局 ディレクター

    関根幸千代

    2006年入局。福井局、制作局、大阪局、さいたま放送局などを経て 現所属。主に生活情報番組を担当

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