WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. 山梨“暑さに強いワインへ” 温暖化でぶどうの新たな栽培方法

山梨“暑さに強いワインへ” 温暖化でぶどうの新たな栽培方法

  • 2021年9月14日

ぶどうの収穫期を迎えていますが、ワイン用ぶどうの栽培をめぐっては山梨も含めた世界の産地で近年、猛暑となりぶどうの色づきが悪くなったり酸味が失われたりするなど、ワインの品質への影響が懸念されています。
こうした中、暑さに対応することで産地を守ろうとこれまで目が向けられてこなかった部分に着目して開発された画期的な栽培方法が注目を集めています。
(甲府局/記者 清水魁星)

地球温暖化 ワインにも影響が…

甲府市内の農場で色づき始めたワイン用のぶどう。山梨大学ワイン科学研究センターの岸本宗和准教授は、ワイン用のぶどうが成熟する時期を遅らせる研究を行っています。研究の背景にあるのが温暖化です。

甲府市の年間の平均気温は上がったり下がったりしながら少しずつ上昇。平均するとこの100年で2度以上高くなりました。
その影響はワインに出始めているといいます。

暑い時期に成熟したぶどうで作った右側の赤ワインは色が薄いことがわかります。ぶどう自体の色が落ちていたためです。

山梨大学ワイン科学研究センター 岸本宗和准教授
「暑い中でぶどうの成熟が進みますと皮の色が薄くなる。それからワインにとって重要な酸味の成分、これが少なくなります。また香りの成分、これも少なくなっていきます」

成熟時期ずらす 新たな方法「副梢」

暑さの影響を受けないために岸本さんが考えたのが、ぶどうの成熟の時期を涼しい時期にずらすことです。そこで目を付けたのが「副梢」(ふくしょう)と呼ばれる通常はぶどうの房を付けない枝です。
通常の栽培で育てられる「新梢」(しんしょう)と呼ばれる枝は、春先、最初に発芽し、成長した新梢に付いた房が収穫されます。

しかし、岸本さんが考えた方法は新梢の先端と、房の部分を切り落としてしまいます。すると、切り落とした新梢の近くから通常は生えない、「副梢」という枝が出てきます。
副梢は、成長の時期は遅くなりますが、新梢と同じように育ちほぼ同じ大きさの房をつけることが明らかになったのです。

通常、新梢の場合は4月ごろに発芽し、8月ごろ着色して成熟します。これが副梢を育てる場合、5月ごろ新梢の先端などを切除します。このため開花や着色が遅れます。通常の栽培に比べ成熟するまで1か月半ほど遅くなるのです。

山梨大学ワイン科学研究センター 岸本宗和准教授
「特別な設備投資とかを必要とせずに、簡単にぶどうの成熟時期を冷涼な晩秋に遅らせるころができる、それがこの栽培のメリットという風に考えています」

ワイナリーで試験導入 課題は栽培ノウハウ

岸本さんの研究の成果は、県内のワイナリーで試験的に導入されています。この日は、4年前から試験的に副梢栽培を取り入れている甲州市のワイナリーを訪れました。このワイナリーでは、当初、通常は育てるぶどうの房を切り落とす、副梢栽培に戸惑ったといいます。

MGVsワイナリー経営 松坂浩志社長
「せっかく新梢が出て、ぶどうがなってきて今からやっとことしも始まるなというときに全部のぶどうを落とさないといけないから衝撃的でした。副梢栽培のぶどうでつくったワインは酸味が非常に綺麗にシャープに残る。魅力的なワインの原料になるという可能性はすごく感じました」

副梢栽培は、試験的な栽培が始まってまだ数年ということもあり、ノウハウが確立されていないため病気や大雨対策など本格的な導入に向けた課題は残されていますが、岸本さんは、この新たな栽培方法に手応えを感じています。

山梨大学ワイン科学研究センター 岸本准教授
「この先温暖化が進んでいっても山梨のブドウが栽培されてる風景というのが、これからも変わらずに持続されて、ワインの品質は今より高くなっていくということを実現したいと思っています」

「副梢栽培」は、150年という山梨のワインの歴史の中でほんの最近導入され始め、収穫の時期そのものをずらす栽培方法だけに産地の農家が代々、培ってきた方法が通用しない部分もあり新しいノウハウの確立が課題となっています。それでも全国の生産者がこの技術に関心を寄せていて取材したワイナリーを含め県内の4つのワイナリーで試験的に導入されているほか、山梨県外の農家からの問合せもあるということです。
現在は、山梨のワインを代表する甲州ワインの原料となる「甲州種」のぶどうについても、この技術による栽培の研究が進められていて日本を代表するワインの産地としての山梨をより発展させる技術として注目されています。

  • 清水魁星

    甲府局 記者

    清水魁星

    2020年入局。警察取材を経て現在は遊軍記者として 山岳や農業、経済などの取材を担当

ページトップに戻る